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『おっちゃん、仕事だ。ブツは一五。この前の約束通り無料でやれ』

「一五ぉ?」

『一五だ。詳しい場所は後で伝えるが、池袋だ』

 いわゆる「1人組長」のヤクザである阿倍信夫の主な収入源は、掃除屋ならぬ「葬除そうじ屋」だ。

 要は、事だ。

 しかし……「代りに1度だけ無料ただで仕事をやる」という条件で、自分から金をたかり取っていた不良刑事を「始末」してもらったが……その「一度」が同業の「葬除屋」何人かの助けを借りねばならない程の人数。

 もちろん、無料ただでやらなきゃいけない仕事である以上、手を借りた同業者に払う金は……自分持ち。

「どうするかなぁ……」

 電話を切った後、考え込む。

 もう、潮時か……?

 そんな考えが頭をよぎる。

 もう疲れた……。

 もう潮時か……この先、生きてても……良い事が有るようには思えないし……。

 そう思いながら……阿倍は根城にしている安宿を出た。

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