第8話 実技試験
「え、error……!? 15年前にF級だった人がS級以上のステータス持ち!?」
「まぁそうだろうね……実際に戦いを見た方から言わせてみれば、当たり前としか言いようがないね」
受付人が驚愕に声を震わせ、洋介も若干乾いた笑みを浮かべる。
他の『要塞』メンバーである咲良、綾人、心は何処か納得そうに首を縦に振っていた。
「まぁ……だろうな、って感じだな」
「そ、そうですね……B級巨神獣をワンパンでしたし……」
「しれっと空中に空いてたしね」
確かに、空中に浮くには結構技術と魔力が必要なので、ステータスの高い人以外は出来ない芸当かもしれないな。
「それで……次は巨神獣との戦闘だったか? やるなら早くしよう」
正直な所「アレほど俺のことを聞かされていたのにそこまで驚くことか?」と、若干思わないこともない。
しかし、わざわざ指摘するのも時間の無駄だし、驚かれてもしょうがないことではあると理解しているので、特に何も言わない。
特にステータスの話に興味を示さない俺に、受付の男性は恐る恐ると言った様子で尋ねてきた。
「……一応訊いてみますが、レベルはどのくらいですか?」
受付人が恐る恐ると言った感じで訊いて来るが……どうしようか。
一般的には目立ちたがりや人気な覚醒者以外は自分のレベルを公表しないんだよな。
それはきっと15年だった今でも変わらないはずだ。
まぁだが、俺は———
「———レベルは999,999だ」
特に隠すこともないので、普通に言うことにした。
更に、このことが噂になってくれて、琴葉の耳に入ってくれれば尚良い。
「はい? ふざけていますか? 答えるならもう少しちゃんと答えてください。嫌なら嫌でいいので」
受付の男性が、聞いて損した、とでも思ってそうな顔と口調でそう吐き捨てる。
今度ばかりは『要塞』メンバーも苦笑いをしており、あまり信じていない模様。
別に嘘を付いている訳では無いが、まぁ信じて貰えないのは重々承知のことなので特に気にしない。
「まぁ俺のレベルはいいから、取り敢えず早く巨神獣と戦わせてくれ」
「……そうですね。では此方へ来てください」
受付の男性は何かを言おうとしてグッと飲み込み、俺を案内するため立ち上がった。
俺は男性の後を追おうとすると、「神羅くん」と洋介の声が聞こえて、振り返る。
「……? どうしたんだ?」
「頑張ってね神羅くん。俺も見てるから」
「ああ、ありがとう」
俺は洋介の応援に感謝を述べてから、受付の男性に連れられて、ラウンジの様な所の奥にある『訓練場』と書いてある部屋に入る。
中は何も無い四角形の部屋で、どう考えても100メートル級どころか数十メートル級の巨神獣すら入りそうにない。
俺が何故こんな狭い所で……と疑問に思っていると、すぐに部屋全体に響く様に先程の男性の声が聞こえた。
『神羅様、聞こえていますか?』
「ああ、ちゃんと聞こえているぞ」
『それは良かったです。取り敢えず……先程レベルが分からなかったので、A級ではなく、B級から始めさせてください』
「別に構わないぞ」
俺がそう言うと———突然自分が小さくなったかの様に空間が拡張し、目の前に体長100メートル級の狼型巨神獣が現れる。
しかし、俺は、巨神獣よりこの空間の方が気になってしまった。
「グルルルル……」
「……これはどう言う原理だ? 俺が小さくなったのか? それともこの空間が広くなったのか?」
そこで———久しぶりに自分が疑問を感じていることに気付く。
あの空間では初めの方は疑問ばかりだったが、それも数千年程で解決したので、それ以来疑問なんて碌に感じていなかった。
何が言いたいかと言うと———この久しぶりの感情に少し気分が高揚していた。
「ははっ……楽しみだな」
『———それでは開始してください』
「グルァア!!」
受付の男性の開始の合図と共に———巨神獣が牙を突き立てて、前足を振り上げながら俺に向かって飛び掛かってくる。
その速度は優にスポーツカーの最高速度を突破しており、さながら弾丸の様に俺に突撃していた。
一般人どころか、そこらの覚醒者でも避けれる者は少ないだろう。
しかし、この程度の速度ならば、俺には止まって見える。
巨神獣が俺に接近すると同時に、一瞬だけ速度を一気に速めて背後に回ると、無防備な背中へ拳を振り抜いた。
破裂音が部屋全体に轟いて響き渡り、全身の3分の1を吹き飛ばされた巨神獣は体の制御を失い、そのまま俺とは反対側の壁に激突。
その後で灰のように消えていった。
「まぁこんなものか。次行こう」
『な、な、そ、そんな馬鹿な……!?』
驚き過ぎて受付人が敬語を忘れている。
まぁB級を瞬殺なんてS級位でないと出来ないからな。
一介の受付が驚かない方が逆におかしいくらいだ。
「次行こう。早く」
『あ、は、はいっ! 次はA級行きますっ!』
その言葉と同時に、今度は熊型の巨神獣が俺の前に現れるが……この15年間で発見されたのか、この種類は見た事がない。
熊型ならば大抵パワー系だと思うが……。
「グォオオオオッッ!!」
「!?」
俺は突進を予測していたが、見た目とは裏腹に口からビームを吐き出した。
流石A級なだけあって、ビームの威力、速度、範囲共に悪くない。
「まぁそれだけなんだが」
「グオッ!?」
俺は、まるで羽虫を払うが如く、ビームを弾き返す。
見た感じ炎属性だと思うが、俺の防御力だとこの程度の温度は温い。
本当は此処で先程の様に背後に回って殺せば良いのだが、試験として戦っているので、計測が出来るまでもう少し遊ぼうと思う。
「よし、少し俺と遊ぼう熊さん」
「グォオオオオッッ!! ガァアアアアアア!!」
俺が少し笑みを浮かべて言ったのが癪に触ったのか、怒りの咆哮を上げて、今度は前足を振るって、風の刃で攻撃して来た。
「こんなことも出来るんだな、お前。意外と強いじゃないか」
そう言いながらも、魔力の纏った拳で破壊するか、避けて全て対処するが。
確かにコレ程の強さであれば、A級と言われるのも納得だ。
先程の狼と違って、この熊は近接に優れているのは言わずもがな、遠距離にも優れているため、パーティーで狩ろうとしても狩りにくいだろう。
そもそも巨神獣自体が人が斃せる様な輩ではないのだが。
しかしそろそろ終わらせてもいいだろうか?
既に何回もビームや爪圧は防いでいるし、近接は力比べ(巨神獣は両手、俺は片手&異能なし)もしたので、そろそろ計測が終わっている頃だと思うのだが。
「もう倒してもいいのか?」
『えっ、今すぐに倒せるのですか?』
「ああ」
俺は一瞬で熊の懐に入ると、鳩尾狙って強烈なアッパーをお見舞い。
何も篭っていないただのパンチだが、熊の100メートル越えの体の中心に何十メートルもの穴が開き、声も上げる間も無く地に沈む。
そして直ぐに灰となって消えていった。
何もなくなった空間で、何処にカメラがあるのか不明だが、取り敢えず今の状況を見ているであろう受付の男性に声を掛ける。
「どうだった? 計測出来たか?」
『は、はいっ! 少々お待ちくださいっ!』
そう言う男性の言葉は———先程の様な俺の実力を疑う様な声色ではなかった。
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