第78話 夏の花火
錬金術師さんがオークション会場でエリクサーを出品する為に、俺を聖者と誤認させているとはつゆ知らず、採れたて新鮮トウモロコシでゴキゲンだった俺。
「じゃあ今夜は花火でもやるか、せっかく晴れてるし!」
「よくわからないけど、それ、楽しいの?」
「えーと、綺麗だと思う、多分」
「ふーん」
「暗くなってからが本番だぞ」
「分った、では夜まではどうする? 近くに川があるが」
「じゃあ風呂の代わりにもなるし、川遊びしよう」
「ああ、釣りも出来るぞ」
「いいね!」
川に移動したが、遠くに海も見える!
水着に着替えて万全!
「ここはやたらと手の長いエビが釣れるぞ」
「海と川が交わるとこにいる、手の長いエビ! テナガエビ! 釣ったら揚げて食おう! そんでスイカも冷やしておこう!」
日本で買ってきたスイカも丸ごと川の水で冷やす。
水流で流されないように注意して網に入れて紐を枝にくくりつける。
そしてしばらく竹竿で釣り糸を垂らしたりして、テナガエビ釣りをしていたが、
「ねぇ、釣るより網で捕ったほうが早くない?」
「それは確かに、ガサガサもやってみるか」
魔法のカバンから網を取り出した。
「そおれ! ガサガサァ~!」
川の端っこの草の垂れてるあたりを狙ってガサガサ!
「捕れた! エビとなんか小魚!」
俺が年甲斐もなく、ガサガサではしゃいでいると、
「ねぇ、蟹もいる?」
ミレナが蟹を手掴みしていたし、ラッキーも川で泳いで涼しげで楽しそうだ。
「茹でるか焼くか揚げれば蟹も食えるだろ」
「じゃあ蟹も捕っていくわ」
「ナマズが釣れたぞ」
ジェラルドはかなりでかいナマズを釣っていた。
「おお、かなりでかいな」
「こいつも売るか、食べるかするか?」
「鰻なら喜んで食うけど、ナマズは売ったらどうかな」
「そうだな」
夕食は河原でバーベキューだ。
またトウモロコシもあるし、焼きおにぎりも作った。
「今夜の本命はこちらのテナガエビの天ぷらとなります」
俺はシェフっぽく言ってテナガエビの天ぷらを出した。
「サクサクだな、塩だけで美味い」
「なかなかね」
「そして冷えたビールもどうぞ」
魔法のカバンから日本のビールを取り出した。
「満を持して登場か、これが本命なのではないか?」
「それもまたよしである」
「冷たいビールがかき揚げに合うわね」
暗くなってから俺は家庭用の花火を出した。
バケツに水も用意した。
「それがハナビってやつなの?」
「そうそう、先端に火を付けるから、棒の部分を持ってな。あ、火花が飛ぶから人に向けないように、下を向けて」
先っぽの長いライターで花火に火をつけた。
火花が咲いた。
「これが……花火……綺麗ね」
「なるほど、火の花で花火か」
「夏の夜はこれだよ、それとスイカとか」
「川で冷やしておいたろ」
「そうだ、スイカ切ろう!」
スイカのことを思い出して、デザートに出した。
甘くて美味しかった。
夏を満喫って感じだ。
そんでせっかく夏の花火だ。
女の子もいるし、ミレナに浴衣でも買ってあげればよかったな。
あ、でも着付けが俺じゃ無理か。
花火のラストはやはり、
「線香花火は揺らすとすぐに落ちるから気をつけろよ、なるべく長く保たせるのがコツ」
線香花火はパチパチと、ささやかでかわいい花を咲かせる。
「……もう落ちたけど……」
ミレナが残念そうにしょんぼりした。
「俺のはまだ持ってる」
「流石、エルフ、線香花火すら長持ち」
と、言ったそばから、
「あ、落ちた」
「あはは、線香花火は儚いからなぁ」
「なにやら切ない花だな」
「咲いて散るのが花だって、しかた無いよ」
「そうか……」
少し切なげなジェラルドも絵になるので、カメラは時々回してる。
ミラも、俺達が飯を食ってる時とかに撮影をしてくれてた。
また動画サイトで上げられるネタができたな。
収益でまた美味しいものや綺麗なものをお土産にして買って帰ろう。
──次回の満月に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます