第15話 レーブユニオン企画会議
サクサク
「クッキー...クッキー...」
「このお寿司美味しいッスね!」
あのー、これ一応企画会議ですよね?
僕達は僕の配信が終わった3日後、事務所に集合して企画会議をすることにした。
僕の配信は夜から、しかも今日は土曜日なので昼に集まることが出来るということだ。
「そんな顔をするな、真人。今日は初配信成功の打ち上げみたいなのも兼ねてるんだ。楽しまなきゃ損だぞ? ちなみにこれは経費で落とす」
瑠璃さんはずっと目を輝かせながらクッキーを齧っている。
「このクッキーサクサクしていて丁度いい。バターが多めに入っているのでバタークッキーっぽさもあって甘くて美味しい。...真人...また作ってきてね?」
瑠璃さんそんな早口で話せたのかよ!
僕は取りあえずはまた作ると返す。
作るかどうかは気分次第であるが...
「そういえば兄さん、飲み物も買ったって言ってたよね。飲みたいから出して-」
どうやら醤油をつけすぎたようだ。喉が渇いた。
「これと...これから選んでくれ」
二種類の飲み物がテーブルの上に並び...は?
机に出されたのは...コーラとオレンジジュース?
「...え? ちょ、まっ、あれ?」
僕は驚愕した表情で兄さんを見つめるが兄さんは表情を崩さない。
どうやらドッキリじゃないみたいだな...
「...ジュース!? センスない...緑茶一択...あ、真人...クッキー美味しかった...」
コトン
瑠璃さんが緑茶をテーブルの上に乗せた。
「2本持ってきた...クッキーのお礼...1本あげる...」
あ、ありがてぇ! これがなければもう寿司が食べれないとこだった...
「オレンジジュースッスー! 嬉しいッス! アキタさんセンスあるッスね!」
いや、どうみてもないだろ!
「センス...二人ともない...ありえない...!」
「ガーン...ッス...」
こ...これに関しては流石に二人を庇えない...
兄さんはこんなことしないと思っていた。
前、寿司を食べに行った時は水飲んでたのになぁ
「友人にも指摘されたし俺っておかしいのかな...」
部屋の角で落ち込んでいる兄さん、机に突っ伏して燃え尽きているあかりさん。
これって企画会議だったよな?
__________________________________________
ふぅ、ようやく皆が元に戻った。
一時間後、寿司を食べきった僕たちは机に座って企画会議を始めようとしていた。
「何か意見のあるものはいるか?」
「はい、はーい! 皆でバーベキューがしたいッス!」
勢いよくあかりさんが手を上げる。
でもバーベキューって顔出さないといけないよな...?
「バーベキューって顔出しするってことか? ...まだ時期が早いように感じるな。リアルでのコラボはこの時期だと危険かもしれないからな」
リアルは炎上や特定の危機が常に付きまとうから仕方ないな。
そうだ、視聴者さんがコメントに打っていたあのゲームを提案してみるか。
「ブロックラフトでのコラボはどうかな?」
場が静寂に包まれる。
「...安牌だが、企画としては薄すぎる。ただ、ブロックラフトをやるという企画はいいと思うな」
「だったら...バトルロワイヤル...やればいい。企画としても成り立つ...」
「なるほど、それならインパクトもあるし4人で出来るな。よし、他に案がなければこれをやろうと思うが、他に意見があるものは?」
「「「...」」」
「よし、これで決定だな。ブロックラフト経験者はどのくらいいる?」
兄さんと瑠璃さんの手が挙がる。僕も過去にやったことがあるから手を挙げる。
「え、やったことないの私だけッスか?」
あかりさんが絶望的な表情で辺りを見回した。
「初コラボ...してみたかったッスよ...」
「いや、ブロックラフトのコラボは少し先にする予定だ。経験者の時間には追い付かないかもしれないが十分練習時間はある。だから参加できるよ」
見て分かるようにあかりさんの表情が明るくなる。
「ほんとッスか! 早速帰ったら練習するッスー! は、初コラボ...」
そうだった、あかりさんは今までコラボとかしたことがないって言ってたな。ソロプレイのゲームしかやってなかったのが理由らしいが。
「じゃあ、ステージとかを用意しないといけない。経験者の中から作る人は選びたい...さて、下見が出来るという不平等が生まれるがどうするか...」
そこは仕方ないとは思うんだが...そうだ! 前、PVP用の配布ワールドがあったのを思い出した。確か撮影とかは大丈夫だったと思うし提案してみようか。
「配布ワールドを使ったらいいんじゃない?」
「配布ワールドか...それならやったことがない限り平等になるな。よし、それでいこう。配信では演技ではないリアクションが求められる。演劇関係なら問題ないかもしれないが、やはり素人には演技は難しいからな」
本当にその通りだ。素人がやる演技...皆も文化祭でみたことがあるだろう。劇というやつだ。あの演技は一部を除いて棒読みが多かった印象しかない。そんな素人が演技を極めた人に勝てるわけがないのだ。
「そうだな...コラボは次の土曜日...? いや、それだと7日だな。よし、丁度2週間後、土曜日に開始だ。各自準備をしておいてくれ。恐らくゲーム代は経費で落とせるはず...確認してから追って連絡しよう。以上、解散!」
皆が帰り僕も帰ろうとした時兄さんに呼び止められた。
「真人、告知はいつ行うかについてだが...お前の配信で少しコラボがあることを匂わせてくれないか? 皆は俺がリーダーだと思っている。俺から発表するのも他の人から発表するのも良くない。取り仕切ったりしているが俺はあくまで副リーダー的な立ち位置だ。忘れるなよ?」
いつも兄さんはこの事を強調してくる。
頼りっぱなしは良くないことだとは分かってはいるがどうしても経験がある人に縋ってしまう。
「いつも聞いてるから分かってるよ。耳にタコが出来そうだ」
「分かってるならそれでいい、それで? 今日の配信は何をやるんだ?」
「クジラゲームかブロックラフトをやろうと思ってるよ」
「そうか、ブロックラフトはダウンロード時間長いから早くやるんだぞ!」
そうだった、そうだった。ブロックラフトはアカウント製作もあるし長いんだった。
「...まで...持てばいいが...」
え? 兄さん何か言った?
僕は兄さんの方を振り返る。
「いや、スキンも作らないとだろ?」
兄さんは困ったような笑顔でこう言った。
あ、そうだった。ブロックラフトは実況できるかなぁ...
配信の内容について考えながら僕は帰路に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます