第0.5話 

「うっ.......。はっ⁉︎」

俺は、目を覚ました。

体感的に、1時間以上は意識を失っていたと思う。

周りを見てみるが、やはりここは地球ではない所のようだ。

「ここは一体どこなんだ…。」

とりあえず、状況整理をしよう。

俺は、冷静に考え始めた。

まず、わかっていることは俺がどこか地球ではない所にいるという事。そして、なにか得体の知らない化け物に襲われ撃退したという事実。

付け加えて言うなら、撃退した後、意識を失った。ここで俺はあることに気が付いた。

「そういえば、俺左肩をケガしてたよな。今、全然痛みが無い。」

左肩を見てみると、化け物にやられたケガはなく、肩は全く何ともなってなかった。

まるで、最初からケガしてなかったかのように。

幻覚でも見たのかと疑うほどに。

だが、俺は確信をもっている。あの出来事は幻覚ではないと。

考えれる可能性は3つ。

俺を治療してくれた人がいるという可能性、この世界では傷は自然に治るという可能性、そしてそれ以外の可能性の3つ。

一番可能性が高いのは、誰かが俺を治療してくれただろう。なぜなら、俺は一時間以上意識を失っていたのに化け物どもに襲われずに生きているからである。

「これからどうしようか。まあ、なんとかなるか…。」

そう思っていた時期もあったな…。

あれから何日たったのだろうか?3日?5日?一週間かもしれない。

もう時間の感覚すら無くなってきた。



/


多分1ヶ月は、経ったと思う。

この世界の事について分かってきた事がある。

まずこの世界、正確にはこの場所には人間はいないらしい。俺がこの場所に来てから1人も人間を見たことがない。次に、化け物だがここにいる化け物は、緑色の奴しかいないらしい。俺はそいつを倒しそいつの肉を喰らい生きている。味はまあ美味いほうだ。

そうそう、こいつの肉を喰らった時に何か体に変化が起きた。

急激に力が漲った。あと何か目に見えない力が全身を包んでいるような感覚に陥った。この力をオーラと名付けた。

このオーラを腕や足に集中する事でそこの部位の攻撃力が増すことがわかった。

だが、元の生活に帰る方法は一向に分からない。



1年は経ったと思う。

どうやら緑色の化け物は食べれば食べるほどオーラが上がり尚且つ力も強くなるらしい。俺の体は以前とは比べ物にならないくらいゴツくなった。

力がなかった俺にはこの力は嬉しい。

だが帰る方法は分からない。



10年は経ったと思う。

どうやら緑色の化け物は倒しても一定時間経過すればまた繁殖するようだ。つまりこいつらを全滅するのは不可能ということだ。だが全滅できないと言うことは無限に強くなれるということでもある。

まあこの力を使う相手がこの化け物しかいないのは悲しい事だが。

帰る方法は何一つ分からない。



20年は経ったと思う。

どうやら俺はこの場所からは抜け出せないらしい。

この場所から離れようとしたのだが、どうやら一定の距離離れると元の場所に戻されてしまうらしい。

帰る方法はわからない。



50年は経ったと思う。

老化というものを感じるようになってきた。体力が以前より落ちた。

もう帰る気力もない。



80年は経ったと思う。

完全に老人になったはずだ。

鏡がないので自分の顔を見ることができないが老いぼれているだろう。

もう帰ることすら考えられない。


100年は経ったはずだ。

もう息すらし辛い。

死期が近いのだろう。

結局元の世界には帰ることが出来なかった。

俺は静かに息を引き取った。


最後の最後まで思っていたことが一つある。


もし俺が元の世界に戻ったならこの力であの時虐めていた奴らを殺したのに。


それだけが唯一心残りだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る