第5話宇宙最強たる所以
余りにも実りのない会議だった。
まるで国を率いるものがするべきでは無い、そんな会話ばかり。
私は溜息をつきながら帰りの馬車に乗る。
……確かに私の能力を使って彼らをコントロールすることは容易い事だ。
しかし、それをしては私の今度こそ平穏に生きることが出来なくなる。
……「怖かった」
ポツリとそう呟いた王様に私は近くにあったバナナ(アルメリアの姿)を手渡す。
「……どこから出したの?これ……」
「懐からです。ご存知ないかもしれませんがニッポンという国のサムライたちは袖の中からありとあらゆるものを出せる力を持っていたそうです」
……「サムライ……そんな種族が君たちの世界にはいたのか……そんなヤバいやつらが攻めてきたらどうしよ……あ、先程は会議で助け舟を出してくれてありがとう!」
私は例には及ばない、そう伝えた。
先程、会議の際に周りの王の睨みが激しかったので牽制の意を込めて殺意をお返ししたのだが、その事だろう。
あくまで私はボディーガードのようなものだから、王が不利を被る時はその火の粉を振り払う役目もあるのだと私は考えている。
……これはかつて優しい王様に仕えていた時の失態から学んだことだ。
懐かしいな……あのときの私はまだ未熟で、何より自分を過信しすぎていた。
王様が王の責務に耐えれずに死を選んだ時、私は彼がなぜ死を選んだのか理解が出来なかった。
今にして思えば、まだあれは私が人の心を理解していなかったせいなのだろう。
──────と、懐かしい思い出に浸っていると、馬車はアルメリア領へと踏み込み始めていた。すると突然草原の方で爆発音が響く。
「?!何事ですか!」
隣にいた騎士団長が扉を開けて周囲を確認する。
「どうやらドワーフとエルフ族の紛争が発生しているようです」
私はそう2人に伝える。
「……不味いな、ドワーフとエルフは長年膠着状態だったはずだが……?王よ、この紛争に我々が介入するのは些か宜しくありません!とりあえず避難を優先しましょう」
騎士団長の判断は非常に正しい。というのもこのアルメリア共和国というのは勿論共和国なのだから様々な国が合わさってできている。いわば共通の平和を志す異なる種族の国。即ち共和国という訳だ。
かつてこのアルメリア領には、
実際はさらにややこしい区分があるのだが、それは割愛する。……今から約千年ほど前にそれらの種族は絶滅の危機に瀕することになる。
互いに戦争をしていたことで損害だけが振り積もっていく。そんな状況に耐えれなくなった人族の当時の王、「カイン」が統治者となりその指示のもとそれぞれが手を取り合って運営していく国を作ることとなった。
──────そうして共和国アルメリアが出来たのだ。
……しかし、年月を重ねる度権力のバランスが乱れ続けた事で今は爆弾のように所々で導火線がばらまかれてる始末である。
……しかも今は先代の王が亡くなったという言ってしまえば権力のバランスをひっくり返す絶好の機会。それぞれの勢力が虎視眈々と機会をうかがっていたはずだ。
「……この件は一旦見なかったことにして……どうしました?」
騎士団長がこちらを見る。私は金色と黒色、青色の折り混ぜられた兜を被る。
それの名は『
と同時に私は外に飛び出す。
『──────脆弱なる世界の連理──』
私の手を中心に魔術式が起動されていく
『天理は開闢し秘密は暴かれる───』
腕に纏った魔術式が世界に展開されていく
『答えは夢幻の彼方──────』
紛争地帯を覆い隠すほどの魔術式、それはまるで伝播する波のように広がっていく
『──
──────瞬間、世界の
天を覆うほどの無数の星々が今正にこの地に堕ちようと肩を鳴らしている。
それ程の圧倒的な死を纏うその術式を見た彼らはどんどん戦意を喪失して行った。
それはある意味当然。至極真っ当な感性の持ち主ならば即座に心が折れるほどの圧倒的な質量。
彼は本当に頭がおかしい。
彼と出会った英雄たちはこぞってそう唱える。
──────そもそもこの術式には星の並びが必要不可欠なのだ。
しかし、ここは異世界。ましてこの世界に元の世界と同じ星など何ひとつとして無いというのに彼はそれを起こして見せた。
彼の持つ力は全てのシステムを無視することにある。どんなヒーローでも怪人でも神でも……基本的に何かしらのシステムがあることでその超越的な力を行使できる。
しかし彼にはそんな設定など意味をなさない。
……それこそ彼が宇宙最強たる所以だ。
世界の
なお当の本人は
「うーん流石にやりすぎたか?いやでもこういう内戦はより恐ろしい存在を作ることで止めることが出来るから良かったのか?」
「って言うか星の並びが違うとは……流石に異世界!魔術式組み直しってこと?!」
──────などと言っていた。
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