第7話 手続きってさ...複雑だよね...
「さて、皆帰ったな...真人、ここからは事務所のことについての話だ」
二人しかいなくなった事務所に兄さんの言葉が鳴り響く。
「そんなに身構えなくていいぞ。悪いニュースって訳じゃないんだ。いや、お前にとっては悪いニュースかもしれないけど」
二人だけになった時に言ったから悪い知らせかと思ったよ...いや悪いニュースなのかよ。
「真人には会社を作る手続きをして貰いたい。まぁ簡潔にいうと合同会社を作るんだな。」
合同会社か...株式会社とかもあるのになんで合同会社なんだ?
「兄さん、株式会社の方が良く聞くのになんで合同会社? ってやつなの?」
「合同会社というのは株式会社に比べて設立する費用が安い。それに経営の自由度が株式に比べて高いというのがあるな。まぁ株を俺達が持っていれば株式で問題はないんだが...事務手続きが増えるらしい。俺が調べて限りで言うと合同の方が少人数なら楽らしい」
事務作業に特化した人材がいない僕達では合同の方が良いってことか...
「問題は社会的信用が低いことにあるらしいが...俺は少しは知名度もあるし大丈夫だろう。多分」
登録者20万人越えてるから信用はあるっていうことか。
そういえば調べた時、会社を作るには定款というものが必要と見たぞ。
「ということで真人にして貰いたいことは定款作り...ざっくり言うと会社の憲法だ。日本の憲法のようなルール作りということだ。兄さんはホームページ作りやらで動かないと行けない...時間が足りないから任せていいか?」
確かに兄さんは時間がないな...よく分からないけど調べたらなんとかなるだろう!
「分かったよ。兄さん。僕がやっておくよ」
「楽観的な所が少し怖いが...まぁ大丈夫だろう。出資者についてや金関係の定款の内容については、また電話で話そう。」
「え? 兄さん家に帰ってくるじゃないの?」
兄さん自分の家に帰らないなんてなんかあったのかな...
「俺はこれから行く所があるからな。というか俺が家にいない時なんて多かっただろ?」
「まぁそうだけど...」
「というかお前、もうそろそろ父さんと母さんの所に帰れよ。俺の所にいるから心配はしてなかったけど、顔くらい見せにいってやれよ」
父さんと母さんの所かぁ...あれ以降申し訳ないし気まずくて戻ってないんだよなぁ...
「そもそも配信に必要なマイクとかグラボとかどうやって入手したんだ?」
「なんかタンスの奥底で眠ってた」
前、自分の家でもないのに勝手に兄さんの家を探索していた時のことだ...まぁそんなに部屋数もないし、兄さんの部屋にも入っていないけど。
偶然タンスの奥の端の箱に入ってた配信用具を見つけたんだ。
「あれ見つけたのか...性能悪くて買ってすぐ変えたやつなんだよな...」
だからあんなに綺麗だったんだ。綺麗だからラッキーと思って勝手に使ってたよ。
「使わないやつだったし勝手に使ったことは不問にしておいてやろう。次は良いの使わせてやるからな」
不問になった上に次は良いのを使わせてくれるって!? ラッキー!
「お前...露骨に嬉しそうな顔しやがって...まぁいい、もうこんな時間だ。明日も学校あるんだろ? 米も炊いておいたし魚も買ってあるから、それ食べておけ。分かったか?」
「えー肉の気分なんだけどぉ」
「お前居候の身分で何言ってんだ。そういう希望を出すのは稼いでからにするんだな」
もうじき事務所所属になってお金が貰える...つまり毎日肉が食べれるってこと!?
「またろくでもないこと考えてるな...まぁいい、もう帰れ」
「分かった! 兄さん! またいつか~」
「またいつか....?」
__________________________________________
さて学校から帰ってきたし諸々について少し調べてから定款作りしますか...
そういえば今日は先輩が妙におとなしかった。前に先生に怒られたのがそんなに効いたのか...今度先輩に困らされたら先生呼ぼうか。
さて...合同会社を作る手順は以下の通りか
1、定款の作成
↓
2、出資(金銭•現物出資)の履行
↓
3、設立の登記申請
↓
4、成立
あれ、意外に行程少ないな...もっとあるんだと思っていた。これに従うのであれば定款の作成は一番早くやらないと行けないな...
まずは定款には何を書かないといけないのかだな。
ふむふむ...取り敢えず大きく分けて3つ書く必要があるみたいだ。
1、絶対的記載事項
定款への記入が必須になっているものだな。これがないとそもそも定款が無効になってしまうらしい。
2、相対的記載事項
会社の基本的な情報...社内規則等を書く場所だな。単なる社会規則ではなくその中でも大事な規則を書くことによって効力が発生するみたいだ。
3、任意的記載事項
定款に記載することで効力を発揮するといったものではものではないが、ここに書くことによって容易に変えることが出来ないというためにあるみたいだな。例でいうと社員の報酬の規定等があるらしい。
これらを書く必要があるみたいだ。...長くないか? はっきりいって書く項目が多い。しかもこの中で1、2、3に分けて書かないといけない。...お? テンプレが作られているぞ? よしよしこれを参考して書こう。
まずは1の絶対的記載事項だな。
まずは商号...名前だな。
合同会社OOって書かないといけないらしい。
第1条合同会社レーブユニオンっと
次に事業の目的だな
Vの事業ってなんだ...? 配信か...? あ、グッズ販売もあるな。まぁ上記各号に付帯関連する一切の事業を付けておいたら何とかなるって聞いたからなんとかなるだろう。
第2条 当会社は次の事業を営むことを目的とする
1 動画配信
2 グッズ販売
3 上記各号に付帯関連する一切の事業
これでよし!
次に住所だな...これはあの事務所の住所を書けばいいや。
次に社員全部を有限責任にすると書かないといけないのか。
じゃあ有限の反対は無限だから無限責任もあるのか...?なんか強そうだな。調べてみるか...
調べた結果、無限責任全然強くなかった。
無限責任は会社が倒産した時に負債を負うことになるのか。
その一方で、有限責任は自分の出資額以上は会社が倒産しても支払わなくて良いというわけか。
第4条 当社員の社員の全部を有限責任社員とする。
この文を書くことで社員全員が出資額以上に払わなくて済むようになったということだ。
さて、次は...出資額について? これは兄さんと電話して決めないとな...
「あ、もしもし兄さん? ちょっと話し合いたいことがあって」
兄さんの電話から電車が走る音が聞こえてくる。
「もうちょっとで帰るからその時話そうか。」
「分かった。夕食作って待ってるね」
「OK、それじゃあ」
いつもこっちに何も言わせないまま切るんだよな。
まぁ良いんだけどさ。
さーて...兄さんが帰ってくるまであと1時間程有るし、昨日食べられなかった肉でも使って夕食作りますか! 今日は豚カツにしよう。そうしよう。
...卵買ってない。
走れ!真人! お前なら兄さんが帰ってくる前に卵を買って豚カツを揚げることが出来る!
頑張るんだ!
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