私たちの文化、私たちの家族

転生新語

プロローグ

 私は高校生で、そして姉妹しまいがいる。姉妹といってものつながりはなくて、いわゆる同性愛の関係だ。


 姉妹のちぎりなどと言うと、学校で先輩と後輩が、おたがいを姉や妹として呼び合う関係が思い浮かぶけれど。私と彼女は、そういう関係ではない。そもそも同級生だし。


 彼女の方が私よりも少しだけ早くまれていて、だから彼女が私より『おねえさん』ということになる。別に『お姉さま』なんて呼んだりはしないけどね。でもむかしから彼女は早熟そうじゅくで、私にすべてをおしえてくれた存在そんざいだ。


あついねー、残暑ざんしょだねー」


 そんなことを言いながら、私と彼女はクーラーがいた部屋へやすずんでいる。時期は九月の初旬しょじゅんで、来月には文化ぶんかさいが高校で予定よていされていた。週末、いつものように私は彼女の家にびたっている。文化祭に興味きょうみはないけれど、『文化ぶんか』というテーマには少し、私は関心かんしんがあった。


「ねぇ、文化ぶんかって、なんだと思う?」


「なに、きゅうに? カラオケは文化ぶんかはいるかどうか、とかのはなし?」


 私の質問に、彼女が首をかしげる。大体だいたいにおいて、彼女は私よりも独特どくとくの意見を持っていて、それを私は聞きたかったのだ。


「うん、そういうはなし。じゃあれいげてもらった、カラオケについてはどう思う? あれは文化というか、文化的?」


「どうでもいいから回答かいとうこまるけど。文化って、伝統でんとうものじゃないの? 昔からにんげんおこなってきたことなら、それは歴史れきしがあって、伝統でんとうがあるものよ。茶道さどうみたいに作法さほうができて、それが後世こうせいがれていく。そうやって歴史にのこったものが文化じゃない? だから私は、カラオケを文化だとは思わない。あたらしすぎるからね」


「なるほど。カラオケも、これから作法さほうができるかもしれないね。マイクを三回、まわしてから次の人にわたしたりさ」


「前の人がうたわったら、『結構けっこうな、お点前てまえでした』って言ったりね。これは今も、似たようなことをやってるかも」


 私と彼女はわらう。私たちの姉妹関係も、文化にふくまれるのだろうか。次は、そういうことをたずねてみようかと思った。

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