幕間 とある新聞紙の切れ端

第13話 店長は泣いた


 ……日早朝。

 ガラクタ食堂にて、大爆発が発生。

 銅爛石コパランの調理用加熱機『ゴチャ・マッゼ』が爆発の発生源とされている。

 爆発当時店内に居たガラクタ食堂店長は涙を堪えながら、こう語る。


銅爛石コパランであったから、腕を失ったくらいで済んだ。金爛石グムランであったら、さすがに死んでいただろう」

 実際に彼の妻であるバーバラは、爆心地から離れた場所である店の入口に居たが、爆風に吹き飛ばされ腰を床に強打。また、爆心地に一番近かった従業員は大火傷と大怪我をしており、現在ドクターの元で治療が行われている。


 アタノールでは、急速な技術革新により、銅爛石コパラン製や金爛石グムラン製の機械が増えており、市民の生活を豊かにしている。

 しかし、急激な技術革新に安全性面がついていけず、このような事故が多発している。


 今回爆発した調理用加熱機『ゴチャ・マッゼ』の作成元工房にもインタビューをしたが、技術士は首を傾げていた。

銅爛石コパランによる銅加工と銅爛石コパラン抽出液は、持続力はあるが一度に出せるエネルギー出力が少ない。今回のような酷い事故はとても珍しい」とのこと。

 我が社でも過去の記事を確認したが、たしかに銅爛石コパラン製の暴走した中では、一番大きな事故だったと言える。


 銅爛石コパランは、基本的に出力が少ないが持続力があるもので、繊細な機械に使われるようなもの。特に銅爛石コパランから抽出された銅線や銅加工品は、普通の銅線よりも頑丈かつ加工がしやすい素材だ。

 なので、近年は様々な家庭用の機械として利用されており、同工房からも昨日洗濯機械『アライ・マッシュ』が発売されたばかり。

 現在は爆発原因を特定し、各機械の安全性を確認すると、工房は息を巻いていた。


 しかし、もしも機械が金爛石グムラン製ならば、もっと酷いことが起きていただろう。


 金爛石グムランは蒸気スクーターや、蒸気バイク、蒸気採掘機のように大きな機械に使われる。

 大型機械の場合、金爛石グムラン抽出液と少量の溶岩を化合することで生まれた強大な蒸気によるエネルギーでないと、動かすのが難しいのだ。しかし、エネルギーは大きければ大きいほどコントロールが難しい。

 特に常に増加傾向にある鉱山道では、この爆発による死亡事故が多発している。


 勿論、溶岩ではなく水にすることで、蒸気スクーター等は安全性を確保する方法もある。しかし、どうしても掘削機の場合はパワーが足りないため、難しいとのこと。


 新しいエネルギーによって、我々アタノールの街には他の街にはない素晴らしい機械が作られた。他の街では、食材を保存するのも氷を買うか、食材をハーブ漬けにするか。しかし、アタノールには銅爛石コパラン製水流式保存箱が出来てからは、その悩みも解決された。他にも、まだ他の街は馬車や自転車が主流で、単なる蒸気機関の鉄道や車は少ない。更には、転移魔法は英雄たちのみ使用ができる。

 けれど、金爛石グムラン製の蒸気スクーターや蒸気四駆車両は、燃料は少なくとも、それらよりも早く走れるのだ。


 しかし、安全性面はまだ不安定なため、他の街への販売は難航している。この問題さえ解決できたなら、アタノールは更に飛躍した都市として話題になるだろう。

 最近は宝石モドキや、鉄モドキなども火山から多く採れることがわかり、この資源を利用した新エネルギーの誕生を望まれる。

 もし生まれた際には、金色の金爛石グムラン製機械、銅色の銅爛石コパラン製機器の二色の市場に、美しい彩りが増えるだろう。


 最後に、未だ治療中の従業員が無事に帰還し、この事件について証言できる日を、我々は待とうと思う。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る