ナイツ・クラウン ~奔放騎士と翠髪の乙女~

紘都果実

プロローグ/Epilogue

 掛け値なしの、栄光だった。


 風が舞う。熱が躍る。


 色彩豊かな紙吹雪が青い空を目掛けて浮遊し、喉が張り裂けんばかりに発せられた民衆の歓声が、その昂ぶり様を知らしめる。


 紛れもない祝福の時だった。誰もが羨望と感嘆の心地で〝騎士〟たちの凱旋を喜び祝う。


 整然と並び立ち、鎧姿の兵士が一糸乱れぬ歩調で行進する。全身に鋼を纏ったその姿の、猛々しくもなんと壮麗なことか。彼らこそ、国が誇りし歴戦の勇士らだ。


 先陣を切るのは、一際見事な甲冑に身を包んだ名立たる戦士たち。


 そして、すべての武人を率いて歩む彼の者こそ、完璧にして理想の〝騎士〟。王に従う剣の中でも、最強の称号を与えられた無缺の英雄である。


 幾千の兵を従えてもなお、その佇まいに鈍るところなど少しもなく。


 なればこそ、彼はすべての〝騎士〟の頂に立つ者なのだ。


 だが英雄はひとりにしてならず。背後に並ぶ戦友たちの存在があってこそ今の自分があり、これからの未来が約束されていることを、彼もまた充分に理解していた。


 一際大きく、民衆が勝鬨をあげる。〝騎士〟たちの活躍によって敵国の脅威は去り、漸く平和の時代が訪れるのだ。


 熱狂、歓喜、満ち足りた使命感。


 それは喩えようもない、彼らにとっての栄光だった。

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