ひまわり 2
森 三治郎
第1話 ひまわり 2
「お嬢さん」
私を呼び止める人がいた。
「その、ひまわりきれいですね」
怪しい。頭に大きなひまわりを乗せた女を、マジメな顔をして褒める中年男は怪しい以外の何物でもない。
「素晴らしい。お美しい」
見た目も怪しい。夏なのに、ズボンはいいにしてもマントみたいな物を羽織っている。そしてロン毛だ。その上に麦わら帽子を被っている。
「ありがとう」
掛からわらない方がいい。
行き過ぎようとしたら、男は“バッ!”とマントを
「美しい被写体を、是非撮らせて欲しい」
男はマントの下から、一眼レフを取り出した。
『美しい被写体』に心が動く。
「それは~、お母さまに許可をもらわないと、ご返事いたしかねますわ」
「是非に」
「・・・・はい」
「あっ、お母さま。私の美しい被写体を写真に撮りたいとおっしゃる方がおりますの。よろしいかしら」
『マチ子、どうしたの~。暑さで頭をやられたのかい』
「まあ、ご冗談を。おほほほ」
『何言ってんだい。そんなのに関わっててはいけないよ。早く帰って来なさい』
「分かんない親だな。そんなこと、私の自由だろうが!」
電話を切った。
「おほほほ。よろしくてよ」
「ありがとう。それじゃあそこの公園で」
達也が制服を引っ張った。
「僕も、マチ子さんを撮りたい」
達也はスマホを手にした。達也も美しい被写体に心を動かされている。
私って、何て罪作りなのかしら。
「いいわよ」
男は、津田
そして、公園での撮影会が始まった。
パシャパシャと、ひっきり無しにシャッター音が響く。
「手を上げて」「ブランコに乗って」「横を向いて」「いいね、素敵だ」「木の下に座って」
など、さまざまなポーズが要求された。
津田は寝そべって、下からのアングルで撮影した。達也も仰向けになってスマホを向けている。
これって、いかがわしくないのだろうか。
遠くで“ウ~ウ~”とサイレンの音がした。
「何だろう。火事かな」と思っていると、それがだんだんと近づいてくる。
パトカーが公園で止まると、わらわらと警官が出て来た。
「何事ですか」
「いや、通報がありましてね。頭にひまわりを乗せたイカレタ女と怪しげな男が、子供を巻き込んでいかがわしい行為をしているとの、通報です」
「え~」
ひまわり 2 森 三治郎 @sanjiro
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