帰還したので復讐を始めます。

@akano_0852

第0話 

俺は無力だった。幼いころに母を亡くし、父は俺が生まれる前に母と離婚をし、俺はずっと一人だった。俺には居場所がなかった。それは学校でも同じだった。俺には友達が一人もいなかった。俺はいじめられていた。両親がいない事を馬鹿にされたりもした。俺にはそれが溜まらなく我慢出来なかった。だから、両親を侮辱したそいつを殴ってしまった。今思えばほおっておけばよかったと思う。その後、先生に呼び出され散々叱られた。俺は、先生に事の経緯を説明したが、聞いてはくれなっかった。その時言われた言葉を今でも覚えている。「これだから親のいない子供は」と。その時、感じた。俺には味方になってくれる人間は一人もいないと。またそれと同時に、親がいない子供は何をしても許されないのかと。親がいる子供と親がいない子供には、こんなにも大きな壁があるのかと。生きていくことが嫌になった。命を絶とうとしたこともあった。しかし、いざ死のうと思うとした時、俺はビビッてためらってしまった。この世界で生きていくのが嫌なはずなのに、それすら出来ないなんて…俺は、無力だ…。

そんなある時、俺はある真理に気が付いた。

どこの学校、どんな学校にも共通することだと思うが、いじめとは常に学校内で存在する。そして、いじめている奴の大半がいう決まりきった常套句がある。それは、「いじめているつもりはなかった。」だ。きっといじめている奴は、被害者になってみないとそいつらの気持ちは一生わからないだろう。そしてもうひとつ学校という場では、生徒は二種類の人間に分けられる。『陽キャ』と『陰キャ』だ。教室内では、陽キャがすべての権力を持っていた。陽キャは、陽キャ同士で徒党を組み、陰キャをいじめる。陽キャには特徴があった。それは顔がいいやつ、運動ができるやつ、喋りがうまい奴、そういう連中で構成されているということだ。これが、スクールカーストだ。上位層のやつに、逆らうことは許されない。それが、学校での見えないルールだ。だが、どこの世界にも例外はある。ある日、学校に、転校生がやってきた。転校生は、身長が高く、がっしりした肉体をもっていた。そいつは運動神経抜群だった。その結果かなり、モテた。ある時、上位層のやつが調子に乗っている転校生を懲らしめようと、嫌がらせをした。最初、転校生は嫌がらせを無視していたが、段々いじめはエスカレートしていった。思えば、いじめっこ達は抵抗しないとわかった途端にいじめがひどくなった。まるで獲物をみつけたライオンのように。ある時、今まで無視していた転校生がいじめっこ達に『これ以上嫌がらせをするなら容赦はしない』と、そう言った。だが、嫌がらせは終わらなかった。転校生は、今まで嫌がらせを先生にいう事はしなかった。だからいじめっこ達は、ただの虚勢だと思ったのだろう。だが、それは虚勢なんかじゃなかった。転校生の一言のあと、いじめっこの一人が、嫌がらせをした瞬間、そいつは宙を舞った。その教室にいた誰もが驚き、恐怖した。そしてそいつら認識しただろう狩られるべき存在であるということを。そして、残党は逃げていった。この時、俺はとても気持ちが良かった。次の日からいじめっこ達は転校生に嫌がらせをしなくなった。それどころか逆に、機嫌を取り始めた。本能が言っているのだろう。こいつに逆らえば命はない…と。その時、気が付いた。学校という場では、圧倒的力こそが法なのだと。力があればいじめられることはない。

「力さえあれば…。」

その日から俺はトレーニングを始めた。トレーニング器具を買うお金なんてものはなかった。だから、袋に砂をパンパンにつめて、それをサンドバックに蹴りの練習をしたり、ペットボトルに水を入れ、それをダンベル代わりにし二頭筋を鍛えた。学校では、図書室で格闘技の本を読み漁った。その時も、嫌がらせを受けていたが、いつか来るその時のことを考え耐え抜いた。だが、俺はあることに疑問を抱き始めていた。俺は強くなっているのかっと。俺は不安に駆られた。そしてトレーニング量を増やした。腕が上がらなくなっても気合いであげたり、足が動かなくなるまで蹴りの練習をしたりしていてた。いつもどうりトレーニングしていた時、急に視界がボヤけてきた。俺は気を失った。

(俺は死ぬのか?)

「はっ…。」

俺は目を覚ました。

「ここは…。」

何故だかわからないが、俺はどこかの森の、木のそばにいた。だが、さらに意味の分からないことに体中から力があふれてきた。そしてその力の使い方がわかる。そんな感じがした。まるで、手足のように自由に動かせるような、そんな感覚だった。

これからどうしようかと思っていた時、草の茂みからカサカサと音が聞こえた。

「だ、誰かいるのか?」

しかし、俺の問に答える者はいなかった。段々と何かが近づいてくる音がしていた。

直感した。ここに居てはいけないと。

俺は、身体を動かし、ここから離れようとした。

「ウギィィィィィィィィィ!」

咆哮が聞こえた。声のする方を見た。

「あれは…なんだ…?」

この世の者とは思えない姿をした奴がそこにはいた。しかも一匹ではない。視界に入るだけで五匹はいる。

「に、逃げないと………………、死ぬ!」

確信した。あいつらの目。俺は良く知っている。あれは捕食者の目だ。獲物を徹底的にいたぶろうとし、弱者を蹂躙するあいつらと同じ目だ。

「クソ…!俺は、逃げることしかできないのか!!!」

ふと、脳裏にある光景が浮かんだ。

それは、転校生がいじめっこ達を一撃で倒したあの光景だ。

(なんで今思い出すんだ…。)

いいや、本当はわかっていた。これは憧れだ。圧倒的力で、全ての災いを振り払う。そんな転校生みたいになりたいと!そして

「勇気をもらったんだ!」

逃げることしかできなかった俺に差し込んだ一筋の光。

ここで逃げる訳にはいかない。

思い出せ!トレーニングしたことを。

思い出せ!いじめらていた時の憎しみを。

無力だった自分自身を!

ーーー瞬間

俺は、化け物達へと走り出した。

(後の事は考えるな。この化け物達を倒す。そのことだけを考えろ!)

拳に力をいれろ。

強く拳を握った。

直後、俺の拳に途轍もない力を感じた。

行ける。そう確信した。

「うぉぉぉぉぉぉぉおぉおぉおおぉぉ!!!!!」

雄叫びとともに拳を振りかざした。

「おいおい…。嘘だろ…。」

目の前にいた化け物達は、まだそこにいた。俺の拳は確かに化け物に直撃した。だが、俺はビビッてしまった。化け物に拳が直撃するとき、死という恐怖が頭をよぎった。

「クソ…。」

頭が真っ白になった。

その一瞬のスキが致命的だった。

俺は化け物に襲われた。左腕を嚙まれたのだ。

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

途轍もない痛みだった。今まで味わったことのない痛み。だが、耐えられないほどではなかった。

「いってぇ…。」

この時、自分でも驚くほど頭が真っ白だった。本能的に悟ったのだろう。もう生きてはいられないと。ここで死ぬ運命だと。

ーーーふざけるな!!!!!!

俺が何をしたって言うんだ。ただ生まれて、ただ生きていただけなのに。

弱者は失うことしか許されないのか。幸せを望むことさえできないのか。強者の玩具になるために存在しているとでもいうのか。

ゆるせねぇ…。弱者から奪おうとする奴らがゆるせねぇ。

「いいぜ。どうせここで終わるなら、全てを懸けてやるよ。」

気が付けば、左腕の痛みはなかった。

「地獄の底まで付き合えよ。」

もう迷いはなかった。もう恐怖はなかった。あるのはこいつらをぶっ殺したいという殺意だけだった。

「いくぞ、クソ野郎共。」

さっきと同じように拳に力をいれろ!!!!!

力を感じる。圧倒的力を。あいつらを倒せる力を!!!

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!これでもくらえクソ野郎共!!!!!!!!!」

今度は、最後までびびったりなんかしなかった。

俺の拳はしっかりと化け物達に直撃した。

その刹那。

化け物達はおろか、森の木すら粉々になっていた。

俺は、胸が高鳴った。

だが

急に眩暈がした。

(あぁ。死ぬのか。)

このろくでもない人生を過ごして、良いことなんて一つもなかったけど最後の最後で、満足した。スカッとした。俺にもこんな力があるってわかって良かった。

じゃあな。クソみたいな世界。





































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る