NASAとUSAのなんでもあり感
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銀座にある
対応した店員は着物を品よく着こなして、接客も細やかな丁寧さ――ここまでは良い。
通された個室は畳に赤い絨毯が敷かれて、部屋の中央には足が短く幅が広い漆塗りのテーブルと、アンティークの座椅子――ここまでは良い。
やがて運ばれてきた、料理のソレは――。
「あ、これなんか、おいしいんだよ。カリっ、トロッとして口の中にじゅわーとナッツの味が広がって」
上品に箸で【ピー】をつまむ田端に、三浦の全身に鳥肌が立った。「生理的に無理ー」と叫んで逃げないのは、優しさ以前に考えるのをやめているからだ。
悩みから解放された田端は、ハイテンションでテーブルに広げられた料理を堪能し、
可憐な顔をほころばせて、幸せそうに【ピー】をかぶりつき、【ピー】の入った琥珀のグラスに口づける。
この【ピー】料理はとてもおいしいと、彼女の様子で伝わってくるのだが、五感が悲鳴をあげてセルフ規制モードを発動していた。
「私も最初は怖かったけど、広海ちゃんの言葉を思い出して一歩を踏み出したんだよ。本当によかったって感謝しているわ」
ソッカー、ヨカッタネー。
だけど、ゲテモノは勘弁して。
「う、うん」
視神経が壊れそうな心を守るために、おいしそうに湯気をたてている料理にモザイクをかけていく。
固有名詞は【ピー】音に変換されて、次第に嗅覚も薄れてきた。
この状態ならイける気がする。なにが。
「あのね、この店の女将さんが教えてくれたの。地球温暖化の異常気象が原因で、数十年、もしかしたらあと数年後には、まともな野菜も魚も肉も食べられない未来が来るんだって。だから、この虫料理に馴れることは未来につながることだと思うんだ」
なんだか壮大な話をしてきたが、三浦は相槌マシーンになって話の半分も聞いていなかった。
「あぁ。田端さん、よかった。じつは今日、とても生きのいいネタを仕入れることができたんですけど、新しいジャンルにチャレンジしてみませんか?」
えー。
固まる三浦をよそに、女将さんらしき女性が入ってきた。
どうやら田端の美味しいもの食べたいコミュ力によって絆されたらしく、良い笑顔で業務用の保冷ボックスを運んでくる。
「え、女将さん。太っ腹っ! なになに?」
「
ワーワーキャーキャーと、人間の言葉を忘れて騒ぐ田端と女将。
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