閑話 女神ユリリンの昇神試験

【ユリリンside】


 ── ユリリン、ユリリン、起きない ! ──


 誰じゃ ? 寝不足は美容の敵なのに、妾を起こすのは。


 起き出して周りをキョロキョロと見回すと、お義母様女神ヘラ


「やっと逢えたわね、ユリリン、エリリン 」


 隣を見るとエリリンが居た、女神の時の姿で !

 現在の妾たちは、修行の為に人間日本人に転生していたはず !

 あわてて妾自身を見ると、妾までが邪神の姿に成っていた。


お義母様女神ヘラ。 私たち、死んじゃったの ?」


 悲しい顔をしながらお義母様に聞くエリリン。


 お義母様といっても、女神ヘラ様は本当の母では無い。

 妾とエリリンの本当の母は、始まりと終わりの守護神ヤヌス。

 母であり父である、ちゃらんぽらんな神なのじゃ !

 放置されて育った妾とエリリンを暖かく迎えてくれたのが女神ヘラ様なのじゃ。


 ちゃらんぽらんなヤヌスに代わり母親代わりに成ってくれた女神ヘラ様は、妾とエリリンに

『母と呼んでいい』

 と、言ってくれたのじゃ。



 ── 死んだワケでは無いのよ、エリリン。

 貴女達には、昇神試験を受けてもらおうと思って、コンタクトをとったのよ ──


「「 昇神試験 ? 」」


 ── そう、貴女達は現在は二級女神だから、アテナやエリスみたいに一級女神に昇神してもらおうと思っているの ──


 お義母様女神ヘラの言葉と共に、妾たちの目の前に瑠璃色に輝く卵が現れた。


 ── それは『宇宙の卵』と云うものよ。

 貴女達には、異世界の育成シュミレーションをしてもらいます。

 ランダムガチャで選んだのですが、ユリリンは戦国時代の日本。 エリリンは、フランス革命前のフランスを引き当てたようね。

 それぞれが、別の世界線に成りますから、人々を幸せにしてくださいね ──


 エリリンが泣きそうになっている。

 仕方ないのじゃ、妾の『宇宙の卵』と交換しようとすると、


 バチッ !


 エリリンの『宇宙の卵』に触れなかったのじゃ。


 ── ズルはダメよ、ユリリン。

 それぞれの課題を無事にクリアしたなら合格とします。

 お互いに相談するのも禁止よ、他の神や女神と相談するのは禁止とします。

『宇宙の卵』に関しては秘密にしてください。

 夢の中でしか『宇宙の卵』には干渉出来ないので注意してください。

 詳しくは説明書を見るように。

 それでは、無事に合格することを祈っていますよ ──


 妾たちは嵐お兄ちゃんと違い、真面目に説明書を読んだのじゃ。


 ① 転生者は二人まで。


 ② 干渉はアドバイスは可だけど指示は不可。


 ③ 直接の干渉は不可。


 妾とエリリンは考えたのじゃ。


「ルイ16世、マリー・アントワネット、マクシミリアン・ロベスピエール、迷っちゃうよぉー ! 」


 妾だったら……アドバイスをしてあげれないのがもどかしいのじゃ。


 妾は、すでに決めているのじゃ。

 一人は、今川義元。 もう一人は…………


 過去問題で似たり寄ったりの『宇宙の卵』があったみたいだけど、皆 信長にこだわり過ぎなのじゃ。


 それに、転生者はだと限定していないのがミソなのじゃ。

 暇そうにしている下級女神あたりから選べば、面白そうな展開に……


 クスクス クスクス。

 IT'S SHOWTIME!!イッツ・ショータイム!!



 ◇◆◇◆


 大変なのじゃ、恵利凛……エリリンの昇神試験に問題が起きたのじゃ。

 エリリンの話しだと、ルイ16世とマリー・アントワネットにカップルの人間を転生させたと聞いたのじゃ。

 たまたま事故で亡くなったカップルらしいけど、歴史の知識が少なく、ただルイ16世とマリー・アントワネットが処刑されることだけは知っていたらしいのじゃ。


「『愛は地球を救う』よね。 だから期待したんだけど、革命が起こる前にオーストリアに亡命しちゃったんだよ !

 ただ、アントワネットちゃんは、ランバル后妃やデュ▪バリー夫人と仲良しに成ってたから油断していたんだっ ! 」


 恵利凛の言い訳に頭が痛いのじゃ。

『愛は地球を救う』と云う番組は、まやかしで寄付金を横領したり某アイドル事務所に忖度する為のギミックなのじゃ。


 第一、亡命した後のフランスの皇帝に、ルイ・フィリップ・ジョセフが代わりに皇帝に成り歴史は少しだけ変わったけど、大まかな歴史は変わらないじゃろう。

 女神が直接介入するのは、ルール違反に成るから転生者にアドバイスしか出来ぬのじゃ。

 そして、妾がエリリンにアドバイスをするのも禁止されている。


 そういう妾の方も左近ちゃんが好き放題しているから見通しが出来ぬのじゃ。

 今川義元に歴史オタクを転生させたのは成功したのに、吉良上野介に転生させたのは失敗じゃろうか。


 そんなことを考えながら寝たら夢の世界で、左近ちゃんから通信が有ったのじゃ。


 ◇◇◇


「ねえ、ユリリン。 前から聞こうと思っていたけど……確か、わたし女子高生だったのに、どうして見習い女神に成っていたワケ ?

 記憶が曖昧で、わたしが死んだ原因も知らないし、人って簡単に神様に成れるものなの ?

 もしかしたら、ユリリンのウッカリで死んじゃったの、わたし ? 」


 左近ちゃん、こと見習い女神ウッセイナァーが聞いてきたのじゃ。


「誤解なのじゃ。 妾は何処かの駄女神とは違うのじゃ。

 天空神ゼウス様が覗きをしていた双眼鏡を、それが頭に直撃したのが原因なのじゃ。

 日本の八百万の神々に怒られるから擬装して女神にしてしまったのじゃ。

 名前の由来も左近ちゃんが聞いていた音楽の歌詞から付けたとお義母様女神ヘラから聞いたのじゃ。

 だから、悪いのはゼウス様なのじゃ ! 」


 妾は嘘を言って無い、覗きの対象が娘である女神アテナだと言わないのは、妾の優しさなのじゃ。


「転生特典は ? 」


「無いのじゃ…………しいて言えば『運』なのじゃ 」


「そんなぁ~、ユリリンのイケズ ! 」


 う~ん、エリリンだけじゃなく、妾も昇神試験はダメかも……





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