第174話 ダメージとイメージ

 【新たなる】 神聖! 佐藤直史総合スレ part1076 【神話誕生】


567 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 終わった……


568 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんか落ちてた? 

 サーバークラッシュ?


569 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 SNSの方が英文で溢れてたな

 英語以外のはなんだったんだろ


570 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 そらマイナースポーツでもアメリカ以外でもやってるところあるし


571 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 実況スレは乱立してたな


572 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大サトーは終わったとか言ってたアンチサトー総帥息してる?w


573 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 まあアンチサトー総帥の生涯収入なんて大サトーの100分の1以下だし

 大サトーがSNSしだしたらフォロワー普通に100万は超えるだろうな


574 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 フォロワー1万もいってない人間が吠えてもなあ


575 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 奪三振15個って何気に今季最多じゃね?


576 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 いや、延長戦があったから


577 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 延長戦も14個だぞ


578 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんでそんだけしか三振取ってないのにパーフェクトになるの?www


579 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 草生やしすぎ

 なんか人少なくね?


580 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 まだ実況の方が終わってないから

 インタビューとか続いてるし


581 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 う~ん、安定の塩対応w

 まだ日本シリーズが残ってますから()

 そうだけどさあ! そうじゃないだろ!


582 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ここでノーヒットノーランっていうのがまたな


583 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 次は千葉の第一戦かな?


584 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 中四日はキツかろうて

 三島か百目鬼のどちらかで充分じゃろ


585 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 木津は?


586 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 もう攻略されるだろ


587 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 さすがに日本シリーズの初戦にはなかろうよ


588 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 つーかクローザー問題が解決してねえ


589 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 プロ一年目は一人で四勝してたなあ


590 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 15年前って、そりゃ年食うはずだわw


591 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ここはクローザーとして大サトー君臨とか


592 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 それは確かに出来なくもない


593 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大サトーのクローザーってけっこう昔の話?


594 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 国際大会はほとんどクローザー起用だぞ

 あとMLBでは二ヶ月で30セーブ記録したし


595 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 年間換算だと90セーブだもんなw

 絶対に不可能な数字なはずだけど、70セーブぐらいならやっても全然おかしくない


596 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 クローザーとしては一点も取られてないんだっけ?


597 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 wikiにはプロと国際大会の記録しかないからなあ


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 ここぞという時に勝てるのがエース。

 それをまさに証明したのが、このクライマックスシリーズのファイナルステージであったろう。

 第一戦の勝利は、やや怪しいところもあった。

 しかし最終戦は、結局敬遠でランナーを一人出しただけ。

 最初からその気になっていれば、パーフェクトを達成したのではないか。

 またしても詰められる首脳陣である。


 ただ順番に難しい状況を消していって、そして勝てる確率を消していったのだ。

 そもそも完全に失点を防ぐならば、第二打席も歩かせていた。

 結果から、正解か不正解かを逆算する。

 そう考えるなら試合に勝てたのだから、正解であるはずだ。

 ただ勝つだけでは満足しないのが、ナオフミストの悪いところだ。

 パーフェクトを見ることに慣れてしまうと、他のピッチャーでは物足りない。

 生きる合法麻薬と呼ばれる所以であろう。

 本人としては非常に心外な異名である。


 過程はどうであれ、日本シリーズ進出が決まった。

 そしてまずは千葉から、試合は始まっていく。

 直史は初戦に投げるなら、中四日ということになる。

 100球も投げていないので、中四日も可能なのでは、というのが一般的な意見。

 だが問題は投げた球数ではなく、投げた球質なのである。


 大介に投げた、150km/hオーバー。

 あれは別に、ここまでもったいぶって隠していただけではない。

 もちろんここぞという時に、使うつもりで隠していたという面もある。

 だが本気であれを投げてしまうのが、体に負担がかかると考えていたのも確かだ。


 実際に翌日、直史は肉体に違和感を感じていた。

 古傷の肘ではなく、ピッチャーがやってしまったら終わりの肩である。

 わずかであるが、痛みがある。

 ただその痛みも、深刻なものではなく筋肉痛のようなものに近い。

 だが筋肉痛というものがそもそも、肉体にダメージを与えている場合であることもある。

 直史を壊してしまったら、それはもう許されないことである。

 首脳陣はチームドクターに、精密検査をしてもらうのだった。




 肩の炎症であるのは間違いない。

 軽度なものであって、二日もすれば治るのでは、という見方であった。

 少なくとも軟骨や腱といった、致命的な部分ではない。

 ほっとする首脳陣であるが、それはそれとしてピッチャーの運用には頭を悩ませるのだ。


 直史が果たしていつ投げられるのか、それはすぐには分からない。

 その日の朝に起きてから、ゆっくりとピッチングをしてみて、その状態で使うかどうかを決める。 

 出来れば第一戦か第二戦で先発起用したいところだ。千葉は直史の地元でもある。

 アウェイの空気が薄くなることを考えてはいる。


 実際のところ、マリンズとの戦力差は、どのぐらいのものであるのか。

 レギュラーシーズンの勝率などを見ると、レックスの方が上である。

 交流戦の結果を見ても、おおよそレックスが上であろうと推定できる。

 ただレックスの場合は、確実に勝ってくれるピッチャーなどというものが存在するからだ。

 おおよその比較をすると、スターズよりもちょっと強い、程度になると思われる。


 マリンズも溝口という、強力なエースがいる。

 まだ22歳の成長曲線にいるピッチャーで、ストレートのMAXが163km/hを記録している。

 ただ右腕で、強力な変化球は高速スライダーのみ。

 なので武史に比べればまだ打てるな、というピッチャーであるのだ。

 18勝3敗というのは、他の数字なども含めて、佐藤兄弟がいなければ沢村賞に選ばれていたであろうが。


 誰をどこに当てていくか、というのもピッチャーの起用の重要な問題だ。

 ただマリンズは今、パでは一番先発が揃っているチームとも言われている。

 ロースコアゲームに強いという点では、レックスと同じである。

 あとはこちらが、どうピッチャーを使っていくか。


 ファイナルステージの最終戦と、日本シリーズの初戦の間には中四日。

 予告先発は前日に発表される。

 直史がどこまで回復するか、それも日本一の行方を決定付けるものとなるだろう。

 ただそんな直史は、全く関係のないところを見ていた。

 高校野球関東大会の日程である。


 日本シリーズの第一戦、その日に白富東の一回戦が行われる。

 相手はさほど強くはないが、甲子園レベルのチームではあるし、何より白富東の戦力が低下している。

 上位打線で一点か二点を取って、あとは昇馬が完封する。

 幸いと言うべきか、内野の守備はそれなりに堅いのが白富東だ。

 もっとも一試合に20個ほどの三振を奪う昇馬がいるので、そのあたりは気にする必要がないか。


 高校野球はプロ野球と違い、カット打法がスリーバントと見なされるようになっている。

 審判の判断によるところが大きいが、これは昇馬にとってはいいことだ。

 もっともそれはそれで、カットの上手さという技術が発達する。

 高校レベルでそんな技術を磨いても、プロでは通用しないのであるから、高校では必要な技術となるのだろうか。

 今ではバントなども、プロの選手はむしろ苦手であったりする。

 なぜならプロ入りするような選手は、基本的に高校や大学では、打てる選手であるからだ。

 もっとも統計の重要な143試合するようなプロと違い、一発勝負のトーナメントは、送りバントも重要であったりはする。




 最終戦から二日目の朝、まだ直史の肩は重い。

 たったの一度本気を出しただけで、こんなダメージが残っている。

 もっとも来年もやるとしたら、いざという時には150km/hオーバーを投げてくる、という意識がバッターにはあるだろう。

 それに対応しなければいけないと考えると、より打つのは難しくなってくる。


 キャッチボールから始まり、ほとんどスローボールのピッチングも行う。

 筋肉にたまった疲労物質は、運動をすることでかえって霧散するという。

 単純に休んでいるだけでは、回復しきるというものでもない。

 七試合のうち、二試合は投げる必要があるだろうか。

 そしてバッテリー陣全員を集めての、ミーティングも行われる。


 平良はやはり、今季はもう間に合わない。

 ただ左手の手首であるので、選手生命に別状がないのは幸いだ。

 利き腕の逆の腕というのは、バランスを取るのに重要なのだが、そこまで器用に扱える必要はない。

 一ヶ月もすれば治癒するし、球威に影響することなどもないだろう。

 しかし言及されなかったが、直史としては一つだけ心配はある。

 バッターの打球を怖がるようにならないか、ということである。


 ピッチャーはフィールディングの技術も重要だ。

 平良のスライダーは右打者からは空振りを取れるが、左打者にはゴロを打たせることが多い。

 それをピッチャーは当然、自分でも処理することがある。

 その打球を恐れるようになってしまえば、ピッチャーとしての総合力が低下する。

 直史などは一試合に、何度もピッチャーゴロを処理する。

 相当強い打球であっても、キャッチ出来る守備力が重要なのだ。

 ただこれは、下手に意識させてしまうと、逆に悪化するかもしれない。


 マリンズ戦で首脳陣は、木津も先発に組み込むことを考えている。

 考えてみれば木津は、一軍に上がってからこっち、全ての試合で勝ち星がついているのだ。

 もちろんそれは、まだデータが不足しているため、攻略が難しいというのはある。

 だがレギュラーシーズン終盤から、ポストシーズンまでの試合で、木津が勝負を決めた試合というのは、重要な試合が多い。

 ライガース相手に二勝目を取っていなかったら、今頃はどうなっていただろうか。


 日程的に直史以外は、それほど無茶な登板間隔でもない。

 強いて言えばオーガスを第一戦に持ってくれば、中五日ではある。

 ただポストシーズンの中五日など、普通にありうることだ。

 レギュラーシーズンの終盤でも、それぐらいはやってきても珍しくない。


 現時点での予定は、まだ決まらない。

 直史の肩の状態が、どこまで回復しているかによるからだ。

 出来れば第一戦に投げてくれれば、さらにもう一試合投げることは出来るだろう。

 もっとも第二戦に投げても、最終戦までは中六日となるが。

 過去の直史は、一人で四勝という、昭和の野球をやっていたりする。

 ただ直史だけではなく、ポストシーズンなら上杉も、それに近いことはやっていた。

 もちろん武史はやっていない。


 日常の光景であった、レギュラーシーズンの143試合。

 だがポストシーズンも進み、日本シリーズになってくると、その空気が懐かしいものに変わる。

 高校野球の、負ければそれまでという空気。

 これを思い出すからこそ、日本のピッチャーは強いのかもしれない。




 三日目、肩の痛みがなくなった。

 チームドクターも検査して、問題ないとのお墨付きがつく。

 これでレックスは、第一戦にエースを投入できる。

 あとは対戦相手が、果たしてどういう投手運用をしてくるかだ。


 二連戦、三連戦、二連戦という日程上、先発ピッチャー六人は必要ない。

 そしてマリンズの場合、五人までは勝ちを計算出来るピッチャーだ。

 もっとも弱点と言うべきは、リリーフ陣があと一枚足りない。

 七回まで投げてもらった時と、六回で交代した時とで、かなり勝率に差があるのだ。


 クローザーの強さは、これまたマリンズの方が上だろうか。

 セーブ王を取っているのは、マリンズの矢車。

 この数年は安定して、30セーブ以上を記録している。

 今年は特に安定感が抜群で、防御率も1点台前半というものであった。


 負け星がついたのが一つだけ、セーブ機会に失敗したのがもう一つと、完全に八回で終わらせるクローザーだ。

 ただ元々レックスは、リードして終盤を迎えたら、そのままリードを保つという勝ち方をしてきた。

 逆転して勝つという、野球の醍醐味があまりないのが、レックスとマリンズに共通したところである。

 おおよそレックスも、先発の投げてくる順番が決まった。

 第一戦に直史、第二戦に三島、第三戦にオーガス、第四戦に百目鬼、第五戦は木津。

 リリーフ陣としては、大平をクローザーとして使うが、あとは青砥などもリリーフとして投げてもらう。


 青砥は今年で引退だ。

 そのためこの日本シリーズが、公式戦の最後の試合となる。

 どこで投げるかは分からないが、今の青砥の力を考えると、勝っている試合の重要な場面では、おそらく使われることはないだろう。

 ビハインド展開や、負けが見えた試合で、敗戦処理をする。

 ただこれまでの貢献度からして、引退試合をオープン戦などでするだろうな、とは誰もが予想している。


 年上でやっていた人間が引退していくのは、ごく普通のことであった。

 だが青砥などは、同じ千葉県出身で、そして年下のピッチャーであるのだ。

 真田ももういないし、蓮池などもMLBに移籍した後、そのままあちらで引退した。

 白富東の後輩の中でも、いまだに現役を続けているのは、悟ぐらいであろうか。

 武史はちょっと例外なので除く。


 直史の一度目のプロ入りの時、レックスで共に投げたピッチャーは、もう本当に青砥だけであった。

 本当に、時の流れるのは早い。

 もう子供たちの世代が、プロに入ってくるぐらいなのだ。

 そして直史としては、司朗がセ・リーグのチームに入ってくれば、ちょっと上手く打ち取れないと思う。

 完全に相性が悪いとしか言いようがない。

 直感的に投げてくるボールが、何か分かってしまう。

 そんなバッターに対しては、むしろコントロールがアバウトな、大平のようなピッチャーの方が天敵になるだろう。


 だれだっていずれは衰えて、いつかは負けていくものだ。

 直史はその自然の摂理に、ここまで反してやってきた。

 とりあえず目指すのは、最年長沢村賞記録を更新し続けることか。

 正直なところさっさと、昇馬あたりに球界ナンバーワンの座を譲りたい、などと考えてもいる。


 もっとも昇馬の場合、ピッチャーとバッターのどちらで使うのか、それが問題だ。

 甲子園でも簡単にホームランを打っていたのだから、これから三年生になるまでに、どこまで成長していくのか。

 司朗と昇馬の二人の甥が、次のプロ野球界を引っ張るのか。

(どっちもさっさとMLBに行きそうだけどな)

 そのあたりは二人とも、冷めたところはあるよなと考える直史であった。



×××



 第十部B、本日より再開です。

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