第五十八話 崩御
ウルクに帰還し、そのままの足で冒険者ギルドに向かった。
戦士の岩山を攻略したことは事前に報告してあったが、かなり驚かれた。
だがしかし予想よりも反応が薄かった。もちろん盛大に歓迎されたかったわけではないが、職員たちは皆、気もそぞろといった様子だった。
エタたちがウルクを離れていた間に何かがあったとしか思えなかった。
リリーとはそこで別れ、エタたちにとっては最も気が重いニントルへの報告に向かうことになった。
迷宮を脱出してからじっくり吟味してザムグたちの遺品を回収した。
……顔や骨はもうほとんど原型をとどめておらず、持ち帰る意味を見出せなかったが、それでも何かを持ち帰らずにはいられなかった。
ぽつんと一人でエタたちが用意した借家の中に一人でいたニントルはエタたちの顔を見て表情をほころばせた。
彼女の面倒を見てくれる人を雇ってはいたがそれは彼女の孤独を慰めてはくれなかったらしい。
回収した遺品と許可が下りたザムグの掟をニントルに渡す。
「みなさん、本当に……ありがとうございます」
涙ぐみながらニントルは礼を述べた。
ターハとシャルラがニントルの肩を軽く抱く。
エタの心は軽くならなかったが、それでも少しだけ救われた気がした。
わずかに余韻に浸るところに。
じりりりりりとけたたましい音が鳴る。
その音は全員の携帯粘土板から発せられていた。
何事かとめいめいに携帯粘土板を取り出すと、ただ一つの文面だけが記されていた。
「ウルク国王が崩御なされた……?」
ようやくエタは理解した。
冒険者ギルドのみならずウルクの様子がおかしかったのはこれが理由だ。王の体調が思わしくなかったのだ。
そしてそれは王の死という結末をもたらした。
あとがき
今回の話で第二章は終わりになります。
第三章の投稿は来週中を予定しております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます