俺って何故か押入れから異世界へ行き来ができるっぽい！ 〜星〜

第149話 初売りの準備

　お餅を堪能してから初売りの日の連絡をと、各支店に連絡用の鳥を放った。

「頼んだぞピーちゃん！」

「ピィーッ！」

　そして夜に出すお雑煮と筑前煮を作る事にし、俺はキッチンに立った。

「一応御飯も炊くか」

「それは僕がやるよ、他にやることある？」

「ありがとうカナタ。じゃあ甘酒をあたためて用意してくれ」

「分かったー」

　お雑煮のレシピはまず鍋に水を沸騰させ、 切り餅、根菜類の人参、ごぼう、れんこん、そして鶏のもも肉に白味噌を加える。

　少し煮立ったら、煮汁が美味しくなるように醤油やみりんで味付け。

　そして具材が柔らかく煮えたら、お椀に盛り付け、お好みで刻みネギや七味唐辛子をトッピングして完成だ。

　そして次に筑前煮は鍋に水と醤油、みりん、砂糖を加えて煮立て、 鶏のもも肉と根菜類、ごぼう、にんじんを加え、弱火で煮込む。

　具材が柔らかくなったら、味がしみ込むまで更に煮詰める。

　完成したらお皿に盛り付け、お好みで刻みネギや白胡麻を散らして出来上がり。

　ふと、リビングのテーブルの方を見やれば例の異世界コンビは一足先にカナタが用意してくれた甘酒を楽しんでいた。

　でも気に入ったみたいだから良かった。

「夕食ができたぞ！　このお雑煮も伝統的な俺の故郷の日本のお正月料理だ」

「「なるほど」」

　この和の風味を味わうがいい。

　ひとまず汁物のお雑煮からな。

「この白味噌が……まろやかな味わいでシャキシャキのレンコンや甘い人参とかの根菜類の食感と鶏肉の旨味がいい具合にまとまってると思う」

「ありがとう、カナタ」

「優しい味だわ」

「ああ、食べやすい味だと思う」

「次の筑前煮は濃厚な味わいが特徴だ。

　醤油とみりんの甘みがおそらく大事で、鶏肉と根菜類がしっかり煮込んである」

「鶏肉はふっくらと柔らかいし、煮汁の味が具材によく味が染み込んでて美味いな」

「深いコクとしっかりとした旨味があって気に入ったし、これは沢山食べられるわ」

　良かった。

「白飯もあるからいっぱい食べるといい」

「ありがとう」

　などと皆に礼を言われた。

　その後、食後のデザートにフルーツタルトを出した。

　ミラとユミコさんにはバームクーヘンをあげて、

　ラッキーには栄養バランスのいいドッグフードをあげた。

「あの年輪みたいなの私も食べたいのだけど！」

　ミレナよ、言うと思ったけどな！

　またドール二人のバームクーヘンを見てたし！

「今フルーツタルト食ってるだろ、また明日な」

「今夜の夜食に！」

「じょ、女子のわりにフルーツタルトを食べた矢先に堂々とお菓子の夜食を要求するとは……」

　豪気な女よ。

「いいの！　私は運動するから！」

「そうなのか、ならいいか」

「ミレナさん、でもほんと不思議と太らないよね」

「きっとファンタジーな世界だからだな」

「確かにファンタジーだよね」

「そこの異世界人達！　私は運動もしてるって言ってるでしょ！」

「分かった、分かった」

　ムキになるミレナを俺は少し笑いながら宥めた。

　うちの姉はダイエットの為に運動すると言いつつ、やるやる詐欺の常習犯だったから。

　幸い服の上からはあまり太っては見えないからいいが。

　あ、服の下は知らないけどな。

「明日は朝市に自転車で行くから！　あと私がそのへんを自転車でウロウロしてたら売ってくれって人に言われるわよ！」

「あ、そうだ、自転車も売るよ」

「自転車は便利だもんね」

「新しい物が好きな人間は多いからな」

「あ、ミレナが明日、本当に市場に行くなら、ついでに劇場の新しいブロマイドのプリントアウトしたやつ、劇場に届けるようにギルドに依頼を出しておいてくれるか？」

「私がやるわよ！　そのおつかいも！」

「あ。そうか、じゃあ頼んだぞ」

「ええ」

　俺は魔法の風呂敷からブロマイド用のプリントアウトの入った書類ケースを出してミレナに手渡した。

　＊　＊

　夜になって風呂に入ってからマジでミレナは夜食にバームクーヘンも食べた。

　次の朝、起きたらミレナがいなかったので本当に朝市とお使いに行ってくれたのかもしれない。

　その間俺達はおせちや雑煮等の残りを軽く食べてから、初売りの準備を進めた。

　自転車も販売するし、棚にも色々商品を置いていく。

「あ！　翔太！　初売りがいつからか店の前の看板を出さないと！」

「誰か初売りは三日後って書いておいてくれ！」

「俺が書こう」

「ありがとうジェラルド！」

　しばらくして店の窓の外から看板のある下を覗くと、外には伝令で駆け出す人やら、伝書鳩が飛び交い、そこかしこで狼煙が上がる様子が見て取れた。

　まるで初売りが戦が如くだ。

　いや、多々買いではあったな。

　そういや日本の初売りセールも賑やかだもんな。

　そして各支店の使いの者達が商品を取りに来たのて魔法の風呂敷から商品を渡していった。