インプットガール/アウトホールイマジナリ

吉野奈津希(えのき)

プロローグ

 名前を茶化されることが嫌いだ。

 九榎悠くえのきはるかってのが僕の名前で小学生の時に名前の響きで遊ばれる。くえのき、から「く」を取ればエノキダケだし、「え」を取ればクエキで苦役のような人生だけが残っているって感じ。

 どうしてそんな風に人を傷つける発想をするのだろう。

 でも、それが想像力だ、と僕は思う。世界の意味を想うこと、無意味しかない現実に対して意味をつけるということ、ただそこに在るものに意味を乗せること。その存在がかけがえのないものだと信じること。

 全ての差異は想像すること、そう信じることから始まる。

 だからこそ、僕は僕の名前が何と言われようと信じない。僕はエノキでもクエキでもなくて、けっして欠けさせることの出来ない〈九榎悠〉という名前こそが僕を指し示す名前で僕という存在だと信じ、想像する。

 だけど、目の前で現実とは思えない信じられない、想像もしてなかった出来事が起きたらどうしたらいいのだろう?

 僕の胸にある孔から、大鎌を取り出す一人の少女。

 彼女との出逢い、そして僕の胸の孔から全ては始まる。この孔、空白に僕はどんな意味を見出すべきなんだろう?

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