第111話 お披露目後

 聖者のお披露目パーティーを終えて、比較的楽な衣装に着替えた俺達は王城のとある客室に集まってお茶を飲んでいた。


 紅茶とカヌレをメイドさんが持ってきてくれたんだが、オシャレで美味いな。

 カヌレは外側はカリっと、中はもっちりしていた。



「さて、クローズドオークションで稼いだはいいが、どこの救貧院や孤児院にお金を渡せばいいかな? 神殿経由でよろしくって預けると中抜きされるのだろうか?」


「それはそうだな。直接渡しに行ったほうがいいな」

「やはり中抜きされるか」

「神殿の機嫌取りをしたければ神殿を通した方がいいけど、少しでも貧しい人を助けたいなら直接ッて感じね」


 ミレナの言葉に俺はとりあえず聖者衣装は提供してもらった事を思い出した。



「じゃあ若干神殿にも寄付をしつつ他は直接持っていくか」


「孤児院とかは直接食べ物を持っていくのもいいのでは? 孤児院とか院長がお金をくすねて子供達がまともに食べられないと可哀想だし」


 カナタの言葉にハッとなる俺。


「ああ、よく物語であるよな、孤児院の院長が善良ではない感じのやつ、となれば炊き出しが確実か」


 伯爵領にも善人と悪人の両方いるだろうしな。


「炊き出しかぁ、豚汁でも作る?」

「こっちの世界ならポトフやシチューの方が無難では?」

「それはそうかも」


「あ、この客室も豪華だし、撮影もしておこう」

「流石にパーティー会場じゃカメラとかは出せなかったもんね」

「だよな、綺麗なドレス姿の令嬢沢山いたから撮影したかったけど」


 ミレナがじろりとこちらを睨んできた。


「ミレナさんとカナタさんの素敵なドレス姿なら私が撮影してますよ」

「流石だ! ミラは天才だな」


 天の助け!!


「ミラは見る目があるわね!」

「ほんとーだなぁ!」

「え? 僕のまで? なんか照れるな」

「カナタも令嬢ドレス似合ってたから大丈夫だぞ」

「そうね、あの紫色のドレス姿、綺麗だったわよ」

「あはは、ミレナさんほどの美女に言われると尚更照れるな」



 ミレナはカナタの褒め言葉でドヤ顔である!

 ミレナの機嫌が治った! セーフ!



 * *



 伯爵令嬢達の帰還に便乗し、スクロールで伯爵領に戻ることにした。

 王都観光も少しは興味あったけど、聖者としてお披露目されたばかりで人の目が気になるし、孤児院や救貧院は伯爵領にもあるから慌てることはない。



 自宅についてコーヒーブレイクだ。

 チョコチップクッキーを添えて。



「でも今回の仕入れた雑貨は王都のパーティーでさばいたけど、店の方休みって看板に書いてもらってなんにもなしで大丈夫かな?」


「じゃあせめてカフェの方で先に弁当を売るか? 流石にあのパーティーの雰囲気の中で日本で仕入れてきたチキン南蛮弁当とハンバーグ&エビフライ弁当を出す勇気はなかったんだよ」

「そうだね、とりあえず地元の富裕層向けに胡椒とかの調味料も売れるし」


 後日カフェを急遽開けて、弁当を出したりアイスを添えたワッフルやアップルパイを出したりした。

 まかないで自分でも食べたけど、温かいアップルパイは美味え!!



 胡椒や砂糖などの調味料も会計横に置いて売ったりもした。

 フェリもどういう心境の変化があったのか、ようやく起きて会計などを手伝ってくれるようになった。


 綺麗でかわいいドールが動いて会計までできるのでブルジョアに譲って欲しいと言われたが申し訳ないけど断った。


 陽はくれて仕事終わり。

 俺はカナタと夕食の準備に入る。

 お昼のまかないが甘い系だったので夕食はエビチリとかの中華を作ってみた。

 市販のチャーハンの素を使ったチャーハンもある。

 完成した料理をトレイに乗せてリビングのテーブルに運ぶ。



「夜はだいぶ冷えるようになってきたから暖炉に火を入れておいたわ」

「ありがとうミレナ」



 ミレナが暖炉の火を入れてくれてた。

 料理をする男勢の代わりに細々としたことをたまにやってくれる。

 一応女子だなあと、こんな時は思う。

 ラッキーは暖炉の前でぬくぬくしながら寝そべっている。

 


 さて、今夜も皆で夕食をいただこう。


「この豆板醤の辛味とケチャップの酸味が程よく効いたチリソースがいいね」

「この赤い調味料はトウバンジャンと言うのか」

「そうだよ〜」


 カナタがジェラルドの質問に答えてくれた、助かるし、すっかりこちらに馴染んでてよかった。


「エビがぷりぷりしてて美味しいわね」

「今度はエビマヨいっとくか、練乳とか入れるんだよな、レシピサイトを見て作った事があるけど、あれも濃厚で美味しいし」

「エビ料理は歓迎する、何回作っても良い、このライスも味わい深い気がする」


「そのライスは五目チャーハンって言うんだよジェラルド」

「ゴモクチャーハン……か」


 ジェラルドは俺の言葉を反芻して記憶しようとしてるようだ。


「でもエビって安くないから、前は滅多に食べれなかったな」


 カナタは日本のエビ価格を思い出しているようだ。



「エビもこちらで買うとそこまでじゃないんだよ」

「なるほど、それはいいね!」



 三日ほどはカフェ営業をやって、それから市場で買い物をしてから孤児院や救貧院に向かうことにした。

 











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