第34話 黒蛇縛鎖

星なる領域スターリースカイLv.2】と【燃やす命テンション】を発動。


俊敏値AGI】に補正がかかる【ダブルアクセル】と文字通り、初速度。

 人間で言えば一歩目の速度が上昇するスキル【初速のファースト・行進ブースター】で瞬間的に詰める。



 オフィュキュースは高速で移動している私に驚くことなくただ立っていた。


 余裕の笑みを見えるオフィュキュース。

「バカにして……」


 開幕一発目に強化されたファイディで吹っ飛ばす。そう意気込みながら距離を縮める。


「『ファイディ』……」


 ファイマの強化版。火の玉ではなくなり、火炎放射のように火属性の攻撃を放つことができるようになった。

 一直線に放たれた『ファイディ』はそのままオフィュキュースに直撃するはずだった。


 しかし、途中で消えた。まるで初めから存在しなかったみたいに。


 驚く私だが、追撃の準備をする。


 だが————————












 全身の力がなくなる感覚を味わう。そしてそのまま部屋の中を転がる。

 顔を上げると私を嘲笑い見下すオフィュキュースがいた。


「アンタみたいな小娘は地面がお似合いよ」



「どうして……」


 理解ができなかった。何かに邪魔された覚えはない。

『ファイディ』も消え去り、身体強化していた自分の体が強化する前の自分の体に戻ったようだった。

 頭が混乱することだからだった。




「はぁ〜 貴方はつまらないわ。少しでもワタシの糧になりなさい、魔力吸収(ウワバミ)......ッ!?」


 オフィュキュースが私に怪しげな光を浴びせる直前。

 危険を察知したオフィュキュースは跳躍し、上で回転しながら部屋の入り口に着地した。


「まだそんな物騒な武器を持っていたなんてね……ヴァルゴ」


 私に駆け寄ったのは彼岸の星剣ノヴァ・ブラッドを握っていたヴァルゴだった。


「ヴァルゴは範囲外だったか……しくじったな」


『範囲外』? やっぱり何かしらの攻撃を私は受けたんだ。でも一体、どんな攻撃を受けたのか見当もつかなかった。


「同じスキルを持っているので当然でしょう」


 ヴァルゴの言葉にうなづくオフィュキュース。同時に疑問顔を出していた。

「そういえば、そうだね。でもさぁ……」




 私を起こしてくれたヴァルゴ。

「大丈夫ですか、お嬢様」


「ありがとう。ヴァルゴ、あれオフィュキュースは何をしたの」


「私のは【波動霧消ザヴィヤヴァ】で名前違いですが効果は同じで、オフィュキュースも持っているスキルに【波動霧消ラサルハグェ】があります」


「【波動霧消ラサルハグェ】?」


「【波動霧消】は敵にかかっている補助系スキル・魔法の効果を打ち消すことができます。範囲が決められていますが【波動霧消】は必中のスキルです。お嬢様は【波動霧消】を受けたことで強制的に身体強化されるスキルがなくなり、戦闘開始前の何も発動していない状態に戻ってしまったんです」


「それでか……ヴァルゴ、確認だけど『補助系』の効果が打ち消されるのよね」


「はい、そうです」


「『ファイディ』はただの火属性の魔法よ……その【波動霧消】の対象外じゃない」


 私の疑問にヴァルゴではなくオフィュキュースが答えた。


「アンタの火属性の魔法を使えないようにしたわ。私の魔法でもある『呪縛(ロック)』でね!!」



 私は自分のステータス欄の呪文一覧を見た。


 〜呪文欄〜

 ファイディ(15)LOCK 

 ウォーディー(15)

 アイディ(15)

 ポイズディー(22)LOCK

 サンダー(15)

 ハリケーン(15)LOCK

 シャイン(15)LOCK

 吸血・改(9)LOCK

 吸魔・改(9)

 軽壁・改(9)LOCK

 強勢・改(9)LOCK

 回復ヒール(10)

 回復の舞エナジーシャワー(15)LOCK

 脳天落としコンフューズ(4)LOCK






 習得した呪文が並べられているが、燻んだような色合いで支配されている呪文があった。

 例えば、私が先ほど発動した火属性の『ファイディ』だった。『ファイディ』の名前の隣にはヴァルゴの黄道スキルと同じように”LOCK”が入っていた。


「『LOCK』ってそういうことか……」




 睨む私を見てオフィュキュースは嗤う。


「魔法使いなのに魔法が使えないなんて……どんな気分〜 教えてよ……小娘ちゃん」

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