第11話 騎士として
十蔵がニロン公爵邸内にて暴れているとサバンたちが危険視していた騎士が姿を現した。
ダッ!
「スラッシュエイト!」
その動きは今までの騎士とは違い速く鋭く十蔵を驚愕させた。
「!?80%!」
ザザザザザン!
十蔵はそれまでの60%から80%に変えて後ろに大きく飛んで対処。そうしなければ一瞬の間に8回斬る騎士のスラッシュエイトには動くことすらできずに斬られていただろうから。
「今のは・・・まさか・・・」
なにかに勘づいた騎士。確証に変えるべく攻め続ける。
「Xスラッシュ!」
Xの字のように剣を振るう騎士。80%に上げたおかげで剣筋が見えるようになり先ほどと違い大きく後ろに飛ぶ必要がなく1、2歩後ろに下がり回避した。
「なるほどよくわかった。君は戦闘は素人なんだね。僕の動きが見えていたり反応できる身体能力は脅威だがそれだけだね。君みたいな子には攻め続ければいい」
ダッ!
またしても駆け出してきた騎士。十蔵は攻撃が出来ないでいた。相手が凄腕の剣士であるためにガムシャラに攻撃した時に伸ばした腕や脚を斬られるイメージが湧き躊躇していた。
「どれだけ身体能力が凄くても!技術も無く!戦う者の心も持ち合わせていない者に!騎士である私は負けない!」
「くっ!?」
十蔵に迫る騎士は十蔵が戦闘の素人と知ると戦闘スタイルを変更した。今まではスピードや直線的な動きで十蔵に仕掛けていたが、フェイントを織り交ぜた曲線的な動きにシフト。
「あ!?え!?」
右に左に曲がりながら時にはジグザグに走りながら十蔵に接近。
至近距離にいる騎士に十蔵はたまらずパンチを繰り出した。
「く!?くそ〜!?」
ブォン!
しかしそれを予想していた騎士は十蔵がパンチを繰り出す瞬間に身体を下げて回避。そのまま身体が伸び切った十蔵の懐まで侵入。
「なっ!?え!?」
「Xスラッシュ!」
ザン!
「がはぁ!?」
身体をXに斬られ吹き飛んだ十蔵。しかし十蔵の身体は神様お手製の最強の肉体。ダメージを負わないと言う事は無いが他の人間よりも頑丈に出来ている。
「なんて頑丈さ・・・君は一体何者なんだ・・・」
騎士は斬ったときの感触が通常とは違ったためにその頑丈さに驚く。さらに十蔵の身体能力の高さ、かと思えば戦闘の技術も心も持っていない素人感。
そして通常ならば死んでいてもおかしくない攻撃を喰らっておきながら、立ち上がれる程度のダメージしか与えられていない頑丈さ。
騎士は想像した。この心技体の体だけしか持ちえない十蔵が心と技の両方を手に入れたとき果たしてどれほどの実力となるのか。そして同時に安堵した。今目の前にいて敵対している十蔵が未完成であることに。
斬られ吹き飛ばされた十蔵は痛みに耐えゆっくりと立ち上がる。
「・・・うっ・・・いてて・・・」
「・・・君は何故そこまでして立ち上がる・・君はこの街では見たことが無い・・・よそ者じゃないのか?・・・」
立ち上がった十蔵はそれまでとは違い覚悟の決まった表情となっていた。
「よそ者ですよ・・・この街も・・・この世界も・・・」
「世界?」
「俺も聞きたい・・・あなたが騎士になった理由は?・・・お金の為ですか?弱き者を痛ぶるためですか?」
その自身を侮辱するような発言をする十蔵の言葉に騎士はキレた。
「ふざけるな!!僕が騎士になったのは!?・・・・・・騎士になったのは・・・・・・」
最初は十蔵の言葉に激高していた騎士。しかし後半になって言葉は小さく弱くなっていった。そして結局最後まで言い終わることもなく無言となった。表情はハッとし次の瞬間には悔しそうな表情となって。
「・・・騎士になったのは・・・なんだよ・・・弱い人を助ける為とかいうなよ・・・あんたが今いる側は弱い人をいたぶる側だ・・・」
一歩一歩とゆっくり近づいていく十蔵。
「しょうがないんだ・・・騎士にとって主人の命令は絶対だ・・・そこに疑問を持つことは許されない・・・主人に疑問を抱く騎士は騎士ではない・・・」
一歩また一歩と近づいていく十蔵。そして十蔵は騎士の間合いに入った。
「俺は分からない・・・それほど苦しいんなら!言う事を聞かなきゃいいだろ!」
騎士は苦しそうな表情をして涙を流していた。しかし目の前にいる騎士は不器用でありそう簡単に人は変わることはできない。
「これが騎士なんだ!騎士はこうあるべきなんだ!今更別の道なんて歩むことが許されるモノか!」
そう言って範囲内にいる十蔵に向かって剣を振りぬいた。
「うるせえ!」
ドン!
それは80%状態から繰り出す衝撃を飛ばす掌底だった。剣の間合いであり近づかれるよりも先に斬れると判断していた騎士はその衝撃波を喰らい吹き飛んだ。
「なっ!?ガハッ!?」
吹き飛ぶ騎士。直前で剣を身体の前で盾としたためにモロに喰らう事を防いだ騎士。
「今から全力でぶん殴る・・・そしてもし生きてたら・・・あんたは騎士の呪縛から解放される・・・」
「何を言って」
十蔵のその言葉に理解が出来ない騎士。しかしそれを無視して十蔵は終わらせる。
「・・・100%・・・」
ドーン!
「!?!?」
その100%状態の十蔵の威圧に騎士はかつてないほどに驚愕していた。
「行くぞ?」
バンッ!!!
その強烈な音と共に一瞬にして懐への侵入を許してしまった騎士。あの騎士をしてまったく視認すら出来なかった。
「100%パンチ!」
ドゴゴーン!!
十蔵の一撃に条件反射的に剣を盾に出来た騎士。しかしその剣が盾になろうとも十蔵の100%の身体能力から繰り出されるパンチの衝撃を受け止めることは出来ずにいくつもの部屋を貫通し気絶した。
こうしてニロン公爵を守っていた最強の騎士は十蔵により敗れた。
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