第23話 また新たな門出

 翌日、出発の準備を整えた僕たちは騎士団を出ることになった。


「見送りありがとうございます、騎士団長」

「正直お前にはまだ教えたいことが山ほどあったんだがな。だが成すべきことがあるのからそれを止める気はない。頑張れよ」

「はい! がんばります!」


 騎士団の皆に見送られて、パールは待ち合わせ場所である町の門に向かって歩く。


 もちろんフクロウの僕も彼女の華奢な肩に止まって同行である。


 町の門に着いたけど、朝早くだからかそこにはまだ誰もいなかった。


「あれ、誰もいないね」

「ちょっと早すぎたかもね。それじゃあ空き時間で素振りをしようか」

「はい、師匠!」

「その呼ばれかたは久しぶりだよ」


 ひたむきに慕うパールに、僕はホホッと軽く笑う。


 時々頑固なときもあるけど、パールは基本的に素直でいい娘だ。


「はあっ! てやっ!」


 そして太刀筋もかなりよくなったのが、素振りだけ見ても分かる。

 パールを鍛えてくださった騎士団長に感謝だね。


「九十八、九十九、……百!」


 パールがちょうど百回素振りを終えたところで、大きなリュックを担いだジーニーさんがやってきた。


「お待たせ~! 荷物をまとめてたら遅くなっちゃったわ」

「あ、ジーニーさんだ~!」


 ジーニーさんの到着に手を振るパール。


「ジーニーさん、すごい荷物だね」

「これでも選び抜いて少なくまとめた方よ、エリオスさん。……ていうかパールちゃんこそそんな軽装で大丈夫なの? それなりに長い旅になるのだけど……」

「それなら大丈夫だよ! エリオスが収納魔法で荷物を全部まとめてくれてるから!」

「それホント!?」


 おっと、収納魔法と聞くなりジーニーさんが僕に顔を寄せてきたよ。


「あ、うん。これでも元勇者だからね、現役の頃に使ってたのを改めて使えるようにしたんだ」

「すごいじゃないエリオスさん! そういうことなら協力してくれるかしら!?」


 そう言ったジーニーさんに連れていかれて、僕は彼女が置いていく予定だったものを含めた荷物全てをアイテムボックスに入れることになった。



 全ての準備が整ったところで、僕たち三人はルースシティーを出発する。


 ちなみに今回はジーニーさんが馬車を駆ってくれている。


「こうして旅をするのも久しぶりだよね~!」

「そうだねパール。それこそ三ヶ月前にルースシティーに向かってた時以来だ」


 陽気に話すパールに、振り向いて微笑んだのはジーニーさん。


「あら、楽しそうね~。これからはお姉さんも混ぜてくれないかしら?」

「もちろんだよジーニーさん! よろしくね!」

「ええ、よろしく頼むわ」


 ジーニーさんと手を繋いだパールは、引き続き陽気に笑いながら馬車に揺られる。


 日が昇りきった頃までしばらく進むと川沿いが見えてきた。


「これで水の心配はないね」

「うん!」


 川を見つけてパールがにんまり笑ったところで、ジーニーさんがこんなことを。


「ここまででちょっと汗かいちゃったわ。ここで水浴びもいいんじゃないかしら?」

「おお! それいいね! エリオス、見張りお願い!」

「あ、うん」


 馬車を快活に降りたパールに言われて僕は、近くの枝に止まって見張りを努めることに。


 ……見張りはいいんだけど、うら若き乙女二人の生着替えまで見届けなきゃなのはいかがなものか。


「わ~! やっぱりジーニーさんのお胸おっきい~!」

「あら、パールちゃんだってその年にしてはある方じゃないかしら? あなたと同じ年頃だった私だともっと小さかったはずよ」

「それホント!?」

「ええ。でも大きいのはあんまりいいことじゃないわよ? だっていつも肩が凝るんだもの」

「そうなんだ……」


 うう、僕がいるのに二人とも赤裸々な話を恥ずかしげもなくしすぎだよ……!


『エリオス様も男ですね』

「それ茶化してるのかい? ジークフリート」


 僕だって好きで見張りをやってるんじゃないのに。

 そして服を脱ぎ捨てた二人は川に足を浸けた。


「ん~! 冷たくて気持ちいい~!」

「やっぱり旅路の水浴びは格別だわ~!」


 ああ、パールとジーニーさんの瑞々しい素肌に川の清水が貼りついてさらに艶を増している。


 そしてパールの真珠色の髪もまた、冷たい水に濡れて煌めいていた。


「ジーニーさん、それ~っ!」

「きゃあっ!? もー、やったわね~!」


 そうかと思えば二人が裸で楽しそうに水遊びまで始める始末。


 ジーニーさんの巨大な胸がダイナミックに弾んでるし、パールの発育途上な胸もきれいな形をしている。


『エリオス様は女性の胸がお好きなのですね』

「そんなんじゃないからね!?」


 ジークフリートの冷やかしで僕がムキになっていた時、突然何かの気配を感じた。


「この気配は! ――みんなに伝えなくちゃ!」


 枝から飛び降りた僕は、絶賛水浴び最中のパールたちに知らせる。


「二人とも、何か近づいてるよ! ……っておお!?」


 女として発育し始めたばかりの身体と、大人としてたわわに熟した女の身体。


 近くで見た二人の裸は、僕にはあまりに刺激が強すぎた。


「え、敵!?」

「一体何が!?」


「そんなことより早く服を着ろ~~!!」

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