VRの女王、世界を駆ける ~義姉と仲良くするためにゲームを始めたら、女性NPCたちに言い寄られるエロい毎日に充実している~

麻莉

1章 嵐舞う荒野、一条の光

第1話 せつなは今日も女王になる

「ユミナ様、本日はどちらへ向かわれましょうか?」


大きな柱が何本も謁見の広間に、騎士であるヴァルゴの声が響く。


絨毯じゅうたんに膝をつき、王座に座っている私に礼の姿勢をとる。

「そうですね……素材を集めましょうか」


「かしこまりました。それで人選はどうなさいますか?」


「じゃあ、前衛担当レオ。私と同じで後衛担当のサジタリウス。回復担当でアリエス。そして、ヴァルゴ。私と一緒に来てくれますか」


「はっ! 私の命はお嬢様のもの。どこへでもお供します!」



私は慣れた手つきでステータス画面を操作。戦闘準備をした。

私のお抱えNPCで私の知る中で最高の鍛治職人のタウロスが製作してくれた、白銀のドレスを装備。


流麗な桃色の長い髪がなびく。

メイン武器の黄金の錫杖ロッド、サブ武器の漆黒の両刃直剣の耐久値に問題ないことを確認する。

素材集めなので、プレイヤーのLUK値を底上げしてくれる女性専用のアクセサリー品で銀色のサークレットを装着。


緑と赤のオッドアイで全身をチェックした。

(問題は......ないようだね!!)












私はおごそかな広間を出て、城内を歩く。

(どうして……)


城内には多種多様な種族が在籍しており、NPCとなっている。

あまり見ないようにしているが私が通り過ぎるとみんな、目をハートマーク熱い眼差しにしてその場へふらふらと倒れていく。

全くもって不思議な光景だよ……うん、実に不思議な光景……





城の城門が見えてきた。門にはオレンジ色の髪で獣人族で職業が剣士で男勝りでNPCのレオ。レオと話をしているのは茶髪で人馬族で上半身が人間、下半身は馬で遠距離武器が得意なNPCのサジタリウス。私のとは形状が違う錫杖しゃくじょうを地面に置き、三角座りして魔導書を読んでいる愛用のメガネをかけている金髪で元聖女で羊のツノを生やしているNPCのアリエスが待っていた。



(どうして……)




「揃っているようね」


隣に付き従う青紫色の髪に『私の服はこれだけで十分です』と言って、一向に甲冑服以外を着てくれないNPCで騎士のヴァルゴ。


(どうして……)


私の存在を感知したのか即座に姿勢を正して、一列に並んだ三人。

「ユミナ様、いつでも出発できます」



(私はただ……)



「ありがとう、ヴァルゴ。それにレオ・サジタリウス・アリエス。今日は私のわがままに付き合ってくれてありがとう」



「「「勿体ないお言葉です!!」」」



礼の姿勢をとる三人。


「それでは、行きましょうか」



(ただ……義姉かすみさんと)


外へ出る私たちの周りに鮮やかな花びらが舞う。舞ってしまうのはメイン職業である『星霜せいそう女王クイーン』のせい。プラス厄介な条件があるけど、『星霜せいそう女王クイーン』の性能は中々に良い効果を持っているので外すに外せない。





私たちは王城近く、森のステージでもある『隠森棲幽いんしんせいゆう』に入る。

ここを東に進むと煙を常時、纏っている槍を持った骸骨モンスター:シュペーア・ゲシュペンストが出現する。



コイツが落とす遺骨いこつ残骸キセキがどうしても欲しい。だけど、確率が低いので元々プレイヤーが獲得できる幸運ラック値だけでは出ない素材。なので外付けで幸運ラック値を上げる必要がある。


幸いにも私が持っている錫杖はパーティーメンバーの数だけ幸運値が倍加する能力がある。更に私が装備しているサークレットは装着者のラック値が2倍になり、追加効果で毎秒リジェネ発動されるアクセサリー。


「……皆さん、来ました。戦闘準備!!」


お目当てのモンスターが出た。あとはどれだけの時間が使うかの問題だけ。

私たちは戦闘を始めた。


戦いの思考にしないといけないのに私は別の思考が巡る。


(私はただ、義姉かすみさんと仲良く話すために始めたゲームなのに…………)




私の攻撃がシュペーア・ゲシュペンストの胴体に直撃。怯んでいるところにたたみかけるレオとヴァルゴ。



シュペーア・ゲシュペンストは砕け、地面にアイテムが落ちる。アイテム回収が終わった女性NPCたちは私の方を向く。全員が頬を赤らめ、瞳がハートマークになっていた。


見た目は鷹揚おうように笑っているが私の内心は真逆の表情。







(……どうしてこうなったぁぁあああああああああああああああああああ!?!?!??!?!!)




頭の中で絶叫しながら私、弓永ゆみながせつなこと『ユミナ』は今日も女性NPCたちの女王をしていた。

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