錆びた身体に命を

大和滝

雨の日の温もり Part1

 この日は近年稀に見る大荒れな天気だった。

 おおよそ40年前くらいから発達した技術によって雨雲をシティには近寄らせないことに成功した。

 しかし、この日の雨雲はとても大きく、常に雲内での摩擦で雷が止まないものだったため、「雨雲進路干渉機器キープレインスアウェイマシン」からの波動では飛ばせなかった。

 街には普段は各々の家庭のアンドロイド達がお使いをしていたり、家事をしていたりするはずなのだが、この日は違った。一般家庭の所持するアンドロイドは安価な為に、防錆加工もされていなく、当然ながら防水ではない。だから当然雨に晒されたアンドロイドは壊れてしまい、ただの鉄屑になってしまう。

 ほら、そこにひとつ、雨に打たれてピクリともしないブロンズの塊が落ちている。


「やあ目が覚めたかい」

 アンドロイドはアンニュイな感じの電子音を鳴らした。

「問題はなさそうだね」

 アンドロイドのカラダはギーッと鳴らしながら動きだした。どことなくぎこちない動きだった。

「やっぱり一回オイルさしただけじゃこんなもんだよね。また後でさそう」

 動く度になる音は聴こえなくなったものの、可動域が明らかに狭い。

「雨に濡れたことによって一度完全に機能は停止したんだ。そして持ち主が持っている行動プログラム搭載のリモコンとの接続が完全に壊れたから、それと取っ替えでこっちの用意したAIをいれてみたんだけど、まだ起きてないのか。まあ自作のAIだから仕方ないか。でも折角運良く手に入ったアンドロイドだし、調整を続けていけばきっと」

 男の名前はハンスリーという。彼は自分のアンドロイドを持っていなかった。

 彼はアンドロイドのような感情のないものは嫌いだった。だから彼は感情のあるアンドロイドをずっと作ろうとしていた。雨に濡れて、錆だらけの一般的なタイプの人型家事代行アンドロイドは彼の求めるものになるのだろうか。

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