異世界忠臣蔵 ～赤穂浪士の吉良さんに転生した件、討ち入りされて殺されたく無いので全力で回避します ～

第42話 魯西亜 ④

　一斉に襲いかかる鴉たちに苦戦する二人。

　どのくらい時間が経ったか、わからない程に執拗（しつよう）に襲ってくる鴉たちに、

「クッ、きりがねえぞ、コイツら ！」

「グッ、……」

　その時、松明の灯りが見えて、

「御使者殿～ ！

　如何（いかが）なされた御使者殿ー ！？」

　駆け付けた泥沼藩の藩士を見て逃げ出す鴉たちに、ホッ とする二人。

　藩士と合流した後に事情を話していた二人は、深夜近くに成ってから用意されていた屋敷に戻ることができたのだった。

　◇◇◇◇◇

【十兵衛side】

　屋敷で待っていた十兵衛に、事のあらましを説明する二人。

　十兵衛は胤舜と共に別行動をしていたのだ。

「 どうやら、敵に誘き出されたようだな。

　おそらく狡魔は我々が来たことを知って、罠を仕掛けたのだろう 」

　俺の推測に納得する二人。

　ちなみに御坊、胤舜殿は先に夕餉（ゆうげ）を済ませ晩酌をして寝てしまっている。

「そうとなったら、ぐずぐずしては おられませんな ！」

「一刻も、早く狡魔を見付け出さなければ ！」

　二人とも悔しかったのだろう。

　主水と正成のやる気は満ちていた。

「一つ、策をろうするか……」

　脳筋ばかり連れて来たのは失敗だったな。

　弥太郎も連れて来たかったが、左近さまのお守（も）り役が居ないと不安だから仕方なく置いてきたのだ。

　── 翌日 泥沼城 ──

　泥沼喜一郎は身体を悪くしているらしく、代わりに若殿の 泥沼新之助と家老の里卯腿緖（さとう ももお）が居た。

「なんと ！ 敵の狙いは修築認可状だと申すか ！？ 」

　里卯腿緖が驚いている。

　泥沼新之助は、事の重大さを理解していないようだ。

「如何（いか）にも。

　敵は持久戦の構えで隙がありません。

　ここは少々の危険を覚悟の上で敵に認可状を餌（エサ）に誘い出すのが良策かと存じます 」

　緊張する里卯腿緖は泥沼新之助に修築認可状の重大さを教えていた。

　話が終わるのを見計らい、

「喜一郎殿が病に伏せる中、若殿に御採決を仰（あお）ぎたい 」

「とは申しても、余（よ）も認可状の存在を知ったばかり。

　腿緖（ももお）、認可状は何処じゃ ？ 」

「はっ、それは……」

「この者どもの申し出を如何（いか）に考えておる ？

　余は、この策は上策と思うが、どうであろう ？」

　俺たちを じっと見詰める里卯腿緖……

「私（わたくし）めも良き策かと……

　ここは、十兵衛殿たちに任せるのが良いかと存じまする 」

「で、あるか。 腿緖（ももお）、そちに任せた 」

「ははぁー 」

　里卯腿緖は俺たちに向き直り、

「お聞きの通りです。

　認可状は、十兵衛殿にお任せしましょう 」

「ご理解、感謝いたす。

　では、御家老、認可状は何処に ？」

「御免（ごめん）」

　若殿に頭を下げた後に、着物を脱ぎだした。

　脱いだ着物の隠し袋から認可状らしき物を取りだし、

「これにござる……」

【 下 】と書いてある認可状らしき物を置いた。

　なるほど、肌身離さず持っていたわけだ。

　これなら狡魔も見付けられるわけがなかったのだな。

「くれぐれも頼みますぞ、十兵衛殿 」

「お預かりいたす 」

　里卯腿緖から認可状を受け取った俺は懐にしまいながら、

「始めるぞ、正成、主水。

　認可状を餌に狡魔を炙（あぶ）り出すぞ ！」