第69話 蠢く闇《うごめくやみ》
【十兵衛side】
長い船旅から帰ってみれば、左近様に許嫁が出来ていた。
それも二人…………まったく、あの方には驚かされてばかりいるが、一番驚いたのが尾張柳生の如雲斉殿が俺の親父殿の宗矩と酒を酌み交わしていたことだ。
「十兵衛、あの鼻垂れ小僧が一端の漢の面構えに成るとは、儂も歳を取ったものよ !」
「面構えは多少良く見えるかも知れんが、まだまだよ。
尾張柳生と駿府柳生は仲が悪かったはずなのに、何故に意気投合しているのだ。
正成や主水が、からかってくるかと身構えていたが、二人とも微妙な顔をしている。
「顔か、顔なのか !
主水がサメザメと泣いているのを正成が慰めている。
主水や正成を残して控えていた半兵衛から情報を聞き出す為に場所を移動することにした。
◇◇◇
半兵衛から左近様や親父殿の旅の話しを聞いて考えこんでしまった。
大人しく留守番などしないだろうと予想していたのだが堅物の親父殿どころか、如雲斉殿までが左近様の
此方は嵐の船の中で苦労していた頃に、上様を巻き込んでの諸国漫遊の旅だなんて、何を考えているのだろうか……何も考えていないのであろうな。
「それで、浅野内匠頭は大人しく
半兵衛に聞くも顔色が良く無い。
「それが、赤穂藩の藩士たちと親交のある大名に手紙を乱発しています。
内容は『吉良上野介を討て ! 』と云うものばかりです。
元 城代家老の大石内蔵助を見張っておりますが、芸者遊びや釣りや囲碁に
大名への手紙は光矢衆で抑えておりますが、米沢の伊達や小田原の北条などの
報告を受けて呆れ果ててしまう。
「それと、赤穂藩の家老
奴等の狙いは、再び日ノ本を戦乱の世に戻してから魯西亜が攻めて支配することを計画しているとのこと 」
女好きで愚かな浅野内匠頭は、操り人形にするにはもってこいな人物だが、城代家老だった大石内蔵助が居たからこそ歯止めに成っていたのだろう。
すべては、大石内蔵助の行動にかかっている訳か。
まったく、左近様の側に居ると退屈する暇さえ無いわ !
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