第36話

 訳も分からず、お姉さんに言われるまま体を任せる。


 得体の知れない恐怖からか、完全に借りてきた猫状態だ。


 結局、この機械は写真を撮るためのものだったらしい。


 それならそうと言ってくれればいいのに、絶対に僕の反応を見て楽しんでいる。


 しかもさりげなく抱きついてくるし、次やったら駆け込みますって後で注意しとかなきゃな……


 けれどまぁ、お姉さんがいつにも増して楽しそうにしているので、今回は大目に見てあげよう。

 

 多分、お姉さんはゲームセンターが大好きなのだろう。


 楽しい気分に水を差す程、僕は野暮じゃない。


 そうして、上機嫌のお姉さんが写真室の横の部屋から出てきた。


 中でなにやら書き物をしていた様子だけど、一体何をしていたのだろう。


 笑顔のお姉さんが僕に一枚の紙切れを手渡した。


 先ほど撮った写真に、「バスで来た」と文字が印刷されていた。


 何が何やらよく分からないけれど、おそらくお姉さんは中でこの文字を書いてきたのだろう。


 ふふ……そうかそうか。


 よく分からないけど、おそらく、【プリクラ】の作法として、交通手段を写真に記載するという慣わしがあるという事だろう。


 また一つ賢くなった自分に、思わず頬が緩んだ。

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