第151話 また忙しい日
そしてまた開店日が来た!
開店前のミーティング。
「今日は支店もあるから多少は楽になるはず!」
「そうか? クローズドオークションを多くの貴族の前でやっていたが」
「そ、それでも多少は分散されるはず!」
窓の外の様子を伺ったカナタが一言、
「やっぱり外はすごい行列だよー」
「冬なのに!」
そう言いつつも俺は寒かろうが暑かろうが行列に並ぶ冬と夏の祭典を思い出した。
オタクのガッツとあまり変わりないな!!
ここではエロ本も売ってはいないのに!
「僕、早速寒いだろうし整理券を配りにでるね」
「そうだな、俺も整理券配りを手伝おう」
「私は二階の雑貨屋で待機するわ」
「私もお手伝いしますー」
「ありがとうユミコさんまで」
「ミラちゃんが色々教えてくれたのでがんばります」
「では私はマスターとカフェの方を、盛り付けくらいならできそうなので」
「ありがとな、ミラ」
「ワフゥ……」
自分はどうすれば? な雰囲気を醸し出すラッキー。
「ラッキーは裏の家の守りを頼むよ」
「ワフ!」
やがて、整理券を配り終え、開店時間が来た。
時間入れ替え制なので時間つぶしにカフェにも人はぞろぞろとやって来る。
「「いらっしゃいませー!」」
気分を上げる為にもカフェと雑貨屋に同じ音楽を流した。
曲を聞いていれば待ち時間も多少は楽しめるかなと思う。
各種ケーキにお弁当、ハンバーガーにフライドポテト、クリームソーダ、プリン、カフェラテ。
いろんなものを提供したが、ふと、前にあったものがないと客に問われた。
「ねえ、今回アイスはないの?」
「冬ですし、アイスはクリームソーダに乗せる分だけにしました。
店内は温かいですけど、お腹を壊すといけないので」
「あらぁ、残念だわ、じゃあクリームソーダを」
「かしこまりました」
「こちらに弁当とハンバーガーセットを」
「はい! たはだいまお持ちします!」
別の席ではジェラルドが対応してくれてる。
「このチョコケーキとプリンを」
「はい、かしこまりました」
「私にはチーズケーキを」
「こちらにシュークリームとカフェラテを」
「はい、少々お待ちください」
俺がオーダーの準備をしていたら、キッチン近くの席の客の会話がさりげに聞こえて来た。
「このレアチーズケーキが濃厚で美味しいのよ!」
「私のチョコケーキも美味しいから」
「この苺と白い生クリームのケーキが見た目も味も最高でしょうに」
あるテーブルでは自分が選んだケーキこそ至高だと議論をかましてた。
「そこまでおっしゃるなら、一口くださる?」
「よくってよ、そちらのも、当然くださるのでしょう?」
「お二方、一口と言わず全部頼めばよろしいのでは?」
「そうしたいけれど、お母様が太るからケーキは一個までにしなさいと……ドレスが入らなくなるからとおっしゃるの」
「まあ〜そ、それはそうですわねぇ」
「仕方がないのですわ」
そうだな、金額の問題ではなく体型維持の問題なんだな。
そして女性は大変だなぁと思いつつ、ほとんどあちらで仕入れて来て魔法のカバンや風呂敷に入れて来た物を取り出し皿に盛りつけてから横流ししてる感じになっている。
特に雑貨屋のやってる初日はいちいち作ってる暇があまりないから。
ややしてキョロキョロしながら男性客が二人、雑貨屋のある二階から降りてきた。
「あの、変わった乗り物が上の雑貨屋になかったのだが」
「俺もあの車輪が二つついた乗り物を探してる」
二人の男性客が聞いてきたのは自転車の事だろう。
「あ、はい、自転車ですね。乗り方の動画をお見せしますので、あちらの壁際のお席にどうぞ、少し練習が必要かと思いますので。ミラ、説明を頼む」
俺は席をカフェ内の指定して店の端に真新しい自転車を二台だけ魔法の風呂敷から出し、タブレットの動画を再生した。
「はい、後は私が説明いたします」
「おや、お人形が喋ってる」
「パペットマスターでもいるのか?」
「そこはお気になさらず、魔法ですよ」
「なるほど魔法か」
「へー」
雑に魔法ですと言って通じる世界だからすごい。
「それで慣れるまで先程のように転倒防止に後ろをどなたかに支えていただき、なるべく平坦な道で練習してくだい。それと人を轢かないように注意して運転してください」
「ふむふむ」
「なるほど、分かった」
「よろしくお願いします」
「それでお代はいくらかね」
「マスター!」
やべ、値段教えてなかった!
「えー、自転車はこちらではまだ流通していないのと、仕入れが難しいので、少々お値段がしまして、金貨四枚となります、あ、数がないのでお一人様1台までです」
俺の説明に驚いた表情の男性客二人。
「お? 思ったより安い」
「なんだ、もっと高いかと思ったらそうでもなかった」
!!
なんだ、もっとふっかけても余裕だったか、流石富裕層の街!!
そしてカフェも雑貨屋も大忙しで夕刻五時となり、雑貨店が先に終了。
カフェは夜六時まで営業。
この世界は暗くなったら酒場やえちち店以外はたいてい閉まる。
宿内の食堂だとわりと遅くまでやってるけど、都会にだけあるレストランもほぼ八時までくらいらしい。
六時半、閉店後のカフェテーブルの上に突っ伏して抜け殻になるミレナとカナタ。
疲れたよな、ごめんな。
どうせあと数日で休みに入るけど。
「今日も皆、お疲れ様!」
「分散したのはいいけどやっぱり売り切れるわよ」
「各支店からももう売り切れたと言われたけど、仕入れに限界があるから仕方なくないか?」
こちらでの通貨はあちらの世界で使えないし。
仕入れにも限界がある。
「やはり国内工場がいるんじゃないかなぁ」
「ティッシュ工場とレースと下着を作る工場は欲しいな」
「まずミシン複数と機械もいるよね」
「やはり伯爵様に相談だ」
俺は伯爵様に手紙を書いた。
夜とはいえ、ぴーちゃんは神秘の鳥なので夜でも飛べる。
するとすぐに錬金術師とドワーフの職人に声をかけてミシンの解析と複製、そしてティッシュ工場を作る事がトントン拍子に決まった。
資金や場所は王侯貴族が用意してくれるそうだ。
特にティッシュの方は、もう無いのが耐えられないと言われた。
それはそうかもなと、俺も思った。
そして後日ティッシュの作り方、工場の動画を見せるのと、ミシンの現物を預ける事になった。
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