秒速の錬金術師 ~ どうしても異世界に行きたいご主人様と行かせたくないメイド ~

アカバネ

第1話 どうしても異世界に行きたい

 飛行機が空を飛び、ロケットは地球を越え宇宙へ。


「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という有名な言葉があるが、これだけ科学が発展してもまだ、異世界に行く方法は見つかっていない。


 僕の名前は伊藤明いとうあきら どうしても異世界に行きたい男、22歳だ。


 異世界に行く方法を探る為、沢山の異世界転生作品を読み漁った結果、分かった事がひとつある。

 

 どうやら異世界に行くには、一度死ぬ必要があるらしい。


 ブラック企業の仕事に疲れてからの過労死。誰かを庇い車に轢かれてからの死。この辺が異世界転生の定番になっているようだ。


 そういえば、AURAのヒロインも「帰還」と言いながら学校の屋上からフライハイしようとしていた。


 死ぬ事で異世界に行けるのなら何の問題もない、僕はこの世に何の未練もないからだ。


 しかし自殺するにしても出来るだけ他人に迷惑をかけず、そして楽に死にたい。


 立つ鳥跡を濁さずってやつだ。

 

 しかし今の日本では何故か、自殺志願者の安楽死を認めていない。


 毎年日本の自殺者数は2万人を越えている、この数字からも分かるように、安楽死を認めなくても死にたい奴は勝手に死ぬのだ、電車に飛び込み、屋上から飛び降り、大量に薬を飲み、首を吊り、練炭を焚き、硫化水素を作り、イロトリドリな方法を使い勝手に死ぬ。


 酷い奴になると「死刑になりたい」などという身勝手な理由で、重大事件を犯したりする。

 

 事故や犯罪を減らす上でも、日本は安楽死を認めた方が良いと思うのだが……。


 いや待てよ、安楽死からの異世界転生は可能なのだろうか?そんな、異世界転生作品は今まで読んだ事がない。

 

 同じ死ぬでも、なにかしら意味のある死が、異世界転生へのトリガーになっているような気がする。


 誰かを助ける流れで死亡、それを女神様が見ていて異世界転生させてくれる、このパターンが鉄板のような気がする。

 

 人助けの瞬間を女神様が見てくれているかは、試してみないと分からない。

 

 一発勝負、正真正銘の命懸けってやつだ。


 誰か都合よくピンチの人はいないものか……。

 

  そう考え危機に陥っている人を探し街中を歩き回る、しかし街は平和そのもの、今日は何故かパトカーすら走っていない。

 

  「痛てて」


  履きなれない靴で歩き回ったせいか、さっきからかかとが靴擦れで、めちゃくちゃ痛い。


  「今日は諦めて帰るか……。」

 

 諦めかけたその時、裏路地の方から「助けて~」と叫ぶ少女の声が聞こえた。


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