第5話 大会の準備は進む
ここは最果村。
あらゆることが起きうる場所。
街の広場に、現在、料理会場が設営されている。
「しかし、最近、江戸から来た工員は使えんのばかりじゃ」
地元出身らしい大工がぼやいている。
「全くじゃ。せっかくツルハシを与えてやっておるというのに、満足に穴も掘れんのじゃからのう」
と話している彼らは「気功ビーム!」とか言いながら、エネルギー派を出して土台を固めているし。
「わしのチョップは伝説のリカ道山とも打ち合えるようなものじゃぞ」
とか言いながら、手刀でスパスパ山林の材木を斬っている。
リカ道山は半世紀以上前の人物だが、最果村のテレビは古いから、今、彼が大人気なのだという。
ただ、仮に試合になったとしたら、リカ道山は打ち合わず避けると思うけど。
ともあれ、会場の設営は順調なようだ。
問題は食料だ。こちらの集まりが悪いと大会がしょぼくなってしまう。
米は問題無さそうだ。最果村は四国とほぼ同じくらいの面積があり、中央盆地(地名は最果村大字中田だ)のあたりが田畑になっているからだ。野菜も問題なく取れる。
スパイスは、東京から持ってこさせられば良いだろう。
問題はエビだ。最果港のエビの質はどれほどのものなのか。
僕達は港まで行ってみることにした。
「エビ? 最近は活きの良いエビが出ているぞ」
「そうなんですか?」
魚介類は新鮮さが命だ。
場所が違っていても、新鮮であれば美味しい。
しかも活きが良いのならば尚更だ。
「おうとも、全長100メートルはあろうというエビがいて、近づく船をかたっぱしからひっくり返しているからな。あいつを捕まえれば問題なしだ」
「……」
ここは最果村。
あらゆるものが生息している場所だ。
全長100メートルもあるという、巨大エビ。
この付近での愛称はエビー太らしい。アルゼンチンから抗議が来るんじゃないだろうか。
「あれがエビー太だ」
と漁師が指さすところには確かに超巨大なエビがいた。いや、エビというよりシャコなんじゃないだろうか? いわゆるモンハナシャコという、ものすごくカラフルなシャコに見える。
「何を言う。あれはエビー太だ」
それは種目ではなく個体名じゃないのかな。
エビー太が何かに反応した。
エサを見つけたようだ。波を巻き上げて移動していく。
これまたとてつもなく巨大なカメのようなものがいた。あれはガ〇ラではないだろうか?
エビー太に気づいたガ〇ラは水中に逃げ込み、更に甲羅の中に引っ込んだ。
しかし、エビー太は構わずダブルパンチだ!
やっぱりシャコじゃないか!
ガ〇ラは完全にKOされたようだが、エビー太は更にもう一発!
超速パンチでキャビテーションも発生したらしい。丸焦げになったガ〇ラを食べ始めた。
確かにエビー太はイキが良い。良すぎると言っていい。
あれを捕まえれば、会場の食材を一匹で賄えそうだ。
ただ、どうやって捕まえるのか、果たして美味しいのかという疑問は残されている。
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