第83話 スマイル
私は微糖のコーヒーを飲んで一息つく。
「はぁ〜 生きてるっていいわね」
「せつなが黄昏ている!?」
「アハハッ......せつなの気持ちはわかるよ。僕もブラックコーヒーを飲んで、これほどまでに幸せを感じたことはないよ」
「ブラックなんて飲み物じゃないわ。覇権はコーヒー牛乳一択だよ。
「
「
「いらない......太る」
「太る心配ないわ。食べてくれたケーキは瞬間的に消化されるように上手く配合したから〜 腸内環境もバッチリ!!」
「......それって食べ物??」
「まさか、夏休みにケーキ爆食いパーティーをやるとは。夏休み、恐ろしい子」
「人生、何があるかわからないね」
「またせつなが黄昏ている......」
「てか、なんでケーキパーティーを昼間からやってるんだっけ?」
「来週に東京で行われるケーキの大会に行くから。練習兼みんなと遊びたかったから!!」
「みはるちゃん......すごい」
「パティシエになるには避けては通れないからね。スイーツ作りは毎日やっていても楽しいから!!」
「夢だもんね、パティシエになるのが」
「結果は報告するね!!」
「楽しみにしてるよ」
「頑張ってね、みはるちゃん!!」
「頑張るといえば、せつな」
「うん? どうしたの
「義姉とはどうなん? 進展した!!」
『義姉』の単語に過敏になる悪友ナンバー1の
「今度、温泉に行くんだ! 確か......来週の月曜日だったかな」
「............新婚旅行!?」
「バカになったの、
「いやだって、急に『今度、温泉に行くんだ!』って。次にくる言葉なんて『新婚旅行』しかないじゃん」
「
「バカと天才は紙一重っていうし」
「バカと天然の才女は紙一重か......」
「天然の才女って矛盾してない」
「天然物」
「私はいつから自然界の有機物になったのよ」
「はぁ、駄目だコイツら。話の軌道を戻さないと」
「話をふった張本人が何か言ってるよ」
「でも、なんで温泉?」
「父さんたちの新婚旅行の付き添い」
「なるほどね〜」
「初めは私と白陽姫ちゃんは家で留守番してるって提案したんだ。けど、家族旅行も兼ねようって親から言われて......私たちも同行することになったの」
「旅館で姉妹仲が進展すること間違いない(キラリッ)」
「ウインクできないのにやるのはなんでだろう......」
「やりたいお年頃なんだよ、
「あはあははは!!! よ〜し、今から灼熱の外でランニングしようじゃないか。ミノムシども」
私と
「そういえばさぁ、せつな」
「うん?」
「今、進み具合どうよ」
「今......『セルパン』にいるんだ!」
「『ドラゴン』には滞在しなかったんだ」
「
『ドラゴン』は漁業が盛んな街並み。漁船で海エリアに行けたり、海に潜れる場所があったりと面白い街。『ドラゴン』限定の釣竿やダイビングに使用する道具類も販売している。リアルで海に行けなくてもゲームで海を満喫するプレイヤーも多いとか。
私の場合は現状、長期間滞在する理由もない。でも、次の街へ行くためにはどうしても通過しないといけない。それと《ボルス城:移動可能エリア》を充実させるために立ち寄った。タウロスは工房に入り浸っている。付き添いはヴァルゴとアリエス。二人は魚類やダイビングには興味があった。街全体に漂う磯の香りがダメだったらしい。余程苦手だったのか渋い表情しか『ドラゴン』では見ていない。総合的に考え、自分たちに利がある街ではないの結論に達していた。
「漁船を持っているNPCと仲良くすれば『リリクロス』に行けるよ〜(ニヤニヤ)」
「その手はのらないよ、聞いてるから......過酷な船出だってね」
「クソッ、知らないと思ったのに......それで『セルパン』へ向かったんだ」
「なんで火山の街→漁業の街→山脈の街って面倒くさい地形なのかな......」
「当時のプレイヤーも思っていたよ。頭が追いつかないって......」
「それに比べて、『セルパン』って凄いね。山脈の中に街があるなんて。神秘的っていうのかな」
「一応、聞くけど、せつな......」
「うん? 何?」
「まさかだとは思うけど、『セルパン』にある
そこから長い沈黙が漂う。課題をやっていた二人も急に会話がなくなって不思議に思ったのか私たちの方向へ目を向けていた。
「もう一度、質問するね。『セルパン』にある
視界いっぱいに広がる
「......しました」
自分でも驚くほどの薄い声。図星を突かれた時に出てしまう申し訳なさが極まりすぎてる声量。
私のたった四文字の言葉を聞いた
「はぁ〜 生きてるっていいわね」
「それ、私がさっき言った言葉!?!?!」
「私は生きてる。せつなは生きていない」
「生命体じゃないの、私って」
「どうしたの、
「せつなが新生の超弩級ドMになったから考えるのをやめていたんだ」
「「何を今更、言ってる!?」」
「おいっ!? 私は『新生の超弩級ドM』じゃない。訂正してよ!!!!」
「だって、あんなドMのエンドコンテンツに行くなんて変態以外いないもん」
「そぉ? 意外と楽しいよ!」
「二人とも、せつなはダメだ......もう手遅れだ」
二人は背中を私に向け、課題に取り組む。
「ありがとう、短い間だったけど楽しかったよ」
「せつなちゃん、バイバイ」
「意味がー......わかんないぃいいいいいいいいいいい!!!!!!」
◇
「もう意味がわかんない!!」
ログインした激おこの私の隣で寝ていたヴァルゴとアリエスがキョトンとした表情をしている。
「どうかされたんですか、お嬢様」
「酷い夢でも見ていたんですか?」
「アイツら......」
『新生の超弩級ドM』などと不名誉なあだ名を進呈しやがって。堪忍袋が切れたので秘蔵の寝言シリーズ、去年の五月号を流し続けた。高校入りたての三人のなんてことない会話。でも、当時の仲間内だからなのかアホな言葉を言い合っていた。三人が自分の幼ない感じの声と会話の内容で悶絶していた。だんだん人間の骨格が怪しくなる特異なポーズを撮り始めた三人を見れて、自然と笑みが溢れていた。
「私を怒らすからよ」
ヴァルゴとアリエスが青ざめていた。
「お嬢様を怒らすとは......なかなかな逸材」
「どんな業を背負っているのでしょう、常人では考えれない行い」
「何か言ったかしら?(キレ気味)」
「「いえ、何も言っていません」」
「そうよね、二人は私を怒らすことをしないよね」
私から抱きつく。ヴァルゴとアリエスの体が小刻みに震えていく。
「あなた達を信じているから......」
囁く私の声に、激しさを増す二人の震え。
ユミナが自分たちへの好意が強すぎるあまり、病的な精神状態になっていると思案する。そして、こうした状態の時は絶対に逃げれない恐怖と黙ってされるがままにされようとお互いがお互いの目を向け、眼だけで結論づけた。
ヤンデレ風の私と今尚震えているヴァルゴとアリエスを眺めているのは、山羊のツノを生やした執事服の女性だった。
「ご主人様は笑顔が怖いっと」
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《
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職業:MAIN:【剣星】SUB:【悪魔】
所在地:【ボルス城:ユミナの寝室は愉快な従者が集める部屋】
・
職業:MAIN:【星聖】SUB:【聖女】
所在地:【ボルス城:ユミナの寝室は愉快な従者が集める部屋】
・
職業:MAIN:【星匠】SUB:【炎鍛治神】
所在地:【ボルス城:工房】
・
職業:MAIN:【星導】SUB:【時幻】
所在地:【
・
職業:MAIN:【星天】SUB:【大天使】
所在地:【ボルス城:ユミナの寝室は愉快な従者が集める部屋】
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『スーリ』→
『ヴァーシュ』→
『ティーグル』→
『ラパン』→
『ドラゴン』→
『セルパン』→???
ドM
Sっ気
狂人戦闘
百合姫
女王
無自覚たらし
ヤンデレ→new
それにしても『新生の超弩級ドM』ってなかなか酷いあだ名......
寝言シリーズ。高校一年生、秘蔵の五月。
脳、体から汗がドバドバ出てしまう羞恥心が限界突破する寝言。動画開始は寝る直前の四人のたわいもない会話。なかなかに華がある仲睦まじい空間。誰かが寝言を録音できるアプリがあると言ったのが全ての始まり。
じゃんけんで負けたせつなが録音オンにしたまま就寝。
次の朝、興味津々で再生したところ......四人ともヤバいエグい世に出せない寝言を言っていて山の中で絶叫していた。
(当然、教師に怒られた)(内容は決して重い話ではない)(女の子も妄想はする......ピンク系)
四人だけしか聴けない幻の音声。他三人も伝説級の動画・写真・書記本を所持している......
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