第51話 人魚の肉 ②

【左近side】


 草木も眠る丑三つ時に霧風さんが吉良屋敷に駆け込んできた。

 急いでいたようだったので、寝間着のまま対応したんだけど……


「グリゴリー・エフィモヴィチ=ラスプーチンですって ! 」


 ちょっと、どうなっているのよ !

 ユリリン ! 見ているなら、応えなさいな !?


 ── zzz zzz ZZZ zzz zzz ZZZ zzz zzz ZZZ ──


 もうー、駄女神なんだからぁぁー !

 肝心要で役に立たないんだから、後で文句を言ってやるわ !


 確か、ラスプーチンって、かなり後の歴史の人物よね。

 やっぱり、この世界はおかしいわ !


「ところで霧風さんは、よくロシア語を理解したわね ?」


「ハッ、拙者、幼少の頃に魯西亜をろしやに居たそうなので、片言なら理解出来ます。

 グリゴリーは人魚の肉を食したそうですが、そのお陰で不老不死を得たと言っておりました 」


 何処のファンタジーよ !

 普通、転生者のわたしにチートが授かるモノなんじゃないの !

 なんで、ハードモードなのよ !

 責任者、出てきなさいよ !


 ── zzz zzz ZZZ zzz zzz ZZZ zzz zzz ZZZ ──


 寝てるし……

 ふぁぁぁぁ、わたしも眠いわよ !

 寝不足は美容の敵なのに、絶対に許さないからね、ラスプーチン !


「きょうの寝ずの番は誰かしら ?」


 助さん達、三人が現れた。


「じゃあ、助さん、角さん、八兵衛は、後をお願いね。

 霧風さんも傷の手当てをしてから寝るように !

 あす……今日になるけど、駿河の城に報告に行くから、そのつもりでね !」


 明日出来ることは明日にするのが、わたしのポリシーよ !



 ◇◇◇◇◇


 左近が寝所に向かって部屋に入るのを見届けた霧風は不思議そうにしながら、


「才蔵、総司、竜魔。 いつから、助さん、角さん 、八兵衛に名前を変えたのだ ? 」


 霧風が聞くと三人は涙を浮かべながら、


「次の犠牲者…………左近さまのおり…おまもりは、霧風に担当してもらうからな!」


 才蔵の言葉に頷く総司と竜魔。


「それは、かまわないが何か、あったのか ?」


「次の犠牲者は霧風だ。 左近さまのお守りは大変なんだと、身を持って知るがいい 」


 霧風は、ロシア語が理解出きる為に、ずっとラスプーチンを見張っていたから知らなかったのだ。


 才蔵たち三人が、左近や徳松に振り回されていたのを……


 霧風は、訳が理解出来なかったが、

『三人とも疲れているのだろうと』

 深く考えなかったのであった。



 ◇◇◇


 日の出、太陽の光がさし始めて、だんだん空が白くなり始めた頃に、左近と霧風、紫苑しおん遮那しゃなたちが護衛と成り駿河の城に登城した。


 左近と霧風の話しを聞いた 松平伊豆守と柳生但馬守宗矩が頭を抱えたのは、言うまでもなかった。


「半蔵、居るか ?」


 伊豆守が呼ぶと天井裏から服部半蔵が降りてきた。


「話しは聞いておったな。

 ラスプーチンと云うやからたちを殲滅せい !」


「はっ !」


 服部半蔵 率いる伊賀忍者たちが、ロシア帝国の隠れ家に着いた時には、もぬけの殻だったのである。



 ── ラスプーチンの真の狙いとは ? ───


 次回も楽しみに、お待ちください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る