第86話 新メンバー紹介的な

 ワフッ!! 

 ラッキーがひと声吠えて、走り込んで来た。


「ただいま~っ!!」

「ワフ!」

「よーし、よしよし!」


 俺は飛びついてきたラッキーを撫で回した。

 もふもふ充電タイム!



「ショータ!」

「あ、ただいまミレナ!」



 箒を持ったミレナが走ってきた。

 掃除中だったのか?



「ちょっとショータ! 私は若い女は嫌だって言っ……ん!?」


 フーッ! と威嚇する猫みたいに尻尾の毛を逆立てていたミレナだったが、



「ちょ、落ち着けミレナ」

「んんん? なんか、女の服を着てるのに雄……男の匂いがするような」

「あ、すみません、僕は今はこんな格好してますが、男です」


 カナタが慌てて謝った。


「え? ど、どう扱えばいいのよ」

「カナタはかわいい服を着るのが好きなだけだよ。ただ、人として扱ってくれたらいいと思う」

「人として……」


 棒読みみたいに呟くミレナ。


「確かに人間には違いないな」


 ルルエの小屋の敷きワラを抱えて来たジェラルドがそう言って笑った。


「あ、ジェラルドただいま! ルルエの世話をしてくれてたんだな、そんでミレナはどこかの掃除? 二人共ありがとな」


「仕入れが終わったなら、お店をあらかじめ掃除しておくくらい当たり前でしょ」



 俺が異世界の家にカナタと帰ったら、どうもジェラルドとミレナはお掃除やルルエのお世話とかをしながら待っててくれたらしい。

 なんてえらいんだ。

 言われる前にやっている!


「は、はじめまして、名前をカナタといいます。翔太さんにはいつもお世話になってます」

「それで、君もここに住んで働いてくれるのかな?」


「は、はい、道すがら雑貨屋の方の手伝いをして欲しいと言われてますので」


 カナタはイケメンエルフの前で緊張しているらしい。


「じゃあ、とりあえず家に入ろう、立ち話もなんだし、ここは日差しが強い」


 ジェラルドの提案にのって俺達は家の中に入った。


 俺は魔法のカバンから冷えたペットボトルのコーラをリビングのテーブルの上に出して、今後の話を再開した。



「カナタには見慣れぬ商品とかほぼないし、一から教えたり勉強させる必要がないし、このような女性の服を着て接客もしてくれるから雑貨屋の方を頼もうと思う」


「あ、でも女性の試着の時とかはミレナさんにお願いします、僕では問題が」

「はぁ、それはまあ、わかるけど」

「ミレナはたまに口が悪いけど、根は優しい娘だから、ほら、眠れないお前の為に眠り草を何度も取ってきてくれたりしたんだよ」


「えっ! そうだったんですね! ありがとうございます! ミレナさん!」

「つ、ついでがあったからよ!」


「……ツンデレ?」


 カナタが俺に向かって小声でそんなことを訊く。


「ああ……多分そんな感じ……照れ隠しだろう」

「何コソコソ言ってるのよ」

「照れてるんだろうって」

「バカ!」



 ミレナの顔が赤いし、これはわかりやすく照れている。


「それで、仕入れは順調だったか?」

「ああ、劇団のパンフやブロマイドも印刷できてたし、女性の下着も今回はカナタが買って来てくれたし、俺が行くより周囲に嫌悪感は与えなかったはず」


「で、お土産は?」


 ミレナはお土産のことは忘れない女。


「あ、雑貨屋の店員が二人似た服を着てたら可愛いと思って、俺がこっそりフリフリのかわいい服を買ってきたぞ!」


 俺は魔法のカバンから可愛い服を取り出した。


「え、いつの間に! しかもチェリーピンクハウス! リボンやフリルでかわいい系で有名な! かなり高い服のブランドじゃないか! 僕の分までこんな高い服を買ったの!?」


「そんでもシャネラよりは高くないと思うぞ」

「それはまあ、そうかも? 買ったことないからよく知らないけど」


「この服? 花柄とかかわいいけど暑くない?」


 ミレナが服を自分の体に当ててみている。



「あ、重ね着は涼しくなってからでいいから!

あと、尻尾の穴は開いてないがかんべんな。

穴を開けるといらなくなった時に売れなくなるぞ」


「別に……いらなくならないけど」

「そうか、気に入ったなら良かった! 今度カナタも着替えて撮影させてくれ、とりあえずは商品の陳列とかの作業があるな」


「うん」

「ああ」

「はーい」

「はい、マスター」


「あ! ミラやフェリにもあるぞ! フリフリドレス!」

「ありがとうございます」



 沈黙してるフェリの方を見たら、相変わらずリビングの指定席に座っているだけで動いてなかった。

 まだ心を開いてくれてないようだ。





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