第11話 レーブユニオン公式配信①
9000...12000...15000...
狂ったように同接数が増えていく
: どんな事務者なんだろ
: アキタが出ると聞いて
: アキタはまだですか?
: レーブユニオン初配信と聞いて
: アキタのおまけみたいなもんだろ?
: アキタがいなけりゃこんなに集まらんよ
: 何人出るんだろ
: 初配信見に来ました!
嵐のような勢いでコメントが流れていく。
悪意のあるコメントも少しある。
「大丈夫だ。お前なら出来る。やってこい!」
電話越しに背中を押される。
画面には円卓の画像と共にカウントダウン。
コメントの嵐と同接数に物怖じしてしまう。
でも、覚悟は決めたんだ!
3...2...1...
配信スタート!
「皆さんどうもこんにちゃ...皆さんどうもこんにちは。レーブユニオン0期生の月谷レボンです! 本日はレーブユニオンの紹介...そしてこの後の個人チャンネルでの初配信のスケジュールを紹介させていただきます」
やべっ、噛んだ!
: あっ噛んだ
: 噛んだな
: かわいい(錯乱)
: 声はショタボだもんな...
: かわいい
: アキタじゃないのかよ...
: なら配信時間は少なめかな
: アキタだせや!
: アキタファンは黙っとけ
: は?
: 荒れてるな...
: 0期生?1期生じゃなくて?
: 0期生ってなんだよ
コメント欄荒れてるな...まぁ兄さんも荒れることを予想していたから気にしないようにしよう。
「現在のレーブユニオンは0期生一人、1期生3人で構成されています。0期生は...僕が合同会社レーブユニオンの社長なので0期生になっています。」
: 社長!?
: 4人デビューか
: アキタが社長じゃないの?
: 声的に中学生か高校生だよね?
: 大丈夫か?それ
: いざとなったらアキタが何とかするやろ
: アキタに逆らえるとは思えない
: 面白そうなグループじゃん
: 紹介はよ
少しコメント欄が平和になったな。インパクトのある情報を出すと皆がそれ関連のコメントを書くから平和になるらしい。
「では一人目...っていうか僕なんですけどね...0期生月谷レボン、初配信は3日後の夜9時からです。よろしくお願いします」
自分の情報はさっき出したから簡潔に
「では二人目ですね。太陽のような明るさ! 山内タイヨウさんです!」
配信画面に山内タイヨウのモデルが表示される。
「その名の通り明るい性格で見ているこっちまで笑顔になるような人です。個人でやっていたので初配信ではありませんが、自己紹介配信は2日後の夜9時からです」
: かわいい!
: 陽キャ女子だ!
: アキタ...どこだよ...
: タイヨウ事務所所属になったのか...
: おめでとう!タイヨウ!
: サンサンライズ!
: ええやん
: 元個人か...
コメント欄を見る限り好意的な意見が多い。
自分の話し方にいまいち自信が持てなかったから良かったぁ...
「続いて3人目。南極から日本まで! 南羽ペギさんです!」
配信画面に南羽ペギのモデルが表示される。
「南極出身のペンギン、流れ着いたのはレーブユニオン。何故かゲームが上手いです。初配信は明日の夜9時からです」
: ロリだ
: ロリだ
: 見に行きます
: ...素晴らしいね
: コメント欄ロリコンに侵食されてて草
: ロリコンで何が悪い
: お前ら粛正な
: 神降臨やな
: ビーム打たれそうなの何人もいて笑う
: 南極にゲームあるのか...?
ふぅ...後一人か、でもこれが一番緊張する。
「最後の紹介になります。犬と言えばこのVtuber! 山犬アキタ!」
: アキタきたー!
: やっぱりアキタなんだよなぁ
: そりゃくるわな
: アキタ!アキタ!
: きたー!
: 待ってたぞ~!
アキタの名前が出てきた途端、コメント欄が加速する。
やっぱりアキタの人気は凄まじいな...登録者20万人越えは伊達じゃない。でも少し過激すぎないか?
「登録者20万人越え! 様々な経験と知識を交えたトークが特徴。こちらも個人でやっていたため初配信ではありませんが、自己紹介配信はこの配信が終わり次第、開始します」
: 終われ
: はよ終われ
: 校長先生の話かな?
: ゆっくりと自分のペースで話してええんやで
: 終われとか言ってるやつ人の気持ち考えたことある?
: ...すまん
: これで終わり?
: まだあるの?
アキタの名前が出ただけで若干荒れる...これじゃアキタのグループと言われても仕方ないな...
「最後に少しだけ話そうと思います。レーブユニオンの目的についてですね」
これは初配信すると決めた時から話そうと思っていたことだ。何と思われたっていい。
「レーブユニオン...夢の同盟という意味があります。その名の通りそれぞれ皆、夢があり、目標があります。その内容に関しましては個人配信でいつか明かされることがあると思います。まだ言いたくない人もいるかもしれないので決して無理に聞くようなお控えください。それぞれ夢向かって突き進むのを見ていただけると幸いです。これは合同会社レーブユニオンの社長としての発言でもあります。どうか、よろしくお願いします」
: 分かったよ!
: 夢か...いいな...
: こんな声で頼まれたら断れんよ...
: 自分より年下に言われるんだからね...
: 演者のこと考えてて偉い
: 演者ファーストじゃないとね
: 良い子やぁ
: 理解
: お願いとなると仕方がない
駄目元でやってみたけど案外すんなり受け入れられたようだ。
兄さんにもどう転ぶか分からないと言われていたので不安だったから良かったぁ
「これで配信を終わります。ありがとうございました!」
...ふぅーやっと終わった
「お疲れ、悪い所は...強いて言えば噛んだとこなんだけど、まぁ上手いこと転んだって感じかな。最後のお願いも上手く行った。上々の滑り出しだ」
配信が終わって静かになった事務者の中に電話越しの兄さんの声が鳴り響く。
「初配信、なんで兄さんの家でやらなかったの?」
「終わった後すぐやると言ったからなぁ。それに俺とお前が兄弟であることを今知られるのはよろしくない。コネだと疑われて炎上して終わりだ。徹底的にバレないように...そうだなぁ、一周年迎えるまでは絶対に隠し通そうか」
「そうだね。今のこのタイミングではよろしくないね」
「...もう配信開始の時間だ。続きはまた家に帰ってからで...な? 配信はそっちで見ておいてくれ」
「...分かったよ」
電話が切られた。
まぁ、仕方ないことなんだろうけどなぁ
僕はパソコンで犬山アキタの配信を開いた。
挨拶から始まり自己紹介が行われていく。
リスナーとの掛け合い、発言ひとつひとつに圧倒的な差というのがあるのだと思い知らされた。
いつか兄さんと対等にコラボできるような関係になれるといいなぁ...
そう思いながら僕は兄さんの配信を呆然としながら見ることしか出来なかった。
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