もう給料いらないから帰らせて

ここのつ

第1話 幸福度の天秤

ごまドレッシングをかけるサラダと牛乳をかけるコーンフレークを同じ皿に盛る。

味が混ざるから牛乳は少しだけ。


うどんを食べたいけど鍋を洗いたくないから賞味期限切れのパンを食べる。


給料は低いけど言われたことを淡々と頑張る寿司屋のバイトをやる。


時給が高く友達に誘われたコンビニバイトは1ヶ月で辞めた。






電気のついたリビングには誰もおらず、音量を上げられたテレビがついていた


電気を消しテレビを消し部屋へ籠る


また日が進む


アルコールは効かず


また時が進む







私の涙は言葉である。


口から出るはずだった言葉が涙に変わり、目からこぼれる。


コップに水を注ぎ続ければ溢れるのと同じように、自分にも貯めておける言葉のキャパシティがあってそれを超えた時コップをわざと傾けて流すのだ。


そしたらまた溜められる。







午前1時24分


自室のベッドの上

クーラーがカタカタと規則正しく鳴き続け、車のエンジン音が微かに聞こえる


今日で夏休みが終わる


今日は本屋に行ったんだった

2冊買った

本棚にしまった


届かない


もうめんどくさい


眠気と勿体なさが私の背中を押し、手が勝手に消灯のボタンを押した







コンビニバイトは年上の従業員ばかりだった。


優しく教えてくれたし、ミスをしても怒鳴られることは無かった。



だけど、ずっと愚痴を聞かされていた。


初日から。ずっと。



別に嫌いじゃなかった。みんなから嫌われているらしいおばさんのことも、凄くマメな店長のことも、いっぱい揚げ物を作るおじさんのことも。


その人らのプロフィールは他者からの愚痴で埋まり、私にそれを話してくれたおばさん達のプロフィールも黒く悲しい言葉で埋まった。


私のバイト用プロフィール帳は1週間目で背表紙が取れかかっていた。







午前1時48分


もう寝る


もう寝る


寝たら


寝てしまったら


今日が終わったら




また私は夢の世界へ籠るのだ


ふわふわ ぐるぐる




見ないものを選ぶのだ


見ないことにして


聞かないことにして


受け止めた振りをして



わたしは

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