老人ホームのトイレ

とある特養老人ホームにて働く介護士さんの話


その方は割と霊感の強い方で、「見える」こともしばしばあるらしい。


ホームではデイサービス用の大部屋があり、トイレも二つ併設されている。


利用者の中には自分でトイレに行ける者も多いが、中にはトイレを利用する際に介助が必要な利用者もいる。

車いすに乗っている利用者などである。


そこで、トイレの中には小さなベルが置いてあった。


用を足し終えてトイレから立ち上がる際は、そのベルを鳴らして、介護士を呼ぶのである。


ある時、その霊感の強い介護士はベルの音を聞いた。


辺りを見回すと、手が空きそうな者は自分しかいない。

「はーい!すぐ行きますね」

と介護士は大きな声で答え、トイレに近づき、ドアを開けた。


トイレは電気もついておらず真っ暗だった。

誰もいなかったのだ。


ベルは所定の場所に置かれている。


介護士さんは「ああ、またか」と思ったらしい。

時々、そういう事を「幽霊」が巻き起こすらしいのだ。


話を聞いた職員は「聞き間違いでは」と思った。

だが、その霊感の強い介護士と長年働いてきた者たちは疑わない。

「ああ、あの人は霊感があるからね」

と言っていたそうだ。


【おわり】

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