スライムの恩返し 〜スライム助けたらチート級に可愛いお嫁さんになって毎日愛される幸せな日々〜

なんちゃってアルゴン

スライム助けたらお嫁さんがきた




 「私は、ミュカ様に命を助けていただいたスライムです。恩返しに、私を貴方のお嫁さんにしてください!」

「……へ?」

「おやまあ……どうやら、お迎えがくる前に曽孫の顔が見れそうだねぇ」

「ちょっとお婆ちゃん?!」

「私、ミュカ様の良いお嫁さんになれる様に頑張ります!……一緒に幸せになりましょうね、あなた♡」


 可愛らしくはにかむ目の前の女の子の口から飛び出した衝撃的な言葉に、思わず昨日までの事を走馬灯の様に振り返っていた。




 

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  僕、ミュカ・ウンディルムは、物心ついた時から本や物語が大好きだった。

 その中でも特に生き物を助けて、その後恩返しされる様なお話が一番のお気に入りだった。

 鳥を助けたり、猫を助けたり、狸を助けたり、狐を助けたり、虫を助けたり……とにかく、生き物を助けた後で主人公がその生き物に助けられて、幸せになるお話が大好きだったんだ。

 

 小さな頃から僕がねだる物と言えば、他の玩具や遊び道具ではなく、お気に入りのジャンルの本とちょっとのお菓子くらい。

 それを一緒に暮らすお婆ちゃんと食べながら、お婆ちゃんの膝の上で本を読んでもらう時間が、何よりお気に入りで大好きだった。

 そんな毎日が、何より幸せだった。


 時が経って大きくなっても、そこは大きく変わらない。

 強いて言うなら、本を読む場所がお婆ちゃんの膝の上から、自分の部屋の勉強机の椅子に変わったくらいだ。

 

 僕の一日は特に変わらない。

 毎日決まった時間に起きて、学校に行って、家に帰ってきて、本を読んで寝る。

 大まかに、ざっくり説明すると大体こんな感じだ。


 でも、そんな当たり前だった毎日が、たった一匹のスライムに変えられるなんて、想像すらしていなかったんだ。



 

 

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 ある日、僕が下校時に通る帰り道を歩いていると、道から少し入った所にある竹藪に、一部が光る不思議な竹を見つけた。

 気になって竹藪に入って近寄って見ると何と、光る竹……の根元近くに、深く大きめの穴が空いていた。

 誰が掘ったんだろうと何となく穴を覗き込んで見ると、なんと中には一匹のスライムが入ってしまっていた。


 確か、学校の教科書や魔物図鑑なんかには、スライムの様な半液体の魔物は、水分の不足や身体にあるコアが傷付いてしまうと弱ってしまい、最悪死んでしまうと書いてあった気がする。


「おーい!そこの君!大丈夫ー?」


 声を掛けるとフル……フル……と少しだけ身体を動かしてくれているからまだ生きているみたいだけど、かなり弱っている様に見える。

 カバンの中の水筒に少しだけ入っていた水を穴の上からスライムに全部掛けてあげると、ちょっとだけ元気が出たのかフルフルフルっと身体を揺らしてくれた。

 そして、僕を見上げるとジーッと見つめてくる。

 ……目がどこか分かりにくいけど。

 

 さすがにこのまま放って置く様な事はしたくないから、何とかこの穴から助けて上げたい。

 けど、スライムがいるこの穴は思ったよりもそれなりに深くて、今の僕には有効な救助の為の手段がなかった。


「……ちょっとだけ待ってて!できるだけ早く戻ってくるから!それまで頑張って!」


 そう言って僕は穴の近くに学校用のカバンを放り投げて、全速力で家へと走って帰った。

 汗だくで帰ってきた僕に驚くお婆ちゃんに事情を説明すると、お婆ちゃんはスライムを穴から引き上げる為のロープとバケツを貸してくれた。

 そしてまた、竹藪の穴まで汗だくになりながら走って戻った。

 

 穴の近くに着いたらロープの片方をバケツの持ち手に繋いで、もう片方を近くの竹に結び付ける。

 そうして準備ができたらバケツをゆっくり降ろしていき、穴の底のスライムがバケツに入ったのを確認できたら、今度はゆっくりと引き上げた。

 

 救出成功だ……!

 

 バケツを近くの地面に下ろしてから、ゆっくりバケツからスライムを抱き上げると、身体を揺らしてご機嫌な様子だ。


「もう穴に落ちない様に気をつけてね?」

「ぷるるるるー♪」


 なんだかご機嫌な様子のスライムに触れたのが嬉しくて、思いきって頬擦りしてみるとプルプルもちもちで、クセになってしまいそうな触り心地だった。


「ぷ、ぷるるるー♪」

「くすぐったくないかい?君の触り心地は、世界一だね!」

「ぷ、ぷるっ?!」


 家に戻った時に新しく持ってきた水筒の水を腕の中のスライムに与えながら、プルプルもちもちの身体を堪能して幸せな時間を過ごしていると、あっという間に日が暮れてしまった。

 急いで帰らないと、お婆ちゃんを心配させてしまう。

 手早くカバンや水筒・バケツにロープを持つと、最後にスライムに別れの挨拶をする。


「僕はミュカ。今日はいっぱい触らせてくれてありがとうね。あと、もう穴に落ちない様に気をつけて!それじゃあ!」


 そう言って僕は走り出した。

 野生動物と同じ様に、変に懐かれてしまっても後で困ってしまうし、お婆ちゃんの晩ごはんの時間が迫っていたからだ。


「元気でねー!」

「ぷ、ぷぷるるるー!」



 

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 何とか晩ごはんの時間に間に合った僕はお婆ちゃんと一緒に食事をして、その後にお風呂に入る。

 今日は色々あったからと念入りに身体を洗ってからお風呂からでると、今度は学校の宿題に取り掛かる。

 

 そして、宿題も片付け終わってのんびりしていたところ、コンコンと玄関をノックする音が響いた。

 応対に行ったのはお婆ちゃんだ。

 防犯上、すぐに玄関は開けずに対応している。


「はぁーい。どちらさんですかー?」

「……夜分遅くに申し訳ありません。私、ミュカさんにご用があって伺った者です。ミュカさんはご在宅でしょうか?」


 お婆ちゃんが僕に目線で聞いてくるので、首を横に振る。

 あいにくと、今日は誰とも約束していない筈だ。

 きっと、何かの勧誘とかそんなのだろう。

 ウチでは基本的に、玄関口で断る様にしている。


「あらー、そーですかー。でも、ミュカは今ちょっと手が離せないので……用があるなら私の方から伝えておきますよー」

「そ、そうですか……それなら仕方ありませんね……」




 

「私、本日ミュカさんに助けていただいたスライムです。恩返しに、ミュカさんのお嫁さんになりにきました」



 


 余談だが、光ってた竹の方からは赤ん坊が出てきたそうだ。即、役所に届けられたそうだ。

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