最弱覚醒者は幾万年の時を経て最強となり、現代に帰還する
あおぞら@書籍9月3日発売
第1章 最弱覚醒者の帰還
第1話 最弱覚醒者の逆襲の始まり
「…………な、何だよこれ……嘘だろ……」
俺―――
「ど、どうしてこんな所に、
俺の手元には覚醒者の必需品であり、『error』と表示された、SSS級まで測れるランク測定器がある。
そして目の前の海には、数千メートル級の超巨大な鯨型の巨神獣が浮かんでおり、ジッと此方を見ていた。
———巨神獣。
30年前に突如海底から現れた化け物。
姿形は地球の生物に似ているが……逆にそれ以外は既存の生物とは大きく違った。
デカいだけでなく、それぞれの個体が御伽話に出てくる様な特殊能力を持っている。
巨神獣の脅威は世界中を脅かす程で、コイツらのせいで沢山の人が死に、今でも人が存在しない土地が存在する程だ。
しかし世界が巨神獣と対抗する様に、一部の人間に《異能力》と呼ばれる力と『ステータス』と呼ばれる自身の身体パラメータを表示した半透明のボードを手に入れた『覚醒者』と呼ばれる者達が現れた。
現在では全人類のほぼ全てが覚醒者になっている。
かく言う俺も一応覚醒者だが、よく分からない異能力とステータスも———
—————————————
斎藤神羅
【年齢】18歳
【Lv】5
【職業】なし
【体力】6
【魔力】6
【攻撃】6
【防御】6
【敏捷】6
【??異能力】
《???》《???》
————————————
人類最弱と断言出来る程に弱い。
そもそも覚醒者なのに職業もなければ異能すらも使えないのだ。
職業はその人が特化したステータスに比例して与えられる力で、職業があると無いとでは天と地の差が生まれる。
しかし、職業も異能力も持たず、ステータスも塵の俺が———巨神獣の中でも最強と呼ばれるEX級巨神獣とどう戦えと言うのだろう。
「い、いや……もしかしたら俺が弱すぎて気にしないかもしれない……」
人間が外で埃が舞っていても大して気にしない様に。
今なら逃げれるのではと言う考えが俺の頭に生まれた。
しかし———現実は無情だった。
突如鯨型の巨神獣が目をカッと見開く。
そして巨神獣の体を白い輝きが包み込むと———
「%°3#¥≠4+$>#°1%3°##3ッッ!!」
大きな口を開け、文字では表せない様な不快で奇妙で不気味な咆哮を上げた。
その瞬間に発生した衝撃波は、辺りを無作為に破壊し尽くし、その後には俺も含めた全ての物が吸い込まれる。
周りには何か掴むものはなく、抵抗することすら出来ず吸い込まれていく。
「く、くそッ———まだ俺は此処で死ぬわけには———」
俺は最後に、幼稚園からの幼馴染で高校を卒業する時に告白しようとしていた人———水野琴葉の顔を思い浮かべて———意識が暗転した。
「———ッ……ん…………ぐっ……こ、此処は……?」
俺は一体どれ程の時間が経ったか不明だが、全く知らない場所で意識を取り戻した。
一先ず痛む体を無理やり奮い立たせると、朦朧とした意識のまま辺りに視線を巡らせる。
そこには先程吸い込んだであろう大量の白い砂に海に落ちていたはずのゴミが散乱していた。
そして上を見上げると、まるで太陽の様に直視することが出来ないほどに明るい。
更にこの空間は生物の体内とは思えない程に広く、万全の状態であっても端に辿り着くことは出来ないだろう。
「…………此処はあの鯨の腹の中なのか……?」
と言うか、最後にある記憶の通りならば、あの鯨の体内だと言うことは間違いない。
しかしそれは俺にとって死よりも絶望的な現実だった。
「……ははっ……このまま何も出来ず飢えて死ぬのか……まぁそれはそれで良いか……。どうせ此処から出られないんだし……出ても俺みたいな雑魚は路傍の石と大差ないんだしな……」
そもそもただの一般人と変わらない俺がEX級の巨神獣の腹の中から脱出なんて出来るわけがない。
俺はそこで思考を停止させ———大人しく死を待つことにした。
1時間、1日、1週間、1ヶ月……どれくらいだったか分からないが、俺は無心で何もしなかったが……死ぬどころか飢えを感じることすらなかった。
それどころか傷が癒えて、ここに来た時よりもピンピンしている始末。
こうなると新たな考えが浮かんでくる。
しかしそれは俺にとっては最も残酷で苦痛に満ちた考えだ。
「……もしかして俺は死ぬことすら出来ないのか……? …………ははっ……俺が一体何したって言うんだ……」
俺は腹の中の地面に大の字で倒れ込む。
今、俺の体を、何も出来ない自分への不甲斐なさと、死ぬことの出来ない絶望感、琴葉にもう一度会いたい……でも会えないと言う哀愁感など、様々な気持ちが渦巻いて混ざり合って俺の心を蝕んでいく。
ふと彼女の顔がチラついた。
ゆるふわボブな茶髪を靡かせ、可愛らしい大きな茶色の瞳を細めて小さな口をにへらと緩ませながらも、向日葵の様に元気で周りを自然と明るくする魅惑の笑顔。
こんな雑魚でどうしようもない俺を見捨てなかった唯一の人。
そして———小さい頃からずっと共に歩んできて、絶えず俺の心を奪った愛しい人。
「あぁ……せめて琴葉にはさよならくらい言いたかったなぁ……くそ……ッ」
俺はやりきれない思いを、八つ当たりの様に地面にぶつけると———
《レベルが上がりました》
突如俺の目の前に久し振りのレベルアップを告げる表示が現れた。
「……っ、レベルが上がった……?」
俺は急いで自身のステータスを確認する。
—————————————
斎藤神羅
【年齢】18歳
【Lv】6
【職業】なし
【体力】7
【魔力】7
【攻撃】7
【防御】7
【敏捷】7
【??異能力】
《???》《???》
————————————
確かにLv.5→6になっており、ステータスも全て『1』だけだが上昇している。
その瞬間———絶望に包まれた俺の気持ちが一気に晴れ渡る。
俺はガバッと痛みも忘れて立ち上がり、地面に向けて全身の力を込めて蹴りを繰り出す。
《レベルが上がりました》
「……はははっ……よし、よし! 希望が見えてきたぞ……! 何故かは知らないが、俺の雑魚ステータスでも経験値が手に入る!」
俺はグッと拳を握り締めて誓った。
「———必ずこのクソッタレな場所から脱出してやる……ッ!!」
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