異世界に召喚された俺は勇者パーティーから追放される

空野そら

第一章【プロローグ】

「はあ、今日も学校疲れた~、もう昼休み以降なくていいだろ」


 愚痴を零し、トボトボと交差点の上に掛かる歩道橋を歩いていたのは八馬(やま)高等学校三年の成田(なりた) 月路(つきじ)だった。

 すると前から黒色のズボンに、黒色のパーカーとフードを纏った同い年くらいの男が走ってくる。

 そして俺の隣に差し掛かったその刹那——

 明らかに不審な男は俺の体を片腕で押し退け歩道橋の柵にまで突き飛ばす。

 柵にぶつかったときの衝撃と反動で俺の体は宙に浮き、柵を飛び越えてそのまま落下する。


「......は?」


 一瞬の出来事に頭が追いつかず、素っ頓狂な声を零すしてしまう。

 やがて体が地面に接地して、視界が真っ黒に染められる。


(......いやいや、いやいやいやいや......は? 何が起きた!?)

(まず? なんか変な男に突き飛ばされて? そしたら歩道橋から落ちて、何にも見えなくなる......いや理解し難い!)


 何が起きたのかさっぱり分からず、内心とても焦っていた。その焦りに追い打ちをかけるように真っ黒に染まった視界が晴れてどこだか一切分からない光景が広がる。

 そこはさっきまでの歩道橋でも、下の道路でもなく緑に輝く原っぱ、透き通るような青い空。ここはまさに......よく分からない世界異世界みたいだった。

 そんな世界の変わりように俺は思わず声を漏らす。


「キレイ......だけど......急展開すぎるんよ」

「落ちた時の記憶ほぼないんよ......死んだかどうかすらも分からないってどうなのよ......」


 この異世界(?)にはあまり関係がないものの、自分が死んだのか、それとも死んでいなかったのか、そうだとしても突き飛ばされてからここまでの速さが尋常じゃないほど速かったため呆れたような愚痴を吐露する。

 愚痴を吐いたところでやっと頭が徐々に追いついてきたため正常な判断ができるようになってきた。

 正常な判断ができると言ってもまだ少しだけなのだが、俺はとりあえず周りを見渡してどんな世界になっているのか、何かいるのかなど生きていくうえで重要な情報を得ようとする。


「......見渡しても草ばっかしだな~......ん? あれは......」


 見渡したとて緑輝く草しかなく何も情報を得られないのかとがっかりしていると、向けていた視線のずっと奥の方で何かが光っているのが見える。

 その何かが気になり目をよ~く凝らして見てみると......


「う~~~~~ん......あれは......け、ん? ......剣!?」


 目をよく凝らして見た先には何か剣らしきものをもっている二人が飛び回って剣らしきものを交えている様子だった。

 俺は剣を持ち、交えている二人を見て剣を持っていることに驚く。

 恐らく現世と言うべきさっきまでいた世界では、剣なんてアニメや演劇などでしか見たことがないため生で、そして恐らく本物であろう剣を交えていることに恐怖を覚えてしまう。


「うわぁ、あの光ってるやつ絶対火花じゃん、それに手から炎が出る魔法? みたいなやつ使ってる~」


 二人の剣がぶつかり合うことで火花らしきものが散り、その光が俺の目に届く。さらに剣の火花以外に赤色の光が目に届き、その光の正体がよく異世界もので出てくる炎魔法なのではないかと憶測を立てる。

 その剣や魔法らしきものを使っている様子が気になってしょうがなく、俺は『これも情報収集に必要なことだから、決して他意はないから』と謎の決意をして戦っているであろう二人のもとへ向かう。


             ★ ★ ★ ★ ★


 歩みを進めて二人に近づいていくと、徐々に金属同士がぶつかり合う音や謎の大きい重低音が俺の耳に入り、鼓膜を刺激する。

 やがて二人のすぐそこまで辿り着くと、二人の戦いを何故かボーッと見惚れてしまう。

 すると戦っていた二人の片方が俺の存在に気付いたのか戦うのやめて小走り気味に俺の元に向かってくる。


「ちょっと! 危ないよ~こんなところに居たら」

「あ、いや、その......」

「?」


声を掛けられてしまい、まだこの世界のことを理解できていない俺はキョドって変な返しになってしまう。

 さらにもう片方も俺のもとまで走ってきて俺と会話(?)を交わした人物と何か話しているようだった。


「君、大丈夫?」

「あ、あの......」

「?」

「こ、ここは、どこなんですか?」


 最初に話しかけてきた人物が心配しているのか俺に疑問を飛ばすとその人物は何か悔しそうな表情を浮かべる。

 だけどすぐにニコッと笑顔を見せて口を開く。


「そっか、ここはね異世界だよ」

「......は? きゅ、急に......」

「まあ、そうだよね~。まっいいや。え~と、とりあえず......僕らの拠点に行こっか」


 そう言うと手を俺の目の前まで伸ばして捕まるように諭す。俺はそのように意味を汲み取ってその手をがっちり掴む。すると伸ばしてきた人物は小走りになる。

 急に小走りになったため少し大き目な石につまずいてしまうが、何とか体のバランスを保ってその人物の後を続く。


「......お前の名前って——」

「あ~、僕の名前はイツキ・タカミネだよ」

「イツキ......タカミネ......?」


 どこか懐かしさを覚える名前が耳の中に入ってきたが、その懐かしさとやらを覚える原因は分からなかった。

 やがて建物というか、テントというか、何かが沢山建っていてそれらが池らしき場所の近くに集めって建てられていた。

 その建物群の傍らには多くの人々が歩き回っている様子が見える。そんな様子に俺は心の中で不安から来る言葉なのか自分でもよく分からない言葉を吐露する。


(俺......これからどうなるんだ......?)


 と............

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