ショッピングモールの怪

Мさんは夜8時を前に、とあるショッピンモールの駐車場へ来た。


1時間ほどで閉店だが、妻がどうしてもセールでほしいものがあるとギリギリでやってきたのだった。


妻は慌ただしく暗い駐車場をかけていき、モールへ入っていく。

仕事終わりで疲れていたMさんは、運転席の背もたれを倒し、体を預けた。


周囲は暗く、街灯が点々としている。

モールだけがきらびやかに光を放っている。


いつの間にかMさんは眠ってしまっていた。


はっとして目を覚ますと、モールの灯も消え、駐車場の街灯だけがぼんやりと光っていた。


周りに一台も車はいない。


Mさんが体を起こすと、助手席に妻がいた。


妻もMさんと同様にリクライニングを倒し、こちらに背中を向けて寝ている。


「おいおい、からかってるのか」Mさんは笑った「戻ってきたなら言ってくれよ」


そして、いたずらのつもりで肩をなで、首筋に触った。


ちょっとした夫婦のいたずらのつもりが、Mさんは背筋が寒くなった。


妻の首筋は凍ったように冷たかったのだ。


「きみ、大丈夫か?!」Mさんが慌てて、妻の肩を掴んでこちらを向かせた。


振り向いた妻の顔は、全く別人で、やせこけた女性だった。

目は落ちくぼんで暗く、まるで眼球がないようであった。


Mさんは叫び声をあげた。



その瞬間激しく運転席の窓ガラスを叩かれた。


飛び上がって悲鳴を上げるMさん。

運転席の窓ガラスを見ると、憮然とした妻が立っていた。


「開けてよ!何寝ぼけてんの」


Mさんは困惑して助手席を見た。

そこには、誰もいなかった。


Mさんが周囲を見ると、ほかの駐車車両はたくさん残っていたし、モールの電灯も煌々と点いていたそうだ。


Mさんは夢でも見たのだろうかと、不思議な気持ちになったそうだ。


このショッピングモールは西日本にある。


不思議なことに、ここではMさんのように一人残されぼーっとする旦那さんが、怪異に巻き込まれる噂が絶えない。



【おわり】

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