第165話 勝敗と大局

 レックスのリリーフ陣は確かに安定しているが、それでもライガース打線に一点差は厳しい。

 しかしこの六回の裏、ようやくボールに勢いが乗ってきた畑は、調子に乗ってしまった。

 四番から始まるレックス打線を、ツーアウトにあっさりと追い込んだのも悪かっただろう。

 六番迫水は、木津に捧げるソロホームランを放ったのであった。


 迫水はキャッチャーの中では、トップクラスの打撃力を持っている。

 それをまさか、忘れていたというわけでもないだろうに。

 大介のホームランなどが出て、ライガースへ流れが向かっていると考えてしまったのか。

 ともかくこの、点差をさらに増やすソロホームランは、値千金と言ってもいいものであった。

 必死で投げる木津のことを、一番理解している迫水だからこそ、打てたものかもしれない。


 ライガースは大介が打ったことで、少しだけ気が弛んでいたのだろうか。

 このポストシーズンは、一試合の価値がレギュラーシーズンとは段違いである。

 それが分かっていない、畑でもなかったろうに。

 そもそもファーストステージを戦ってきたことで、ライガースの中に疲労が残っていたのか。

 あるいは第一戦を計画通りに落としてしまったことが、想像以上にメンタルにダメージを与えていたのかもしれない。


 ここからレックスは、抜群の安定感を誇る、勝ちパターンのリリーフが使える。

 去年のオースティンほどではないものの、30個以上のセーブを記録した平良。

 そしてサウスポーのセットアッパーの大平と、この二人は若いが強力である。

 国吉はそれよりも、ほんの少し落ちることは落ちるのだが、それでも30ホールド以上を記録する。

 50試合近くも登板していれば、主力と言っても間違いはないだろう。


 七回の表は、五番から始まるライガースの打線。

 もうここでライガースも、ピッチャーのところには代打を出していける。

 六回四失点というのは、畑にしては少し悪かった。

 だが普段のライガースであれば、普通に援護してひっくり返せる点数なのだ。

 しかしここからの、レックスの鉄壁のリリーフ。

 二点差というのは、ちょっと難しいのではないか。




 ランナーのいる場面でホームランを打てばいい。

 大介の考えていることは、とてもシンプルである。

 完全に今日ライガースの得点を一人で取っている大介としては、レックスのリリーフ陣など、まだまだひよっこもいいところだ。

 諦めたらそこで試合終了なのだ。

 畑もどうにか、その回は一失点だけで抑えたのだから。


 もっともここからは、かなり運の要素も強くなってくる。

 試合の流れが、ここでレックス向きだと示している。

 七回の表、ライガースの攻撃は五番から。

 この打順で国吉から点を取るのは、ちょっと難しいところである。


 八回の表は、ランナーが一人でも出れば、大介に回ってくる。

 しかしさすがにこの場面は、敬遠をしてくるのではないか。

 二点差を確保できていたら、ランナーのいない場面では敬遠してくるだろうか。

 いや、むしろソロまでは許容して、勝負してくるかもしれない。

 下手に大介をランナーとして置いておく方が、レックスとしては厄介と思うだろうからだ。


 ライガースベンチ全体に、緊張感が漂っている。

 重苦しい雰囲気とは違うが、ここで負けたらもう後がないのだ。

 おそらく第六戦までには、直史がコンディションを整えてくる。

 そこで勝負に徹するピッチングをされれば、ライガースの勝てる確率はほぼない。

(なんとか下位打線で、一点でも取れれば)

 勝負さえしてくれれば、あるいは逃げ気味でも届く範囲にさえ投げてくれれば、大介はスタンドに放り込む。

 今日は完全に当たっている大介なのだ。


 レックスのリリーフ陣は、普段なら勝負してくるかもしれない。

 だがポストシーズンで、ここまで木津が勝負してきたのだから、一打席ぐらいは逃げてもおかしくない。

 先発が三打席、しっかりと勝負してきたことが、そういう流れとして受け止められる。

 リリーフ陣は点を取られないのが仕事だ。

 冷徹にベンチが判断して、申告敬遠を使ってくるだろう。


 ここから逆転の道を考える。

 クリーンナップに一度は回ってくるのだから、そこで一点ぐらいは取れないといけない。

 あとはライガースの方も、ピッチャーが追加点を許さないこと。

 ここでの追加点は、完全に試合を決める一点となる。

 さすがにピッチャーを総動員して、追加点は防がなければいけない。

 ライガースは乱打戦になると、終盤にはピッチャーが〆てくれるチームでもあるのだ。




 レックス首脳陣も、ここからはかなり考えていく。

 ライガースがどれだけヒットを打ってくるか、それとも打ってこないか、あとは代打をどう使ってくるのか。

 左ピッチャーに強い右バッターも代打にはいるので、そこは大平をクローザーとして使う方針も考えていく。

(出してくるとしたら、ピッチャーのところは間違いなく代打だ)

 九回の表には、代打を出すようなバッターには回らないと思う。

 回ってしまったらその時点で、レックスの方が負けてしまっているだろう。


 七回の表、比較的楽な打順でもあったが、国吉は三人でライガース打線を抑えた。

 もっともベンチに戻ってきたら、一試合を投げきった先発のように、もうヘロヘロになっていたが。

 30球ほども投げたのだから、それも仕方がない。

 だいたいピッチャーのクオリティは、1イニングに15球までと言われたりする。

 25球を超えたら投げすぎ、と判断していたりもするらしい。


 これで八回の表は、八番バッターから打順が回ってくる。

 通常なら八回の表は、大平を登板させる。

 しかし代打に左殺しを出してくれば、そこからランナーがいる場面で大介に回るのか。

 それはそうと七回の裏は、ピッチャーの打順にレックスも代打を出したが、三者凡退に終わる。

 このまま試合を動かさないのも、それはそれで良さそうな気もする。


 ブルペンでは大平と平良、どちらもがしっかりと準備をしていた。

 打順のバッターの左右打席によって、どちらを使っていくか決まるのだ。

 平良はスライダーが強力なので、圧倒的に右バッターに対して強い。

 対して大平は、比較的にだが左バッターに強い。

 どちらを先に使うか。

 迷った末に貞本は、オカルト頼みのことをした。


 レギュラーシーズン、レックスの優勝を決めたのは、木津から大平というリレーであった。

 ここは途中で他のピッチャーを挟むが、やはり大平でいいのではないか。

 もっともそんなオカルトを忠実になぞるなら、最終戦でこそ使わなければいけないのだが。

 一応は相手の左殺しは、八番か九番で代打に出てくるだろう、という予想もある。

 建前上はこちらを上げて、八回の表は平良に託した。


 八番から始まる打順で、左の代打をライガースは出してくる。

 どうにかツーアウトまでとってくれれば、一人ぐらいはランナーに出してもいい。

 大介の打順が回ってくれば、そこはもう敬遠してしまおう。

 盛り下げる展開と言われるかもしれないが、もう目の前にある勝利を、掴みにいかないわけにはいけないのだ。


 代打を二人連続で出してきたが、平良はこれをしっかりと抑える。

 そして先頭に戻って、一番の和田である。

 今日は完全に、外れの日と言ってもいい和田。

 しかしここで彼がランナーとして塁に出ると、大介がホームランを打てば一気に同点に追いつかれる。

 確率的にどうこうではなく、こういう場面で勝負してはいけない。

 得点圏打率や、決勝打の打率などを見ると、明らかに大介は勝負強いバッターであるのだ。




 左バッターの和田に対しては、平良のスライダーもそこまでの効果はない。

 しかし決め球であるので、全く使わないというわけにもいかない。

 ここを和田で切ってしまうことに成功すれば、最終回は大介から。

 ホームランを打たれても、まだ同点には届かない。

 そしてその打順からでは、大平を投入していたとしても、左殺しの代打をクリーンナップの代わりに出すのは無理だろう。


 平良も集中して投げている。

 緊張してはいるのだろうが、それを楽しめるのがリリーフとしての適性だ。

 自分が打たれれば、即座にチームの敗北につながる。

 勝ちパターンのリリーフの重責というのは、そのプレッシャーと戦うことになるのだ。


 この回、代打攻勢も三者凡退で凌いだ平良。

 彼の仕事は終わったとも言えるが、球数はそれほど多くもなっていない。

 九回の表は、大介からの打順となる。

 大介はピッチャーの左右には、さほど影響されない。

 サウスポーのスライド変化には、やや弱いというデータはある。

 しかし大平には、そんな大きな変化球はないのだ。


 基本的の大平は、三種類の球種を持っている。

 ストレートに波があるが、それを除いてツーシームとあと一つだ。

 だがこのあと一つというのが、実は確定出来ない。

 スプリットをマスターしようと思ったら、上手くチェンジアップのように投げられるようにもなった。

 しかしすると、スプリットが投げられないようになった。

 

 なんというか、器用な感じに不器用なのである。

 その日によって、あるいは週単位で、投げられる球種が変わっていく。

 この秘密はチーム内部でも隠されていて、おかげでそれなりに通用していっている。

 だが当初はクローザーをどうするか迷っていたのを、平良に固定したのは、この不安定さがあったからだ。


 今日の大平の変化は、カットボールっぽい変化になっているらしい。

 一応はスプリットを投げているつもりなのだが、最後に指がどう引っかかるかで、変化は変わってくる。

 ツーシームは少しずれる程度の変化なので、これとカッターがあるなら悪くはない。

 ただこのカットボールの変化球を、大介の懐に投げ込むような、そんな精密なコントロールは大平にはないのだ。


 あと1イニング。

 回またぎで、平良には最終回まで投げてもらう。

 もちろん何かあった時のために、大平にも準備は続けさせておくが。

 サウスポーではあっても、その利き腕の利点を充分に活用できていない。

 そんな大平よりも、平良の方が首脳陣にとってみれば、頼りがいのあるピッチャーなのだ。




 八回の裏も終わる。

 さらなる追加点などはなく、いよいよライガースの最後の攻撃。

 スコアは4-2と、大介から始まる打順であっても、おおよそ勝負は決まったようなもの。

 ただホームラン一発で、空気を塗り替えるのが大介なのである。

 もしもホームランでも出て、一点差でクリーンナップに回れば、一気に逆転さえありうる。

 しかし今シーズン、セットアッパーからクローザーに固定された平良は、首脳陣からの信頼が厚い。


 申告敬遠でもいいのでは、という考えもある。

 ただ大介をランナーに出して、クリーンナップの誰かが一発を打てば、それで同点である。

 結局のところ、何が正解かということは、後から答え合わせをするしかない。

 ここで平良が打たれるのは、許容の範囲内だ。

 しかし大介を抑えることが出来たなら、残りの試合でも計算をしていくことが出来る。


 サウスポーのスライダーであれば、大介にも通用したであろう、と言われている平良。

 懐に飛び込むスライダーで、どれだけ大介の意識を引くことが出来るか。

 パターンとしては懐に飛び込むスライダーを焼き付けて、最後には外角勝負といったところがセオリーだろう。

 もちろん迫水としては、そんな安易なピッチングをすれば、直史から無言の圧力を受けてしまう。

(確かに懐に入るスライダーを、印象付けることは重要だ)

 あとはフロントドアのスライダーで、外角ぎりぎりを攻めてもいいだろう。

 しかし決め球はどうするか、既に迫水は考えている。


 大介としてはここは、最低でもホームランを狙いたい。

 平良はしかし、普通のホームランを打たれても、それなりに図太く次に投げるピッチャーだ。

 大平もそうだがこの二人は、相当に神経が太い人間ではある。

 もっとも平良もまた、打たれたらそれはキャッチャーのリードによるぞと、サイン通りに投げるタイプであったりする。

 読まれてもなお、打たれないスライダーへの自信があるからだが。


 そもそも平良は今シーズン、大介との対戦自体がほとんどない。

 ライガース相手には直史以外は、かなり負け越している試合が多いからだ。

 勝っている試合にしても、点差があれば出て行かないし、僅差であっても大介と対戦する打順にはなかったりする。

 一応は対戦の順番はあったのだが、あっさりと申告敬遠されてしまった。


 大平と同じく平良も、まだまだクソ生意気な若僧ではある。

 申告敬遠をしなくてもいいし、万一打たれてもまだリードしているなら、勝負を楽しめる度胸を持っている。

 迫水としてもさすがに、ほぼ初対戦となる平良を、確実に打てるだろうかと思っている。

 高速スライダーに加えて、ストレートも軽く平均は150km/hを超えているのが平良なのだ。

 もっとも大介としては、ストレートは160km/hを超えていないと速球とは感じない。

 170km/hまでは普通に、ホームランに出来るのだ。


 緩急を使わなければ、タイミングをずらすことは出来ない。

 平良は一応チェンジアップにカーブと、遅い球も投げられることは投げられる。

 だがその精度というか威力は、やはりストレートやスライダーほどではない。

 まずはスライダーの威力を見せる。

 それを少しでも脅威と感じてくれれば、そこから組み立てていけるだろう。




 随分と外から、スライダーが近づいてくる。

 高速スライダーの、いわゆるスイーパーと呼ばれるものだ。

 バットを伸ばせば届くかとも思ったが、さすがにまだ遠い。

 それでも余裕でボール球と思えたものが、かなり近くにまで接近してきたが。


 フレーミングと審判の傾向によっては、今のもストライクに取られるかな、と大介は思ったりした。

 もちろん実際にそんなボールであったなら、大介は充分にカット出来る。

 外のボールを見せたからには、次には内角に投げ込んでくるだろうか。

 今日は二本のホームランを打って、全打席ヒットの大介に、安易な攻め方はしてこないだろうが。


 インコース、大介ならば打てるボール球。

 しかしここは回避して、ボールカウントを増やした。

 ツーボールになってしまったが、平良と迫水のバッテリーが、完全に逃げるピッチングをしているとうわけではない。

 その証拠に三球目は、内角に入ってくるスライダーを投げてきたのだ。


 大介としては、充分に捉えられるボール。

 しかしわずかにタイミングが早く、右に引っ張りすぎてしまった。

(最初のスライダーとはちょっと違ったな)

 落ちる量の少ないスライダーは、目の錯覚で浮き上がるようにさえ見える。

 初球はそうだったが、二球目は普通の大きなスライダーに見えた。


 高速スライダーを高めに投げるのは、フライボール革命のアッパースイング対策の一つである。

 しかし大介の場合は、あくまでもレベルスイングでボールを飛ばす。

 バレルで打つのではなく、あくまでもジャストミートして、ライナー性の打球でスタンドに運ぶ。

 それが大介のバッティングであるが、近年ではアッパースイングも使い分けて、長打が出やすいようにしている。

 もっともそれでも、フライの割には犠飛が少なく、スタンドまで届いてしまうのだが。


 今年は本当に、ライナー性の打球でフェンス直撃、というものが多かった。

 ただホームランの数は、圧倒的に減ってしまったのだ。

 それでなおホームラン王というあたり、他の選手の立つ瀬がない。

 だが大介はひたすら、バッティングを楽しんでいるだけなのだ。

 ショートという守備負担の大きなポジションを、今年も一年続けることが出来た。

 それはまさに、体格が小さく重量が軽いからこそ、出来たものであるだろう。




 ツーボールワンストライクで、果たして何を投げてくるのか。

 そう考える大介に対して、迫水は内角にスイーパーを投げるという組み立てを考えていた。

 直前のスライダーとは、球速と軌道の差で、打ち取ることが出来る。

 それが狙いで高速スライダーを要求したのだ。


 平良としても自分の球種の中で、一番自信があるのがこのスライダーだ。

 かつてはこのスライダーで、右バッターからはいくらでも三振が奪えたのだ。

 だがこのスイーパーの本当の価値は、落ちる量が少ないところにある。

 すると左バッターの内角に対しても、空振りが取れるのだ。

 ただし大介を相手に、空振りが取れるとは思っていない。


 迫水が期待しているのは、ボールの下を叩いてくれること。

 それによってフライを打たせて、浅い外野フライあたりで打ち取ることだ。

 空振り三振の数が、シーズンを通じても50個を超えたことが、キャリアで一度しかない大介。

 だがあと少しでスタンド入り、というフライならばそれなりにあるのだ。


 ここでの高速スライダーにも、大介は反応していた。

 そして迫水の想像とは違い、しっかりと軌道を読んでいた。

 腕を上手く畳んで、完全にピッチャー返しの打球。

 しかしインパクトの瞬間、角度が上手くついていないのが分かった。


 人を殺す打球が、平良の頭上を通るか。

 そこに向けて平良は、グラブを差し出していた。

 キャッチこそ出来なかったものの、グラブを弾いたボールは、センター前に転がる。

 一塁でアウトには出来ないが、二塁に進めるような打球ではない。

 結果としては、単打に抑えたようなもの。

 試合の勝敗からしてみれば、これは充分に平良の勝利と言っても良かったであろう。


 しかしさらに大局的に見れば、問題は違うところにあった。

 平良は弾かれた左手を抱え、その場にうずくまってしまったのだ。

 過去にも大介のライナーを、キャッチした内野が手首を捻挫、などということはあったのだ。

 素直にヒットにさせてしまえば、あの打球の軌道からして、ホームランにだけはならなかっただろう。

 だが平良もまた、フィールディングもいいピッチャーであることが、この点では災いした。

 グラブを外してみれば、左手の人差し指と中指が、大きく膨れ上がっていたのである。




 この試合はいい。まだレックスには大平がいる。

 しかし脱臼なり骨折なり、これが数日で治るとは思えない。

 ベンチに下がってきた平良の様子を見て、もちろん貞本は即座に交代を告げる。

 大平の出番となったのだ。


 ノーアウト一塁という状況は、それほど問題ではない。

 二点差があれば大平ならば、ライガースのクリーンナップでも、どうにか抑えきれるだろう。

 問題は平良が抜けて、ファイナルステージの間には、戻って来れないということだ。

 いや、ファイナルステージどころか、あるいは日本シリーズでさえも。


 不幸中の幸いと言うか、グラブの手のほうであるので、再起不能とか復帰に数ヶ月とか、そういうことはないだろう。

 だがあれだけの怪我をしては、そもそもグラブをはめられない。

 痛み止めなどを使ったとしても、ピッチングというのは微妙なバランスで成り立っているものだ。

 左手はグラブの位置を動かして、体軸や体幹がぶれないようにする働きがある。

 右手が無事なら投げられる、というものではない。

 あとはどれだけ早く、復帰してこれるかというのが重要だ。


 ファイナルシリーズに加えて、日本シリーズに勝ち進めても、クローザーがいない。

 もちろん大平もそれなりに、クローザーの経験はしている。

 しかしどちらにしろ、安定感が一番高い、勝ちパターンのリリーフがいなくなってしまった。

 今年のレックスは、平良が逆転されて負けた試合は、レギュラーシーズンでは一度しかなかったのに。


 一気にリリーフ陣の力が弱くなった。

 勝ちパターンの三人の中の一人が欠ければ、リリーフ陣の力は一気に落ちる。

 もっとも大平などは、回またぎも可能なピッチャーだ。

 それにしても限界はあるだろう。

 勝ちパターンでばかり投げていると、1イニングを投げることに神経を注ぎすぎて、長いイニングが投げられなくなったりするのだ。


 この試合に勝ったとしても、残りの試合は一気に不利になった。

 レックスのベンチとブルペンは全員がそれを理解していた。

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