第84話 爆買いおじさん
カナタと買い物を分担しあって仕入れをすることにした。
忙しくしていれば、自殺とか変なこと考えるのをやめるかもしれないとも思うわけだ。
まだ24歳のカナタはもっと幸せを感じるべきだ。
朝起きて、三件の弁当屋にお弁当を50個ずつ、二種ずつを注文メールを送った。
注文合計300個だ。チキン南蛮は外せない。
それから二人で朝食を食べに出かけた。
以前誰かのSNSで紹介されていた店へ。
「ここの店の朝ご飯が丁寧な暮らしをする人のごはんっぽくて来てみたかったんだ」
「翔太ってわりと健康志向?」
「いや、ジャンクフードも大好きだけど、たまには美味い和食系も食べたいし」
「なるほど」
今日のメニューっていうのをいただく。
メニューはその日によって違うらしい。
「あ、きんぴらがある。嬉しいな、白いご飯と麦ご飯も選べるんだね、僕はせっかくだから麦にしよう」
「俺も麦飯にする。アジのひものにだし巻き卵もある、美味そう」
しばらくしておばあちゃんが料理を運んできてくれた。
「はい、お待たせしました」
「ありがとうございます。美味そう〜」
「いただきます」
「はい、ゆっくり食べてくださいねぇ」
おばあちゃんは人の良さそうなニコニコ笑顔だった。
まず、味噌汁から食べて口の中を潤す。
うん、美味い。
そしてアジの干物に醤油をかけていただく。
炊きたての麦ご飯で追いかける。
美味しい。
アジもだし巻きもきんぴらもお新香も美味しい。
全部美味しい。
この店は信頼できる。
満足度の高い朝食だった。
カナタも満足そうだったから良かった。
* *
それから俺はレンタカーを借りた。
車で沢山のティッシュや生活雑貨や食料を買い込むのだ。
店内のサッカー台で魔法の風呂敷なんか広げられないしな。
車内で買い物スケジュールの最終確認タイム。
カナタは助手席で俺が運転席だ。
「じゃあ僕は女性用下着売り場と、可愛い雑貨店とキレイなレースや布のある手芸店に行けばいいんだね?」
「ああ、買い物の品が多くて重くなったら俺と一瞬合流するか、案内所にある程度は預ける事が出来るはずだ」
「それって無料?」
「昔は無料だったが今は確か500円か800円くらいかな? 魔法の収納カバンを貸したいところだが、これは盗難防止に本人登録がいるから、あっちに戻った時にカナタ用のを買うつもりだ」
「でも、そんな貴重な物を買って貰っても、僕だけ異世界へ片道切符の可能性はあるんだよね?」
「その場合でもあちらの世界で使えばいいから気にするな」
「そっか……ありがとう」
カナタは嬉しそうに笑った。
俺は軍資金を銀行で下ろし封筒に入れてカナタに預けた。
「わあ、封筒ぎっしりだ」
緊張してます。みたいな顔をしてるな。
「自分の服も買いたかったら買えよ。可愛い服とか」
「えー、悪いよ」
「気にすんな、手伝い賃だ。自分の下着も買っておけよ?
あのガラガラのスッキリした部屋を見るに、めちゃくちゃ処分したんだろ?」
「あはは、ごめん、ありがとう」
「異世界って、今は暖かい?」
「今は夏で暑いくらいだけど、日本と違って湿度がそれ程でもないから、わりと朝とか日陰は涼しい。でもじきに秋冬が来るからな」
「なるほど」
「ダウンジャケットとか欲しいなら買っておけよ、向こうにないし」
「向こうにないならそんなの着てたら浮くんじゃないかな?」
「えーと、自分が流行を作りますって顔して仕入れて売ればいいさ」
「ええ〜? 強気過ぎる」
「上級の貴族令嬢もやっている。俺はラノベで読んだから詳しいんだ」
俺はドヤ顔で言ってやった。
「あはは!」
カナタは楽しそうに笑った。
良かった。
笑っているとほっとする。
「じゃあ、また後でな」
「分かった」
カナタと別行動で仕入れを頑張る。
俺は大きなディスカウントショップに来た。
レジでティッシュおじさんてあだ名ついてるかもしれん。
でも月一だし、施設で働いてる人だとこんな買い方する人もいるかもしれないから、なるべく気にしないようにしよう。
一応、お得なセール品がないかと店内を見て回る。
あ、家族計画的なでかい箱のゴム発見。
夜職の人に頼まれたゴムは通販でも申し込んではいるけど、ここでも多少は買っておくか。
俺はいろんな生活用品をどんどんカートにいれていく。
タオルも石鹸も。
あー、ここにも米やジュースやお茶があるから買っておくか、セールで安くなってるし。
昼に荷物の件もあるから、カナタと一度合流した。
俺は荷物を魔法の風呂敷に収納しまくった。
そして、大きな商業施設に移動して入った。
「あのカロリーの暴力みたいなクレープ食ってみたいんだが、男だけだと注文しにくいんだ。よければ頼めるかな?」
俺はとあるでかいクレープを売ってる店を指差してお願いした。
「お安いご用だよ」
女装中のカナタが買って来てくれた。あれ、俺の分だけ買って来たのか。
まあ、本人がいいならいいか。
そんで俺はクレープを食ってみた。
「……おお、うん。美味いよ、これ」
「クリームの量がすごいけど大丈夫?」
「……途中でギブしたら助けてくれ」
しばらくした後、やはりずっと甘いのは大変だった。
「すまん、カナタ、助けてくれ」
「あはは、やっぱり!」
俺が途中でギブするの、お見通しだったわけだ。
「よし、次は何かカナタの食べたいものを言え。フレンチでもイタリアンでも」
「高級なレストランは僕、マナーわからないからいいよ、周囲に迷惑だろうし」
「そうか、でも万が一、あちらが片道切符だったら、好きなものを食っておいた方がよくないか?」
「それなら余計、こっちの人に迷惑かけて行きたくないよ。楽しいデートしてるカップルもいそうだし、ムードを壊したくない」
「ふーん、お前がいいならいいけどな」
「あ、あそこのおにぎり食べようよ。今甘いのを食べたからしょっぱいのとか欲しくなった」
カナタが指差したのはおにぎり専門店だった。
「そういえば最近流行ってるな、おにぎり専門店」
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