第140話 仕事もする

「えーと、新しいブロマイドの印刷と、写真を使ったタペストリーも少し入稿しとくか」  


 コラボカフェから帰ってから俺達はお仕事のターンに突入。

 遊んでばかりもいられない。


 パソコンやタブレットを手にカナタと俺はそれぞれコーヒーをお供にして作業していた。

 部屋の中でコーヒーの香しい香りがする。



「神楽舞のリハーサルの映像はまだ流さなくて大丈夫?」

「本番より先に出すとインパクトが弱まるのでは?」

「それはそうかも」


「ソリの画像と海の温泉で水着着て昆布踏んだって騒いでるやつがそういやあったろ、あ、ソリ遊びは雪猿轢いたとこはカットで過去のと合わせて再編集の長い動画にするのも悪くない」

「分かった。編集するね」

「ありがとう」


 ややして家のインターホンが鳴った。


 ウーべーイーツが家系ラーメンを届けてくれた。

 今夜の夕食だ。


 配達員にはチップを渡して「ありがとうございました」

 と、お礼も忘れない。



 ラーメンを六個も頼んだのはアイツラにもラーメンを食わせてやりたかったし、麺とスープは別のビニールに入れてくれてるから麺は伸びてない。


 異世界で食べる分はさっさと魔法の風呂敷に入れてしまう。



「ラーメン届いたから休憩にしよう」

「うん」


 カナタがテレビをつけていたので、なんとなく画面をチラ見すると、ちょうどかぼちゃの煮付けを食べているドラマが流れていた。


「あ、そういえばスーパーの惣菜コーナーで買ったかぼちゃの煮物も食べる?」

「いいな」 


 かぼちゃも食べるなら白米もあった方がらいいかな?

 俺は魔法の風呂敷からコンビニの昆布おにぎりを二つ出し、テーブルに置いた。


「やはりチャーシュー美味ぇ、あ、おにぎり一個食っていいぞ」

「ありがとう、このラーメン、具沢山で美味しいね」

「おう、かぼちゃも甘くて美味いな」


「ネットでかぼちゃの煮付けはご飯、白米のお供にはならないって言ってた人がいたけど、なると思うな」


 カナタの手元には今、コンビニのおにぎりがある。

 ラーメンおにぎりかぼちゃ定食みたいな雑なラインナップの飯だ。


「おかずが甘いのが許せないタイプかな?」

「じゃあどうやって食べてるのかな? 単品で?」 

「かなぁ?」


 分からない。


「かぼちゃで思い出したけど、バターナッツかぼちゃって切るとすごく綺麗だよね、色がオレンジでかわいい」


 俺はバターナッツかぼちゃを手元のスマホで検索した。

 えーと、


「加熱すると名前のとおり、バターのようなねっとりとなめらかな食感になり、ナッツのようなこくのある甘みが出て、生でサラダやマリネなどにしてもいい、と。あ、春巻きのレシピがある、保存しておこう、美味そうだから」


「いいね! 美味しそうかぼちゃの春巻き!」

「今度作ってみよう」


 美味しい食事の後に買い逃してるものがないか、

 コーヒーを飲みながら必死で思い出そうとしてる俺。


「えーと、薬の注文はしたよな? 海外の薬通販はいつ頃来るかな」


 俺はメールボックスを確認して、抗生物質の注文をしてる証拠を見つけた。


「海外だからだいぶかかるかも」


「姉のとこにも薬の注文を頼んだから預かっててはくれるはず。だからいくつかは花街内の薬屋に卸しておくことにした」

「ああ、梅毒は怖いからね」

「かつての遊女の平均寿命も二十代前半なんだもんなぁ、抗生物質ないし、ゴム無いし」


「ところでわざわざ海外で薬を買うとかお姉さんに具合悪いなら病院行けって言われなかった?」

「言われるけど病院の待ち時間長いからやだって言っておいた」

「なるほど、それらしい言い訳」


「ところでカナタ。明日は何かしたいこととかあるか?」

「え? 急に」

「別に何も希望はないか?」

「えーと、温泉は前に行ったし、年末のお魚市場とか?」


「あ! 確かにお魚市場もいいな! 明日は早起きして行くか!」


 賑わってそうだし、美味しいハマチとか買いたい。


「うん、あ、でも雪降って来たんだってさ、今SNS見たら書いてあった」



 一瞬だけ換気を兼ねて窓を開けてみたら、肌を刺すような冷気に触れた。


 そして確かに雪が降っていた。


「寒っ!」


 俺は一言そう言って窓をピシャリと閉めた。

 すげー寒いけど、やはり魚市場には行きたいな。


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