第57話 キョウハンカンケイ?
クイーンさんが持っていたセーブハウス道具。後半の街では高額だが外でも安全にログアウトできるアイテムがある。
所持者が決めた者だけ入れるので侵入はされない。巨大なテント。サイズはよく分からないけど、60平米があるとクイーンさんが教えてくれた。上から見たら六芒星の形だとか。
中央はリビングとなっていて、リビングを中心に五つの部屋と出入り口一つが配置されている。部屋にはキングサイズのマットレスが置かれていた。プレイヤーはここでセーブ&ログアウトもできる。テントの耐久性は火や水などの耐性もあるので余程の攻撃を受けなければ問題なく中で生活ができるとか。
休憩中の私の隣には......まぁ、いるよね。
「エネルギー回復中♡」
甘い吐息を出しながら私を抱き枕みたいに抱くヴァルゴ。
がっちりと抱きつかれ私を離さないようにしており、足は絡みつく。
抱きつかれる前は干からびたミイラみたいな顔になっていたけど、すぐにいつもの美白に戻っていた。
どういう現象だ、と不思議な光景に苦笑していた私。
「みんなに刺されるわよ」
絶賛私が提案したゲームを行っている。ヴァルゴの行為は無条件で褒美を貰っているように見える。
それを止めなかった私も同罪か......
「それにつきましては問題ありません」
「えらく自信があるわね」
「当然です、私が今『ユミナ様欠乏症』となっているので不足分を補うには本人に抱きつかないといけないと力説しましたので」
絶対にアリエスとタウロスが呆れ顔になっていたのが容易に想像できる。
ここで自分たちが否定的な言葉を出すと癇癪を起こした子どもみたいになり、暴れるヴァルゴが完成する。そうなったヴァルゴを止める手立てはない。私に抱きつけば安いものかと了承したのだろうが、私の人権はないのかと思ってしまう。
「てか、私はサプリメントなのね」
「”さぷりめんと”が何なのか分かりませんが、こうして抱きつけば私はまだまだ頑張れます」
ヴァルゴ......栄養補助剤はあくまで補助としてしか機能していない。ちゃんとした栄養を確保するのは必要な物を食べないといけないんだよ。
あれ? そうなると私......いつかはヴァルゴに食べられる未来があるのか......流石にそれはないか。
ゲームのレーティング的に問題あるし......そういえば、倫理的な警告が出ないな。プレイヤー同士なら確実に警告ウィンドウが表示される。内容は......ほとんど18禁指定の行動。ヴァルゴと共に行動していて何度か指定を超える場面があったが警告ウィンドウは発生しなかった。もしかして、NPCとは出ないのか。それならそれでいいけど。後から運営によるアカウントバンされた時には、心がへし折られるだろう。
「それはそうと、順調?」
「お楽しみください、お嬢様!」
「一個聞いていい?」
「なんですか?」
「四人は共犯関係」
「『共犯関係』ですか?」
「あー......全員を同率一位にするためにみんながアイテムや素材を回収調整しているのかなって」
「そんなことある訳ないじゃないですか」
そっか、一先ず安心した。杞憂だったかもしれない。
「それにユミナ様を抱いていいのはこの世で私だけです」
「語弊のある言い方を改めてくれない」
「そうですね、これ以上暴走してしまうとまたユミナ様からお叱りを受けてしまいそうですし」
「分かっているなら、今この瞬間からやめてほしいけど......まぁ、いいか」
ヴァルゴはユミナを見つつ、安堵の表情を浮かべる。
(危なかった......アクイローネの言っていた通りでしたね。危うくバレるところでしたがなんとか危機は回避できました。御免なさい、ユミナ様。一人で楽しむのもアリですがみんなでユミナ様を楽しむのもアリだと気づいたんです)
贖罪として主を抱きしめるヴァルゴだった。
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