私は夜風を許さない
真倉樺
第1話
私のお腹を苦しめた。腹痛という名のポンポンペインを私は許さない。
高校へは自転車で20分。まあ大した距離ではない。所属している吹奏楽部の練習は夕方6時に終わる。
「ばいばーい」
片手をあげながら、片手で操縦を握り、ゆらゆらと前へ進む。
私の通う学校は電車通学の人が多い。なぜなら、山に高校があるから。同じ2年の吹奏楽部に自転車通学は私だけ。
なかなかいい滑り台になりそうな下り坂。ブレーキをしなければ、ジェットコースターよりも怖い乗り物になるだろう。私をあの世へも連れて行きそうな恐怖の乗り物に。
部活動で疲れ切った体力をさらに絞り出して両手を硬く握りしめる。帰りが下り坂でまだ良かった。上り坂だったら、蟻地獄のようにゴールの見えない坂道を延々と登っている感覚に見回されるだろう。
ブレーキをかけつつも、スピードは出ている。あたりは看板の文字が見えないくらいには真っ暗である。前髪をかきあげる風は、鼻へも入場し、ツンとほのかな痛みを残して退場していく。半袖では冷えという問題児を抱え込んでしまう。
「明日から長袖着よ」
風で消えそうなくらいの声量でポツリとつぶやいた。
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