第120話 機転を利かす
俺とカナタは異世界に戻ってきた。
しかも今回も人目を避けて夜だ。
するといきなり眼の前に暗闇に光る目が二つあってびっくりした!
「ワフ!」
お!?
「犬!?」
カナタが犬の吠えた声を聞いて反応した。
スマホのライトをつけて前方に照らしたら、大樹の側になんとラッキーがいた!
「なんだ? まさか忠犬ハチ公みたいにここで俺を、俺達を待っていたのか!?」
「ワフ!」
「多分、肯定かな」
ちょっと感動した。
涙が出そう。俺は健気な動物に弱いぞ。
ミラとフェリはミレナに預けて、ラッキーはジェラルドに預けていたはずだけど、ラッキーは勝手にこちらに来てしまったのかな?
俺達の帰還を察して?
ともかくこちらに着いたと二人にブレスレットで連絡をとり、ラッキーとも合流したと伝えておいた。
森の賢者の家にいたらしいジェラルドにラッキーのことを聞くと、急にいなくなっていたからてっきり近所に散歩に行っただけだと思ったらしい。
でもそもそも海神の帳面から出てきた特殊な犬だから無事に戻るだろうと思っていたと。
そして夜なので当然暗いし、暗い中で森に入りたくなくて、朝まで大樹の側の村の中でテント泊をした。
朝起きたら後で森に向かう予定なのでカナタも動きやすい男の服にもう着替えてた。
ヒルとかもいるかもしれないし、ズボンの方が多少は安全だろう。
朝飯に明太子おにぎりを食べてから、俺達はジェラルドと合流するため森に入って歩いていると、しばらくして急にラッキーが警戒するようにウーッと唸った。
俺は魔法の風呂敷を懐に忍ばせてあるので、そっと懐に手を入れた。
敵によって出すものを決める。
「カナタ、気をつけろ」
「うん」
カナタは魔法のカバンからナタを取り出し、構えた。
すると、人相のやばい山賊みたいな輩が三人出て来た!
「おい、お前達、有り金全部置いてけ」
「身ぐるみも剥いでやろうぜ」
やはり絵に描いたような山賊!!
「そういやお前ら知ってるか? 黒髪の聖女が行方不明になったの」
「あ?」
!?
「浄化の仕事が辛くて男装して逃げたんじゃないかって話さ。片方の男、綺麗な顔をしてるし、黒髪だなぁ?」
「裸に剥いで見りゃわかんだろ、ぐへへ」
「!!」
今は男の格好なのにカナタを狙ってる!
しばらく平穏な異世界生活してて忘れてた!
地球の外国よりヤバいかも!
「ちょっと待て君達、話し合おう」
「はぁ、俺達相手に話だってぇ?」
「ウゥーッ!」
ラッキーが男達から俺達を守るように前に出て、唸り、威嚇してる。
その隙に俺は懐に忍ばせていた魔法の風呂敷からあるものを取り出して、男達の眼前にバラっと撒いた!!
「なんだ!?」
「って、ただの紙じゃねぇか……って、ああ!?」
「これは女の裸だ!」
「絵とは思えないくらいそのままの!?」
「すげぇ! 何だこれは!?」
俺がばらまいたのはフルカラーの写真の載ったエロ本のスクラップ!
それを男達が拾って見入ってる間に俺はカナタの腕をひっぱって走った!!
ラッキーもちゃんとついてきた!!
俺達は急いでジェラルドの家に向かった。
「ハァ、ハァッ」
息が苦しい! おっさんを走らせるんじゃないよ!
途中早足レベルにまで速度は落ちたけど、頑張って賢者の家に向かう途中にある川の側にまで来たら、ジェラルドがアヒルの卵を拾いながらそこにいた!
「ジェッ、ラルドォッ!!」
「ど、どうした? おかえり二人共、それとラッキー」
様子のおかしい俺の姿を見て少し驚いてるジェラルド。
「ワフ!」
「さ、山賊っ……みたいなのがいてっ」
俺が喋るのきつそうだったので、途中からはカナタが、
「さっき森で山賊に遭遇したんだけど、翔太がエロ本の……裸の女の人の写真画像の紙を何故か持っていて、それをばらまいたら奴らがそれに気を取られてさ、その隙に走って逃げてきたんだよ」
と、説明してくれた。
「そうか、大変だったな」
「翔太はなんであんなの持ってたの?」
「あのエロ本のスクラップはいつかどこかで役に立つかと思って……本当に役に立った」
「しかもわざわざ雑誌をバラしていたのが不思議だよ」
「両面フルカラーのグラビアだぜ? 一枚ずつ売れるじゃん」
「な、なるほどぉ?」
カナタは苦笑しつつも俺のがめつい行動に納得したようだった。
聖者から程遠いが、マジで大丈夫か?
背中の聖痕がそのうち消えたらウケルな。
でも殺生せずに逃げたから、そこは多少偉かったのでは?
あいつらも山賊とはいえ、一応人間だし。
山賊は憲兵さんとかにしばき倒してもらいたい。
俺は非力な商人なので!
「あ、ところでさっきの山賊が聖女が行方不明になったとか言ってたよな」
「あ、僕を疑ってたね。僕は男なのに男装して逃げたんじゃないかって」
「浄化の作業ってやっぱ移動もあるしキツイんだろうな。二人浄化できる人いるなら分担してやれるかもって思ってたんだけどなぁ」
「翔太に負担の皺寄せが来そうだよね?」
「店はどうする? まだ疲れてるなら休むか?」
「あ、今は走ったから少し疲れただけだよ、大丈夫」
でもやっぱり祭りは必要だよな、浄化の作業を減らす為にも神様の加護を大地に!
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