第10話 暴れる役目
冒険者ギルドにてヒストレア街での現状を聞いた十蔵。
「・・・サバンさん・・・なにか手はないんですか?」
十蔵はサバンにそう尋ねた。するとサバンはジッと十蔵を見て答えた。
「・・・今は国も潜入捜査をしているようだがね・・・中々証拠集めに苦戦しているようだよ・・・」
「・・・そうですか・・・」
その返答に考え込む十蔵。するとサバンがとある方法を話し出した。
「・・・もし・・・屋敷で暴れてくれれば後は国の連中が勝手に仕事をしてくれるだろうねぇ・・・」
その提案にゴールドランク冒険者のジョイが否定する。
「なにをいまさらそんなことを・・・屋敷にあの騎士がいる限り死にに行くようなものだ・・・」
「そうだよ・・・前に私がそれを言ったら真っ先に否定したのはサバンさんじゃん・・・」
ジョイの否定にウリィも乗っかるがサバンはジッと十蔵から視線を話さない。
「・・・分かりました・・・じゃあその暴れる役は俺がやりますよ・・・」
そう言って十蔵は立ち上がり歩き出す。
「なっ!?待て!?たかがゴールドランクがあの騎士に勝てるわけがない!?」
「サバンさん?止めないの?」
「いいんじゃないかい?行きたいやつには行かせてやれば?」
「サバン!?なにを!?」
「じゃあ行ってきます」
そう言って十蔵は部屋から出て公爵邸に向かう。それを止めるために追うジョイとウリィ。部屋には1人残されたサバンがいるのみ。
「フフフ・・・あんなのがゴールドランク?・・・あれがそんな小さい器で収まる球かい・・・」
1人冷や汗を流していたサバンだった。
/////
十蔵は公爵邸に向かっている。それを止めるジョイとついて行っているだけのウリィ。
「お前はあの騎士を見ていないから楽観視しているんだ!?あの騎士に勝つには最低でもダイヤモンドランクほどの実力がいる!?お前には無理だ!?」
「やってみないとわかりませんよ。大丈夫です。いざとなれば逃げますから」
「そういう問題じゃないと言ってるだろ!?いい加減止まれ!?」
腕を掴み十蔵を止めようとするジョイ。
ズザー
しかしジョイの力づくの制止も無視して十蔵は突き進む。
「な!?バカな!?くそっ!?」
ジョイが今度は全力を出し止めようとするがそれでも十蔵の足を止めることは出来ないでいた。
「なんて力なんだ!?こんな事があり得るのか!?」
そこでジョイは初めて十蔵が只者ではないと感じた。
「ねえねえ?十蔵ってさ強いの?」
その様子を見ていたウリィが十蔵にそう質問をする。
「まあ、ある程度は強いよ。ゴールドランクだし」
「ふ~ん・・・じゃあさ?私もついて行っていい?・・・」
「危険だから隠れていたほうがいいよ。それか誰かに守ってもらうとか」
「わかった!ジョイさんに守ってもらう!」
そんなウリィの勝手な言葉なんて聞いていないかのようにジョイは呆然と立ち尽くす。ゴールドランクの実力があり鍛え抜かれた大人が全力を出して止めても歯牙にもかけないそのパワーに驚愕しそして期待した。
「彼ならもしかして・・・そうかサバンは気付いていたのか・・・彼の実力に・・・」
1人納得しているとウリィから呼ばれ正気となり共に公爵邸に乗り込むこととなる。
「やってきました公爵邸。さて、乗り込もうか」
公爵邸の門を守る騎士の目の前でそう口にする十蔵。もちろんその発言は騎士も耳にしている。
「よくも我々の目の前で言えたものだな」
「お前はさっきの怪しい奴!?」
1人の騎士が十蔵を思い出した。
「またやってきたのか!今度こそは逃がさないぞ!」
そうして1人の騎士が十蔵へと駆け出してくる。
「逃げないよ。60%パンチ!」
ドン!
「ぐへぇ!?」
十蔵の攻撃をくらい吹き飛んでいく騎士。そしてそれを呆然とした様子で見ているもう1人の騎士。
「・・・・」
「門・・・開けてほしいんだけどな・・・」
1歩また1歩と残った1人の騎士に近寄る十蔵。騎士は恐怖により職務放棄し門を開けた。
「どうぞどうぞ!お通りください!私はちょっと用事を思い出しましたのでこれで失礼いたします!それでは!」
そう言ってどこかに去って行く騎士。
「逃げたよ?いいの?」
「別に騎士の一人ぐらいいいんじゃないかな?」
「俺たちの最終目的はニロン公爵の逮捕にある。その為には騎士の一人や二人など無視すればいい・・・無視できる騎士はな・・・」
そう話しながら門を通りニロン公爵邸に入った。
「それじゃあ俺は自由に暴れようと思います」
「ああ、その隙に俺は潜伏しているだろう国の者と共に動こうと思う」
「頑張ってね!十蔵!」
そうして分かれた十蔵とウリィ+ジョイ。
「でも・・・暴れるって言っても何をやれば・・・」
十蔵の役割は自身が暴れることで危険視している騎士を引きつけ他を手薄にすること。ならば注意を引きつけられれば何でもいいだろう。
「とりあえず手あたり次第壊していこう」
ドン!バン!ガシャン!パリン!ビリッ!
「ぎゃああ!?」
「ぐわああ!?」
「いやああ!?」
「ごわああ!?」
文字通り手当たり次第に壊しながら歩いていると当然屋敷にいる騎士たちがやってくる。しかしそれらすべてを返り討ちにして進みながら絵画や壺や壁や柱などなどを破壊して進む。
「やめろー!!」
そうして叫んで十蔵の前に登場したのは若い騎士だった。
「僕は騎士としてニロン公爵を狙うお前を排除する!」
それがサバンやジョイが危険視している凄腕の騎士だった。
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