第5話

 今、俺はキングダムの事務所にいます。そしてなぜか


「衝さん、キングダムに所属して配信者になりませんか?」


マリアに勧誘されています。


「いやです」


 なぜ、こういう状況になっているかというとあの日の後、キングダムという事務所が勧誘すべく総動員で俺のことを探していたらしく…。俺がたまたま区役所に行ってるところをマリアに見つかり、ほぼ半強制的にキングダムの事務所に連行となった。

 

 そしてこういう状況になった。


「なんでですか?」


「働きたくないからです」


「配信者と言っても別に働く感覚じゃなくて、ただ戦ったり、迷宮攻略するのをネットで他の人たちに見せるだけですよ?戦うの…嫌いですか?そうだとしたら、無理に誘ってしまってすみません」


「いや、嫌いじゃないです」


「だとしたら、なんでなりたくないのですか?」


「迷宮に入るのが嫌なんです。経験上、環境が悪い場所には行かないって決めているので」


 よし、これでなんとか断れただろう…


「?衝さん、迷宮攻略の配信見たことないですか?」


「見たことないです」


「そうでしたか…迷宮の中はそこまで環境は悪くはないですよ」


 ……は?


「どういうことですか?」


「迷宮内の一部がどういうのか見てみますか?…どうぞ」


 マリアがスマホを操作して俺の方に見せてきた。そしてスマホに映っていたのは綺麗な海と浜辺だった。


 え?こんな感じなの?


「これ…まじっすか?」


「本当ですよ」


 これ、配信者になってもいいんじゃね?綺麗な所で戦って、そして配信やら魔物の死体を売るだけで金が入ってくるってことだろ…。


 働くというより趣味で金が入るみたいだな…。

 

 でもそれだと、配信者じゃなくて普通に攻略者になった方が良いのでは?


「これを見ても配信者になりたくないですか?」


「でもこれ、配信者じゃなくて普通に攻略者の方が良いのでは?」


「…配信者の方がチヤホヤされますよ」


 …なんだと?


「詳しく」


「はぁ…普通の攻略者だと周りに見られることは殆どないので強い魔物を倒したとしても周りには伝わりません。しかし、配信者だとネットで周りに伝わるのでチヤホヤされます。…もう一度聞きます。配信者になりませんか?そして一緒に魔物から一般人を守りませんか?」


「なります」


 …やはりこれだけマリアからの熱い視線を受けながら誘われると断れないな。それにやっぱり人を助けるのはこっちも気持ちよくなれるし…


 …決してチヤホヤされたいとかそういうわけじゃないからな!


「では、こちらにサインをお願いします」


「……はい、書きました」


「…ふふっ…ありがとうございます。…ようこそ、キングダムへ」


 なんか、マリア。ニヤニヤしてるけど…ま、大丈夫か。人を騙すような人じゃないでしょ。


 …あ、そういえばあれの件聞かないと…。


「あの、質問いいですか?」


「はい、なんでしょう?」


「俺、固有魔法ないです」


「…はい?」


「いやだから、固有魔法ないです」


「…えっ!?身体強化の固有魔法じゃなかったんですか!?」


「はい、あの身体能力が素です。なんなら魔力あるかも分からないです」


「…じゃあ、迷宮攻略者の免許も」


「ないですよ」


「………えぇぇぇ!?!?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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次回  衝、迷宮攻略者の免許を取りに行く







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