第46話 左近と徳松 ②
【徳松side】
「「「ギャァ、ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ !」」」
下品に笑い続ける浪人たち。
「なんだぁ、お坊ちゃんたち。
人の話しに割り込んで無事に済むと思っているのか ?」
ギャハハハハハハハ !
「恥ずかしいわね !
仮にも武士たる者が、多少の無礼をあげつらって当たり散らすなんて、不愉快だわ !
みっともないわね !
だいたい服が濡れたくらいで、何よ !
どことは言わないけど、小さな男ね !!」
周りの町人たちが、クスクスと笑っている。
フンス、と鼻息が荒い左近だが……
不味いぞ、相手は完全に怒っているぞ !
少しだけ身なりの良い武士が前に出てきた。
「坊主、俺は将軍 綱吉公の側用人
弥太郎が驚いた顔をしている。
偽者が現れるなんて、弥太郎も有名に成ったものだな。
「奇遇だこと、わたしは幕府 大目付見習い
まことに上様の側用人であるなら、なおのこと無作法は控えなさい。
駿河の城下町は経済の要であり、商人も町人も武士も協力して栄えている町です。
武士の理屈だけで計れるものではなくてよ ! 」
左近は懐から
「拾いなさいな !
これで新しい服を買えば良いでしょう !
これで用は済みましたよね ?
さあ、この場から立ち去りなさいな ! 」
「帰れ !」「帰れ !」「帰れや !」「とっとと帰れ !」
町人たちからも『帰れ !』の声が上がる。
「うるさいのぉ~
ずいぶんと武士を
商人、町人だぁ~ ? 知るか !」
逆上した浪人が刀を抜こうとしている。
町人たちは、いち早く距離を取っている。
「まちなさい。 わたしは 吉良上野介義央……
「あの家紋、本物じゃ……
浪人の一人が左近が着ている着物の家紋に気がついた。
「そんなもん、コヤツを斬った後に奪ってしまえば良いわ !」
「死ねぇぇぇー! 」
浪人の刀が振り下ろされる前に才蔵……助さんが間に入って刀を刀で受け止めた。
「我が主に刀を抜くとは許さんぞ !
恥を知れ、下郎 !
吉良上野介義央 配下、才……光矢助三郎である 」
助さんに続いて角さんと八兵衛が追い付くと浪人たちの顔色が変わった。
「俺は将軍 綱吉公の側用人 柳沢吉保だぞ !
無礼は、ソイツらだろうが ! 」
まだ、バレていないと思っているようだな。
弥太郎も、ようやく怒りが湧いてきたようだ。
バタバタと足音がしたと思ったら、奉行所の役人が現れた。
その中の一人が俺たちに気がついて頭を下げたので、あわてて制した。
その役人が上司らしい侍に耳打ちすると、途端に頭を下げようとするので手で制して、『奴らを捕縛するように』目で合図を送る。
偽者の柳沢吉保は最後まで抵抗していたが、弥太郎が耳打ちすると、顔色を真っ青にして黙りこんだ。
やれやれ、左近と一緒だと退屈しないのは良いが、配下の連中の気苦労は気の毒になるな。
後で、
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