最終話 それから……

 赤穂浪士の討ち入りが失敗したことを知った、赤穂藩筆頭家老 意地川塁衛門いじがわ るいえもんは逃げ出していた。

 逃げる先は隠れ家の一つ、黒魔術で変装した姿を元に戻すと日本人 意地川塁衛門だった姿から北欧の人間に戻った。


 意地川の正体、ウラミマース=プッチンは失敗の報告の為にボスである、グリゴリー・エフィモヴィチ=ラスプーチンに報告していた。


 隠そうともせずにタメ息つくラスプーチンにビクビクしているプッチン。


《一緒について来い 》 ※《ロシア語》


 ラスプーチンに連れられて洞窟の奥に行く二人。

 扉の前で控えるように言われたプッチンは隙間から覗き見していた。


《申し訳ありません、失敗しました 》


 ラスプーチンが謝る相手はカーテンの向こうにいるせいか、どういう人物か確認出来ない……

 否、カーテンに映る影の形は伝説に伝わる悪……


《失敗したで済むと思うか、ラスプーチン》


《計画は完璧だったのです !》


《完璧な計画が失敗するか ?》


《はっ、今川幕府……吉良上野介の手の者の邪魔がなければ……》


《言い訳は必要ない !》


 影の向こうの人物の怒気にプッチンは凍り付いた。


《言い訳ではありません ! 吉良上野介と云う少年は未知な能力のある予測不可能な因子だったのです》


《無様だな ! 》


《お待ちください、ピョートル大帝 !》


《ピョートル大帝……誰のことだ !?》


《何をおっしゃる、貴方様に決まっているではないですか ! 》


《……ピョートル大帝と云うのは、我の束の間の姿 !》


《なんですと !?

 それでは貴方は、いったい ? 》


さつっ !》


 カーテンの向こうから光線のような物を浴びたラスプーチンは蒸発してしまった。


《また失敗したか……

 しかし、焦る必要は無い……我らに魂を売ろうとする人間がいるかぎり……我らが創ろうとしている世界、闇と暴力、恐怖と絶望が支配する世界。

 もう数百年後には実現するだろう……

 ならば、その時まで眠って待とう

 我らは永い時を待っていたのだからな……

 永い、永い………間を……》


 にっ……逃げなければ、と思ったプッチン……

 しかし、自負の手足が石に成っている。

 否、それは段々全身を石に変えていき……物言わぬ石像に成っていた。









 ◇◇◇◇

【左近side】


 東町奉行所の遠山秀友とおやま ひでともさんが挨拶に来たわ。

 わたしが正式に大目付に成ったからみたい。


「遠山秀友と申します。 粉骨砕身、幕府と民の為に勤めます。

 どうぞ、刑部ぎょうぶとお呼びください」


「 キャアー、金さんよ ! 高橋英樹に似たイケオジだわ !

 もしかしたら、大岡越前もいるかしら !?」


 ── 何時もの意味不明な左近の言動を周りの人々は軽く流していたという…… ──




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